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第五章 冬の嵐
146.偽聖女、指導する
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「そういえば、今日は使用人の人達がいないですね」
いつも使用人が数人いるが、今日は一人しか部屋にはいない。
庭師などの直接関わる使用人以外も見かけなかった。
「マミ先生良いですか?」
気になっていた私をマロは別の部屋に呼び出した。
「実は数人の体調が悪くなって、呪いが移ったと言われてるんです」
確かにマスクをつけて、アルコール消毒をしていても免疫力が低ければインフルエンザは移ってしまう。
長時間王太后に付きっきりであれば仕方ないだろう。
それに使用人達は一緒に食事を食べているため、そこから感染したのだろう。
まだまだ感染対策が甘かったか。
「それに先輩達が面倒を見ないと言って、僕だけでは手に負えないんです」
「はぁん!?」
「ひいぃ!」
どうやらマロに威圧してしまったようだ。
彼は特に悪くない。
悪いのは何もしない医者達だ。
王太后だけならまだ大丈夫だと思っていたが、感染が広がったら恐れて逃げ出したのだろう。
「あなたは悪くないわ。本当にあの人達は医者失格ね。使用人がいる部屋に案内してもらっても良いかしら?」
「わっ、わかりました!」
どこかピシッとしているマロに申し訳ないことをしてしまった。
彼は悪くないのに、あまりにもイライラして驚かせてしまったことを反省しないと……。
「ゴホッ! ゴホッ!」
部屋に入ると数人寝込んでいた。
ちゃんと一つの部屋で管理できるようにマロは対応していたのだろう。
それに空気の入れ替えもしているし、乾燥予防もできている。
本当にマロは勤勉な青年だ。
何気なくやっていたこともマネしながら学んでいた。
「みんなが発症したのはいつぐらいですか?」
「ほとんどが昨日と今日です」
「あー、それならちょうど今熱が高いときか……」
私は近くにいた女性に声をかける。
「少しマスクを外しますね」
「マミ先生、マスクを外しても良いんですか!?」
「ちょっと確認したいことがあってね。口を大きく開いて、舌を出せますか?」
私もマスクを一緒に外して、同じように舌を出す。
何をするのかわかったのか、使用人も同じように舌を出していた。
「マミ先生何を見ているんですか?」
「んー、少し脱水症状になっているわね。下痢とか嘔吐はないかな?」
使用人は小さく頷いた。
脇の下も乾いているため、脱水症状には変わりない。
どうやら症状は発熱だけのようだ。
「インフルエンザになると隠れて脱水になっていることがあるんですよ。食事が食べられなくても、水分や電解質を補給しないと……」
「それのどこに問題があるんですか?」
「脱水って最悪の場合亡くなっちゃうからね。人の体ってほぼ水分でできていますし、血栓ができて心臓が止まったりと気をつけないといけないことはたくさんありますよ」
私の言葉を聞いて使用人は少し怯えていた。
別に怯えさせるつもりもないし、これだけ若ければ治るが呪いと言われている存在がそうさせているのだろう。
「マロくんも全員の状態を確認して、ジュースを飲ませてくださいね」
「わかりました! 今すぐに飲みます! 死ぬ気で飲みます!」
どうやらマロに指導したつもりなのに、使用人に患者指導していた。
「死ぬまでは飲まないでくださいね?」
さすがに死ぬ可能性が高いと言われる病気になったら、死ぬ気で治すのは理解できる。
ただ、本当に摂取し過ぎる可能性もあるため、注意を払わないといけないだろう。
私はマロとともに全員の状態を確認すると、半数以上は脱水症状が出ていた。
ほとんどマロが様子観察をしていたから、未然に危険な状態を回避できたのが大きいだろう。
庭の手入れをしている使用人が、必死に唾液を出そうとしているのも中々面白かった。
代わりに皮膚を摘んで脱水になっているか確認した時、彼は露骨に落ち込んだ顔をしていた。
「では、また何かあったら呼んでください」
私はマロにそう告げてある場所に向かった。
いつも使用人が数人いるが、今日は一人しか部屋にはいない。
庭師などの直接関わる使用人以外も見かけなかった。
「マミ先生良いですか?」
気になっていた私をマロは別の部屋に呼び出した。
「実は数人の体調が悪くなって、呪いが移ったと言われてるんです」
確かにマスクをつけて、アルコール消毒をしていても免疫力が低ければインフルエンザは移ってしまう。
長時間王太后に付きっきりであれば仕方ないだろう。
それに使用人達は一緒に食事を食べているため、そこから感染したのだろう。
まだまだ感染対策が甘かったか。
「それに先輩達が面倒を見ないと言って、僕だけでは手に負えないんです」
「はぁん!?」
「ひいぃ!」
どうやらマロに威圧してしまったようだ。
彼は特に悪くない。
悪いのは何もしない医者達だ。
王太后だけならまだ大丈夫だと思っていたが、感染が広がったら恐れて逃げ出したのだろう。
「あなたは悪くないわ。本当にあの人達は医者失格ね。使用人がいる部屋に案内してもらっても良いかしら?」
「わっ、わかりました!」
どこかピシッとしているマロに申し訳ないことをしてしまった。
彼は悪くないのに、あまりにもイライラして驚かせてしまったことを反省しないと……。
「ゴホッ! ゴホッ!」
部屋に入ると数人寝込んでいた。
ちゃんと一つの部屋で管理できるようにマロは対応していたのだろう。
それに空気の入れ替えもしているし、乾燥予防もできている。
本当にマロは勤勉な青年だ。
何気なくやっていたこともマネしながら学んでいた。
「みんなが発症したのはいつぐらいですか?」
「ほとんどが昨日と今日です」
「あー、それならちょうど今熱が高いときか……」
私は近くにいた女性に声をかける。
「少しマスクを外しますね」
「マミ先生、マスクを外しても良いんですか!?」
「ちょっと確認したいことがあってね。口を大きく開いて、舌を出せますか?」
私もマスクを一緒に外して、同じように舌を出す。
何をするのかわかったのか、使用人も同じように舌を出していた。
「マミ先生何を見ているんですか?」
「んー、少し脱水症状になっているわね。下痢とか嘔吐はないかな?」
使用人は小さく頷いた。
脇の下も乾いているため、脱水症状には変わりない。
どうやら症状は発熱だけのようだ。
「インフルエンザになると隠れて脱水になっていることがあるんですよ。食事が食べられなくても、水分や電解質を補給しないと……」
「それのどこに問題があるんですか?」
「脱水って最悪の場合亡くなっちゃうからね。人の体ってほぼ水分でできていますし、血栓ができて心臓が止まったりと気をつけないといけないことはたくさんありますよ」
私の言葉を聞いて使用人は少し怯えていた。
別に怯えさせるつもりもないし、これだけ若ければ治るが呪いと言われている存在がそうさせているのだろう。
「マロくんも全員の状態を確認して、ジュースを飲ませてくださいね」
「わかりました! 今すぐに飲みます! 死ぬ気で飲みます!」
どうやらマロに指導したつもりなのに、使用人に患者指導していた。
「死ぬまでは飲まないでくださいね?」
さすがに死ぬ可能性が高いと言われる病気になったら、死ぬ気で治すのは理解できる。
ただ、本当に摂取し過ぎる可能性もあるため、注意を払わないといけないだろう。
私はマロとともに全員の状態を確認すると、半数以上は脱水症状が出ていた。
ほとんどマロが様子観察をしていたから、未然に危険な状態を回避できたのが大きいだろう。
庭の手入れをしている使用人が、必死に唾液を出そうとしているのも中々面白かった。
代わりに皮膚を摘んで脱水になっているか確認した時、彼は露骨に落ち込んだ顔をしていた。
「では、また何かあったら呼んでください」
私はマロにそう告げてある場所に向かった。
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