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第五章 冬の嵐
137.偽聖女、座敷わらしが人気なことに驚きです
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「いやあああああ!」
「よし、オラはあっちから追いかけるぞ」
「ならオイラはそのままいくぞ」
「ワシは隠れている」
シルキーを驚かそうと、子ども達は必死に追いかけていた。
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だと思いますよ。それに子ども達と遊んでますし」
「いや、あれは怖くて逃げているだけだと思いますよ」
新しい友達が増えたことで、子ども達は楽しそうにしていた。
ポンタも少しずつ馴染んでいるし、キキが妹のポンコの面倒をみている。
今までずっとポンコのことを気にして遊べなかった影響か、我一番でポンタがシルキーを追いかけていた。
もちろん逃げているのはシルキーだ。
アルヴィンからしたら、シルキーが逃げ回る方が珍しいらしい。
「ちょっとあんたどうにかしなさいよー!」
結局シルキーは逃げ回って、私のところへ戻って来た。
私を盾にしたいのだろう。
ただ、今は夕飯を作っているため、相手をすることができない。
「シルキーがまだみんなと遊びたいって!」
「なっ!? 裏切り者!」
「わーい!」
シルキーは再び壁をすり抜けて居間に逃げて行った。
アルヴィンからシルキーは、基本的に家に住む魔物だと聞いている。
そのシルキーが小屋から孤児院に移動できたことで、さらに上位種の魔物ではないかと言っていた。
私にしたら子ども達の相手をしてくれる可愛い女の子だ。
それにシルキーにもう悪意がないとわかれば、牛や鶏達は嬉しそうに小屋に移動した。
ちなみにテバサキは私の暖房機器として孤児院に残っている。
「マミ先生がたくさんいたら世界が平和になりそうですね」
「私がいっぱいいたら気持ち悪いですよ」
「いえ、そんなことはありません。むしろ俺は嬉しいです」
「あっ……はい」
少し恥ずかしくなり、手元に集中することにした。
「あんた達そんな甘い雰囲気出してないで――」
「違います」
「あっ、そうなのね」
天井から出てきたシルキーは顔だけ飛び出していた。
決してアルヴィンと甘い雰囲気になっていたわけではない。
それにそんな雰囲気になったとしても、シルキーが見ているかもしれないとわかれば何も起きないだろう。
「シルシルそっちにいなかった?」
「こっちにもいないぞ!」
「嘘だああああああ!」
子ども達はシルキーを見逃したらしい。
それにいつの間にか"シルシル"と呼ばれているようだ。
「あんたの作る食事って変わっているわね」
「まぁ、私ってこの世界の人じゃないからね」
「へぇー、そうなの? なら聖女か勇者なのかしらね?」
「いや、私は聖女召喚に巻き込まれたのよ」
「あははは、あなたといると面白そうね」
たしかにこの世界に来て、バタバタしてつまらないと思ったことはない。
それにしても聖女召喚に巻き込まれた話題って魔物でも面白いと思うらしい。
「私は長生きしているからね。聖女と住んでいたのも懐かしいわね」
シルキーから出てきた言葉に私は驚いた。
シルキーも昔を思い出していたのか、天井から出ている顔が楽しそうだ。
「聖女ってひょっとして――」
「あっ、シルシル見つけたぞ!」
「ゲッ!?」
子ども達が天井にいたシルキーを見つけたようだ。
ゾロゾロと子ども達が集まって来た。
聖女の話を聞こうとしたが、シルキーは子ども達から逃げるようにどこかへ行ってしまった。
「聖女ってチヨコ様ですかね?」
「今度副団長のアスピリンに確認しておきますね。ひょっとしたら、孤児院の裏に住んでいた時期があるのかもしれないですね」
きっと聖女としての役割が嫌になって、街に住んでいた可能性も考えられる。
貴族のように暮らせと言われても、多分私なら人生に飽きてしまう。
薬師として働いていたなら、尚更ひっそり暮らした方がやりたいことができる。
「そろそろできるので、お皿の準備をしてもらってもいいですか?」
「わかりました」
「あっ、シルキーってご飯食べられるのかな?」
「私も食べるわよ!」
どうやらシルキーもご飯を食べるらしい。
今までどうやって生活していたのか、不思議な座敷わらしは思ったより一般的な生活をしていた。
「よし、オラはあっちから追いかけるぞ」
「ならオイラはそのままいくぞ」
「ワシは隠れている」
シルキーを驚かそうと、子ども達は必死に追いかけていた。
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だと思いますよ。それに子ども達と遊んでますし」
「いや、あれは怖くて逃げているだけだと思いますよ」
新しい友達が増えたことで、子ども達は楽しそうにしていた。
ポンタも少しずつ馴染んでいるし、キキが妹のポンコの面倒をみている。
今までずっとポンコのことを気にして遊べなかった影響か、我一番でポンタがシルキーを追いかけていた。
もちろん逃げているのはシルキーだ。
アルヴィンからしたら、シルキーが逃げ回る方が珍しいらしい。
「ちょっとあんたどうにかしなさいよー!」
結局シルキーは逃げ回って、私のところへ戻って来た。
私を盾にしたいのだろう。
ただ、今は夕飯を作っているため、相手をすることができない。
「シルキーがまだみんなと遊びたいって!」
「なっ!? 裏切り者!」
「わーい!」
シルキーは再び壁をすり抜けて居間に逃げて行った。
アルヴィンからシルキーは、基本的に家に住む魔物だと聞いている。
そのシルキーが小屋から孤児院に移動できたことで、さらに上位種の魔物ではないかと言っていた。
私にしたら子ども達の相手をしてくれる可愛い女の子だ。
それにシルキーにもう悪意がないとわかれば、牛や鶏達は嬉しそうに小屋に移動した。
ちなみにテバサキは私の暖房機器として孤児院に残っている。
「マミ先生がたくさんいたら世界が平和になりそうですね」
「私がいっぱいいたら気持ち悪いですよ」
「いえ、そんなことはありません。むしろ俺は嬉しいです」
「あっ……はい」
少し恥ずかしくなり、手元に集中することにした。
「あんた達そんな甘い雰囲気出してないで――」
「違います」
「あっ、そうなのね」
天井から出てきたシルキーは顔だけ飛び出していた。
決してアルヴィンと甘い雰囲気になっていたわけではない。
それにそんな雰囲気になったとしても、シルキーが見ているかもしれないとわかれば何も起きないだろう。
「シルシルそっちにいなかった?」
「こっちにもいないぞ!」
「嘘だああああああ!」
子ども達はシルキーを見逃したらしい。
それにいつの間にか"シルシル"と呼ばれているようだ。
「あんたの作る食事って変わっているわね」
「まぁ、私ってこの世界の人じゃないからね」
「へぇー、そうなの? なら聖女か勇者なのかしらね?」
「いや、私は聖女召喚に巻き込まれたのよ」
「あははは、あなたといると面白そうね」
たしかにこの世界に来て、バタバタしてつまらないと思ったことはない。
それにしても聖女召喚に巻き込まれた話題って魔物でも面白いと思うらしい。
「私は長生きしているからね。聖女と住んでいたのも懐かしいわね」
シルキーから出てきた言葉に私は驚いた。
シルキーも昔を思い出していたのか、天井から出ている顔が楽しそうだ。
「聖女ってひょっとして――」
「あっ、シルシル見つけたぞ!」
「ゲッ!?」
子ども達が天井にいたシルキーを見つけたようだ。
ゾロゾロと子ども達が集まって来た。
聖女の話を聞こうとしたが、シルキーは子ども達から逃げるようにどこかへ行ってしまった。
「聖女ってチヨコ様ですかね?」
「今度副団長のアスピリンに確認しておきますね。ひょっとしたら、孤児院の裏に住んでいた時期があるのかもしれないですね」
きっと聖女としての役割が嫌になって、街に住んでいた可能性も考えられる。
貴族のように暮らせと言われても、多分私なら人生に飽きてしまう。
薬師として働いていたなら、尚更ひっそり暮らした方がやりたいことができる。
「そろそろできるので、お皿の準備をしてもらってもいいですか?」
「わかりました」
「あっ、シルキーってご飯食べられるのかな?」
「私も食べるわよ!」
どうやらシルキーもご飯を食べるらしい。
今までどうやって生活していたのか、不思議な座敷わらしは思ったより一般的な生活をしていた。
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