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第五章 冬の嵐

139.偽聖女、新しい料理を作る

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「じゃあみんなで作っていこうか!」

「おー!」

 宰相が来る日が決まった。

 今から三日後のお昼に第二騎士団長と来る予定となった。

「今からチーズ組とマヨネーズ組に分けます」

「はーい!」

「チーズはシルキー、マヨネーズはリリを中心に作ってね」

「チーズ組は私達について来なさいよ!」

「マヨネーズ組はリリのところね」

 各々の担当を振り分けることにした。

 チーズは火を使うためシルキーを中心に年上組。

 マヨネーズは混ぜるのに体力を使うため、リリを中心にちびっこ達で作る。

「何かあったらハムに言ってね」

 二組をまとめるのが、一番弟子であるハムだ。

 念の為にアルヴィンをチーズ組、レナードをマヨネーズ組で手伝ってもらうことにした。

「おい、マミイモ! 俺は何をすれば良いんだ?」

「あなたは体力バカだから、私のうどん作りを手伝ってね」

「おう、体力バカも響きがいいな」

 バッカアは"バカ"と言われて機嫌が良いのだろうか。

 ちょうど良いタイミングで遊びに来たバッカアも、強制的に手伝わせることにした。

「マミ先生、俺も体力バカなので同じ組に――」

「はいはい! あんたはあっちで作業をするのよ」

 レナードはアルヴィンを引っ張って台所に向かった。

「ちっ、あいつばかり」

「体力バカどうしたの?」

「あっ、いや……なんもないぞ!」

 この間から気づいていたが、バッカアはレナードに気があるのだろう。

 私とレナードが話している時は普通だが、アルヴィンと話している時はイライラしていることが多い。

 バッカア自身が気づいていないような気もするが、私が何かできるわけでもない。

 私は早速小麦粉に水を加えてうどんを作っていく。

 それに今回は試作でピザ生地を作る予定だ。

 パン屋で材料を買ってきた。

 ドライイーストはこの国にはないため、天然の酵母を使っていた。

 ハード系のパンが多いのは酵母よりも、小麦粉が原因なんだろう。

 パン屋で天然酵母が欲しいと言ったら首を捻っていたが、説明したらすぐに持ってきてくれた。

 むしろ私が知っていることに驚いていたから、パン屋でしか使わないのだろう。

「体力バカはうどんの生地を練ってもらっていいかな?」

「任せておけ!」

 力仕事は全てバッカアに任せて、私は早速ピザ生地を作る。

 って言っても粉を全て混ぜて、調整しながら水やオイーブオイルを入れるだけの作業だ。

 基本的に寝かせて生地の様子を見るつもりだ。

「マミイモこれぐらいでいいか?」

「おっ、さすが体力バカだね」

 いつも必死にやっていた作業をバッカアは軽々しくやっていた。

 少し台所が気になるのだろう。

 さっきからチラチラと見ている。

「台所に行って来てもいいですよ」

「なっ!? 俺はマミイモの手伝いを――」

「しばらくは作業がないので良いですよ」

 私の言葉にバッカアは嬉しそうに台所に向かった。

 本当に恋をしているのだろう。

 それに自分の仕事をするところも彼の魅力だ。

 とりあえず〝バカ〟と言えば良いと思って、体力バカと呼んでたのが申し訳なく感じる。

 作業が終わった私はその間に洗濯でもしようかと思ったら、遠くから子ども抱えている人が走って来た。

 その足取りはふらふらとしているのがわかった。

「大丈夫――」

「マミさん助けて! 子どもが呪いにかかっちゃったよ」

 その場で泣き崩れるように女性は座り込んだ。

 子どもの息は荒く、明らかに熱が出ているようだった。

 それに母親も同様に熱が出ている気がする。

「失礼しますね」

 女性の体に触れたらたしかに熱かった。

 同じタイミングで発熱したのだろう。

「シルキーちょっと来て!」

 子どもには移るといけないと思い、すぐにシルキーを呼んだ。

 事前にシルキーに風邪を引くか聞いたら、呆れた顔で"幽霊が病気になるはずない"と言い返されたから大丈夫なはず。

「忙しい時に呼んでなに――」

「今すぐにポッポと小屋の牛と鶏を孤児院に戻してもらってもいい?」

 明らかに様子のおかしい親子と私の様子を見て感じ取ったのだろう。

 すぐに動き出した。

「大丈夫だからゆっくり移動するね」

 私は子どもを預かると女性を立たせる。

「ママ先生、何か手伝った方が――」

「クロ達は来たらダメだよ! みんなのことをお願いね」

 ちびっこ達が不安そうな顔をしているのが目に入った。

 今頼れるのは年上組達の力だ。

 それを感じ取ったのかクロも頷いていた。

 真冬の寒いこの時期に、この世界でもインフルエンザが流行した。
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