偽聖女はもふもふちびっこ獣人を守るママ聖女となる

k-ing ★書籍発売中

文字の大きさ
上 下
56 / 100
第五章 冬の嵐

137.偽聖女、座敷わらしが人気なことに驚きです

しおりを挟む
「いやあああああ!」

「よし、オラはあっちから追いかけるぞ」

「ならオイラはそのままいくぞ」

「ワシは隠れている」

 シルキーを驚かそうと、子ども達は必死に追いかけていた。

「本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫だと思いますよ。それに子ども達と遊んでますし」

「いや、あれは怖くて逃げているだけだと思いますよ」

 新しい友達が増えたことで、子ども達は楽しそうにしていた。

 ポンタも少しずつ馴染んでいるし、キキが妹のポンコの面倒をみている。

 今までずっとポンコのことを気にして遊べなかった影響か、我一番でポンタがシルキーを追いかけていた。

 もちろん逃げているのはシルキーだ。

 アルヴィンからしたら、シルキーが逃げ回る方が珍しいらしい。

「ちょっとあんたどうにかしなさいよー!」

 結局シルキーは逃げ回って、私のところへ戻って来た。

 私を盾にしたいのだろう。

 ただ、今は夕飯を作っているため、相手をすることができない。

「シルキーがまだみんなと遊びたいって!」

「なっ!? 裏切り者!」

「わーい!」

 シルキーは再び壁をすり抜けて居間に逃げて行った。

 アルヴィンからシルキーは、基本的に家に住む魔物だと聞いている。

 そのシルキーが小屋から孤児院に移動できたことで、さらに上位種の魔物ではないかと言っていた。

 私にしたら子ども達の相手をしてくれる可愛い女の子だ。

 それにシルキーにもう悪意がないとわかれば、牛や鶏達は嬉しそうに小屋に移動した。

 ちなみにテバサキは私の暖房機器として孤児院に残っている。

「マミ先生がたくさんいたら世界が平和になりそうですね」

「私がいっぱいいたら気持ち悪いですよ」

「いえ、そんなことはありません。むしろ俺は嬉しいです」

「あっ……はい」

 少し恥ずかしくなり、手元に集中することにした。

「あんた達そんな甘い雰囲気出してないで――」

「違います」

「あっ、そうなのね」

 天井から出てきたシルキーは顔だけ飛び出していた。

 決してアルヴィンと甘い雰囲気になっていたわけではない。

 それにそんな雰囲気になったとしても、シルキーが見ているかもしれないとわかれば何も起きないだろう。

「シルシルそっちにいなかった?」

「こっちにもいないぞ!」

「嘘だああああああ!」

 子ども達はシルキーを見逃したらしい。

 それにいつの間にか"シルシル"と呼ばれているようだ。

「あんたの作る食事って変わっているわね」

「まぁ、私ってこの世界の人じゃないからね」

「へぇー、そうなの? なら聖女か勇者なのかしらね?」

「いや、私は聖女召喚に巻き込まれたのよ」

「あははは、あなたといると面白そうね」

 たしかにこの世界に来て、バタバタしてつまらないと思ったことはない。

 それにしても聖女召喚に巻き込まれた話題って魔物でも面白いと思うらしい。

「私は長生きしているからね。聖女と住んでいたのも懐かしいわね」

 シルキーから出てきた言葉に私は驚いた。

 シルキーも昔を思い出していたのか、天井から出ている顔が楽しそうだ。

「聖女ってひょっとして――」

「あっ、シルシル見つけたぞ!」

「ゲッ!?」

 子ども達が天井にいたシルキーを見つけたようだ。

 ゾロゾロと子ども達が集まって来た。

 聖女の話を聞こうとしたが、シルキーは子ども達から逃げるようにどこかへ行ってしまった。

「聖女ってチヨコ様ですかね?」

「今度副団長のアスピリンに確認しておきますね。ひょっとしたら、孤児院の裏に住んでいた時期があるのかもしれないですね」

 きっと聖女としての役割が嫌になって、街に住んでいた可能性も考えられる。

 貴族のように暮らせと言われても、多分私なら人生に飽きてしまう。

 薬師として働いていたなら、尚更ひっそり暮らした方がやりたいことができる。

「そろそろできるので、お皿の準備をしてもらってもいいですか?」

「わかりました」

「あっ、シルキーってご飯食べられるのかな?」

「私も食べるわよ!」

 どうやらシルキーもご飯を食べるらしい。

 今までどうやって生活していたのか、不思議な座敷わらしは思ったより一般的な生活をしていた。
しおりを挟む
感想 145

あなたにおすすめの小説

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

お母様と婚姻したければどうぞご自由に!

haru.
恋愛
私の婚約者は何かある度に、君のお母様だったら...という。 「君のお母様だったらもっと優雅にカーテシーをきめられる。」 「君のお母様だったらもっと私を立てて会話をする事が出来る。」 「君のお母様だったらそんな引きつった笑顔はしない。...見苦しい。」 会う度に何度も何度も繰り返し言われる言葉。 それも家族や友人の前でさえも... 家族からは申し訳なさそうに憐れまれ、友人からは自分の婚約者の方がマシだと同情された。 「何故私の婚約者は君なのだろう。君のお母様だったらどれ程良かっただろうか!」 吐き捨てるように言われた言葉。 そして平気な振りをして我慢していた私の心が崩壊した。 そこまで言うのなら婚約止めてあげるわよ。 そんなにお母様が良かったらお母様を口説いて婚姻でもなんでも好きにしたら!

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!

水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。 シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。 緊張しながら迎えた謁見の日。 シエルから言われた。 「俺がお前を愛することはない」 ああ、そうですか。 結構です。 白い結婚大歓迎! 私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。 私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。