54 / 100
第五章 冬の嵐
135.偽聖女、引っ越しする
しおりを挟む
ポンタの事情を汲み取りしばらくは一緒に暮らすことになった。
基本的に他国から移民を受け入れてはいるが、今回は脱国したような扱いらしい。
アルヴィンも宰相である父親に相談してみると言っていた。
そして、今日は待ちに待ったお引越しの日だ。
私達がお引越しするのかって?
いや、今回は牛や鶏達が引越しする予定だ。
ついに牛や鶏の小屋が完成したのだ。
「これからも庭でたくさん遊べるねー!」
「剣の訓練もできるね」
しかも、孤児院の真裏の土地にあった。
孤児院を囲ってある外壁を壊せば、実質的には敷地面積が広くなるだけだ。
春頃には真裏にある外壁の撤去作業が始まるらしい。
「ポッポに付いてくるぽ!」
ポッポを先頭に鶏達が並んで隣にある小屋に向かう。
鶏の移動に街の人達も興味深々だ。
私も紛れてみんなに付いて行くと、広々とした敷地に驚いた。
「この辺の土地って比較的安く売られているから、丸ごと買ったんでしょうね」
「えっ……」
アルヴィンはサラッと話していたが、それだけ土地を買うってなったら、そう簡単にお金は出せないはずだ。
何か見返りが必要になるのだろうか。
「牧場経営でもして欲しいってことですかね?」
「いや、そこまでは言っていないですよ。ただ、今度ぜひマミ先生が作った料理を召し上がりたいと言ってました」
ああ、これは料理でおもてなしをして欲しいってことだろう。
貴族が食べたいってことは、それだけ食文化が発展していないということだ。
それに最近だとクジャ公爵家の二人が出入りしたため、それが広まっている可能性もある。
「来る時は事前に伝えてくださいと言って頂けると助かります」
「わかりました」
事前に来ることがわかったら色々準備はできるだろう。
ただ、どんなコンセプトで作るのかしっかり考えないといけない。
引越しできることにウキウキしていたが、そんなうまくはいかないようだ。
「ママ先生こっちにきてー!」
「はーい!」
子ども達に呼ばれていくと、そこには大きな小屋があった。
家を丸ごとくり抜いたような小屋に、すぐに準備してできた感じが伝わる。
「それにしても綺麗だね」
「誰かが掃除したのかな?」
外の状態からある程度のボロさは覚悟していた。
だが、実際には小屋の中は汚れ一つない状態になっていた。
「アルヴィンさんは何か聞いてますか?」
「いや、中を解体したする時に結構時間がかかったって聞いていたぐらいですね」
きっと構造上、柱が邪魔で外せなかったりなど手間がかかる部分が多かったのだろう。
「みんなもそんなところで固まってないで、中に入ったらどう?」
鶏や牛に声をかけるが、みんな首を振って中に入ろうとしなかった。
「みんなと離れるのが寂しいのかな?」
「いつもオラ達と遊んでたもんね」
牛や鶏も子ども達と走って遊んでいることが多かった。
いなくなると寂しいのだろう。
「ポッポは何か聞いてる?」
ポッポに確認してもらうと、ポッポも首を横に傾げていた。
「みんなが怖いって言ってるぽ」
きっと離れて生活するのが怖いのだろうか。
私も社会人になって一人暮らしするのは怖かった。
ただ、せっかく用意してもらったのに、使わないってのはもったいない気がする。
「んー、それなら寝泊まりは孤児院の庭でも良いけど、本格的に寒くなったらこっちに来ようね。それまでは子どもの遊び場にもなるからね」
広大な土地を使わないわけにもいかないため、昼は牛や鶏達だけではなく、子ども達の遊び場にすることにした。
それに孤児院で引き取ることになってから、常に子ども達がいる生活に慣れてしまい、寂しいと思うのも仕方ない。
私は今の気温でもすでに寒いと思っているし、冬はまだまだ温度が下がると聞いている。
予想では今年も氷点下近くまで下がるのだろう。
今はまだ寒さを感じてないのなら、私が気にすることではない。
「じゃあ、外で遊んでから帰ろうか」
「はーい!」
私達は遊んでから帰ることにした。
「私の家をめちゃくちゃにして……全員呪ってやる」
誰かに話しかけられたような気がした。
周囲を見渡すが子ども達は次々と外に向かっている。
「しぇんしぇいどうしたの?」
「いや……さっき何か聞こえた気がしたけど」
「オラ達には聞こえていないから何もないよ」
「クロが言うならそうだね」
耳が発達している獣人が聞こえていないなら空耳だろう。
だが、この先不幸なことが続けて起こるのをこの時はまだ誰も予想をしていなかった。
基本的に他国から移民を受け入れてはいるが、今回は脱国したような扱いらしい。
アルヴィンも宰相である父親に相談してみると言っていた。
そして、今日は待ちに待ったお引越しの日だ。
私達がお引越しするのかって?
いや、今回は牛や鶏達が引越しする予定だ。
ついに牛や鶏の小屋が完成したのだ。
「これからも庭でたくさん遊べるねー!」
「剣の訓練もできるね」
しかも、孤児院の真裏の土地にあった。
孤児院を囲ってある外壁を壊せば、実質的には敷地面積が広くなるだけだ。
春頃には真裏にある外壁の撤去作業が始まるらしい。
「ポッポに付いてくるぽ!」
ポッポを先頭に鶏達が並んで隣にある小屋に向かう。
鶏の移動に街の人達も興味深々だ。
私も紛れてみんなに付いて行くと、広々とした敷地に驚いた。
「この辺の土地って比較的安く売られているから、丸ごと買ったんでしょうね」
「えっ……」
アルヴィンはサラッと話していたが、それだけ土地を買うってなったら、そう簡単にお金は出せないはずだ。
何か見返りが必要になるのだろうか。
「牧場経営でもして欲しいってことですかね?」
「いや、そこまでは言っていないですよ。ただ、今度ぜひマミ先生が作った料理を召し上がりたいと言ってました」
ああ、これは料理でおもてなしをして欲しいってことだろう。
貴族が食べたいってことは、それだけ食文化が発展していないということだ。
それに最近だとクジャ公爵家の二人が出入りしたため、それが広まっている可能性もある。
「来る時は事前に伝えてくださいと言って頂けると助かります」
「わかりました」
事前に来ることがわかったら色々準備はできるだろう。
ただ、どんなコンセプトで作るのかしっかり考えないといけない。
引越しできることにウキウキしていたが、そんなうまくはいかないようだ。
「ママ先生こっちにきてー!」
「はーい!」
子ども達に呼ばれていくと、そこには大きな小屋があった。
家を丸ごとくり抜いたような小屋に、すぐに準備してできた感じが伝わる。
「それにしても綺麗だね」
「誰かが掃除したのかな?」
外の状態からある程度のボロさは覚悟していた。
だが、実際には小屋の中は汚れ一つない状態になっていた。
「アルヴィンさんは何か聞いてますか?」
「いや、中を解体したする時に結構時間がかかったって聞いていたぐらいですね」
きっと構造上、柱が邪魔で外せなかったりなど手間がかかる部分が多かったのだろう。
「みんなもそんなところで固まってないで、中に入ったらどう?」
鶏や牛に声をかけるが、みんな首を振って中に入ろうとしなかった。
「みんなと離れるのが寂しいのかな?」
「いつもオラ達と遊んでたもんね」
牛や鶏も子ども達と走って遊んでいることが多かった。
いなくなると寂しいのだろう。
「ポッポは何か聞いてる?」
ポッポに確認してもらうと、ポッポも首を横に傾げていた。
「みんなが怖いって言ってるぽ」
きっと離れて生活するのが怖いのだろうか。
私も社会人になって一人暮らしするのは怖かった。
ただ、せっかく用意してもらったのに、使わないってのはもったいない気がする。
「んー、それなら寝泊まりは孤児院の庭でも良いけど、本格的に寒くなったらこっちに来ようね。それまでは子どもの遊び場にもなるからね」
広大な土地を使わないわけにもいかないため、昼は牛や鶏達だけではなく、子ども達の遊び場にすることにした。
それに孤児院で引き取ることになってから、常に子ども達がいる生活に慣れてしまい、寂しいと思うのも仕方ない。
私は今の気温でもすでに寒いと思っているし、冬はまだまだ温度が下がると聞いている。
予想では今年も氷点下近くまで下がるのだろう。
今はまだ寒さを感じてないのなら、私が気にすることではない。
「じゃあ、外で遊んでから帰ろうか」
「はーい!」
私達は遊んでから帰ることにした。
「私の家をめちゃくちゃにして……全員呪ってやる」
誰かに話しかけられたような気がした。
周囲を見渡すが子ども達は次々と外に向かっている。
「しぇんしぇいどうしたの?」
「いや……さっき何か聞こえた気がしたけど」
「オラ達には聞こえていないから何もないよ」
「クロが言うならそうだね」
耳が発達している獣人が聞こえていないなら空耳だろう。
だが、この先不幸なことが続けて起こるのをこの時はまだ誰も予想をしていなかった。
162
お気に入りに追加
3,802
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。