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第五章 冬の嵐
142.偽聖女、呼び出しされる
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私は朝から準備を始めて、アルヴィンとともにあるところに向かっていた。
喘息持ちの子も落ち着いて来たタイミングで、第二騎士団の副団長が朝からやって来た。
この間、元聖女の子孫ならシルキーと関係があったのか確認してもらったから、それについて話に来たと思っていたが状況が違うようだ。
「マミ先生、どうか助けてもらえないでしょうか?」
「王城の医者が見てもどうにもできないんですよね?」
「はい」
アスピリンが来た理由はある人を見てもらいたいという話だった。
インフルエンザに対応している中、誰かと会うのは控えた方が良いと思っていた。
だが、見て欲しいと言われた相手も呪いにかかっていると言っていた。
インフルエンザの感染爆発が起きている中、重症化した人がいるのだろうか。
アルヴィンが護衛として、アスピリンとともに馬車に乗ってその人がいるところに向かった。
そして、現在馬車の中で容体を聞いている。
「それでいつからどんな症状が出ているんですか?」
「呪いになって数日が経った頃です。呪いを外に出さないために、誰も看病をしなかったのが原因だと思っています」
「はぁー」
話を聞けば聞くほど、いい加減な管理にため息が出てくる。
呪いだと分かった瞬間、部屋は閉め切って食べ物だけ部屋に運んでいたと。
使用人も呪いになり、強い呪いだと広がりさらに管理はせずに放置された。
その結果、どうしようもなくなりアスピリンが私を思い出して声をかけてきた。
本当なら聖女である聖愛が治療する予定だが、今どこに行ったかわからない状況らしい。
「それでその方はどなたなんですか?」
「現国王の母にあたる方です」
「なぜ、国は何もしてないんですか!?」
国王の母ということは元王妃になる。
そんな人が病気になったら、ある程度はしっかりと治療する必要がある。
ひょっとしてここにも男尊女卑が影響しているのだろうか。
「それだけ呪いが強いんですか。呼吸は"ゼーゼー"言って、音が聞こえてくるらしいです」
「音ですか?」
「はい。胸の音を聞く魔導具なんですが――」
「それって聴診器ですか?」
「聴診魔導具といいます」
この世界にも聴診器が存在していた。
正直今のこの状況で聴診器があれば、どれだけよかったと思ったことか。
喘息の症状の方もだが、インフルエンザによる細菌性肺炎は多くみられる。
基本的に聴診で確認した後に検査をする。
胸部エックス線検査や血液検査、痰を培養する検査をして確定することができる。
現場はどれもができないため、酸素が体中に回っているのか、呼吸状態に変化はないのか簡単な確認しかできなかった。
「マミ先生着いたようです」
馬車の扉が開くと、アルヴィンに支えて貰いながら私は外に出た。
城に来るのはバッカアにクロが絡まれていた時以来だ。
あれから数ヶ月が経ち、少し懐かしく感じる。
私もこの世界に来てからだいぶ慣れてきた。
「あっ、アスピリンさんもマスクをお願いします」
私はマスクを手渡すと不思議そうな顔をしていた。
「これはなんですか?」
「呪いを予防するものです。あとはアルコールが高いお酒で手の消毒や周囲の拭き取りをお願いします」
アルヴィンは慣れた手つきでアルコール消毒をしていた。
アルコール濃度は低いが、これを機に貴族達がちゃんとしたアルコール消毒用に作ってもらえると助かる。
城に入ると働いている人達から視線が集まった。
側から見たら変な人達に見えるだろう。
ただ、アルヴィンとアスピリンがいるから何も言わないのだろう。
元王妃は城の奥にある小さな屋敷で残りの人生を過ごすらしい。
そのまま城を突き進むと屋敷が見えて来た。
花が好きなのか、外には花がたくさん植えられている。
今は寒いから何も咲いていないが、春になったら綺麗な庭になるだろう。
そんなことを思っていると、屋敷から男が走って出てきた。
「俺は呪いなんかになりたくないぞ! 他に人に頼んでくれ!」
そう言って私達の横を通り過ぎて行った。
あれがこの世界の医療現場で働く人達だろうか。
患者を目の前にして逃げるなんて許されることではない。
もちろん医療従事者にも家族がいるし、プライベートはある。
それでも今できる最善のことをするのが、私達の勤めだと私は思っている。
屋敷の中に入ると数人の使用人と男達が話し合っていた。
喘息持ちの子も落ち着いて来たタイミングで、第二騎士団の副団長が朝からやって来た。
この間、元聖女の子孫ならシルキーと関係があったのか確認してもらったから、それについて話に来たと思っていたが状況が違うようだ。
「マミ先生、どうか助けてもらえないでしょうか?」
「王城の医者が見てもどうにもできないんですよね?」
「はい」
アスピリンが来た理由はある人を見てもらいたいという話だった。
インフルエンザに対応している中、誰かと会うのは控えた方が良いと思っていた。
だが、見て欲しいと言われた相手も呪いにかかっていると言っていた。
インフルエンザの感染爆発が起きている中、重症化した人がいるのだろうか。
アルヴィンが護衛として、アスピリンとともに馬車に乗ってその人がいるところに向かった。
そして、現在馬車の中で容体を聞いている。
「それでいつからどんな症状が出ているんですか?」
「呪いになって数日が経った頃です。呪いを外に出さないために、誰も看病をしなかったのが原因だと思っています」
「はぁー」
話を聞けば聞くほど、いい加減な管理にため息が出てくる。
呪いだと分かった瞬間、部屋は閉め切って食べ物だけ部屋に運んでいたと。
使用人も呪いになり、強い呪いだと広がりさらに管理はせずに放置された。
その結果、どうしようもなくなりアスピリンが私を思い出して声をかけてきた。
本当なら聖女である聖愛が治療する予定だが、今どこに行ったかわからない状況らしい。
「それでその方はどなたなんですか?」
「現国王の母にあたる方です」
「なぜ、国は何もしてないんですか!?」
国王の母ということは元王妃になる。
そんな人が病気になったら、ある程度はしっかりと治療する必要がある。
ひょっとしてここにも男尊女卑が影響しているのだろうか。
「それだけ呪いが強いんですか。呼吸は"ゼーゼー"言って、音が聞こえてくるらしいです」
「音ですか?」
「はい。胸の音を聞く魔導具なんですが――」
「それって聴診器ですか?」
「聴診魔導具といいます」
この世界にも聴診器が存在していた。
正直今のこの状況で聴診器があれば、どれだけよかったと思ったことか。
喘息の症状の方もだが、インフルエンザによる細菌性肺炎は多くみられる。
基本的に聴診で確認した後に検査をする。
胸部エックス線検査や血液検査、痰を培養する検査をして確定することができる。
現場はどれもができないため、酸素が体中に回っているのか、呼吸状態に変化はないのか簡単な確認しかできなかった。
「マミ先生着いたようです」
馬車の扉が開くと、アルヴィンに支えて貰いながら私は外に出た。
城に来るのはバッカアにクロが絡まれていた時以来だ。
あれから数ヶ月が経ち、少し懐かしく感じる。
私もこの世界に来てからだいぶ慣れてきた。
「あっ、アスピリンさんもマスクをお願いします」
私はマスクを手渡すと不思議そうな顔をしていた。
「これはなんですか?」
「呪いを予防するものです。あとはアルコールが高いお酒で手の消毒や周囲の拭き取りをお願いします」
アルヴィンは慣れた手つきでアルコール消毒をしていた。
アルコール濃度は低いが、これを機に貴族達がちゃんとしたアルコール消毒用に作ってもらえると助かる。
城に入ると働いている人達から視線が集まった。
側から見たら変な人達に見えるだろう。
ただ、アルヴィンとアスピリンがいるから何も言わないのだろう。
元王妃は城の奥にある小さな屋敷で残りの人生を過ごすらしい。
そのまま城を突き進むと屋敷が見えて来た。
花が好きなのか、外には花がたくさん植えられている。
今は寒いから何も咲いていないが、春になったら綺麗な庭になるだろう。
そんなことを思っていると、屋敷から男が走って出てきた。
「俺は呪いなんかになりたくないぞ! 他に人に頼んでくれ!」
そう言って私達の横を通り過ぎて行った。
あれがこの世界の医療現場で働く人達だろうか。
患者を目の前にして逃げるなんて許されることではない。
もちろん医療従事者にも家族がいるし、プライベートはある。
それでも今できる最善のことをするのが、私達の勤めだと私は思っている。
屋敷の中に入ると数人の使用人と男達が話し合っていた。
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