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第五章 冬の嵐
131.偽聖女、新しい出会い
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外は寒さが増し、本格的に冬に入った。
暖を取る手段を手に入れた私はやっと活動的になった。
「ママ先生みんなの着替え終わったよ」
「クロとトトありがとう! そろそろ朝食出来るから待っててね」
今日はゆで卵とマヨネーズで作ったタマゴサラダと葉物をパンで挟んだサンドイッチだ。
本当は柔らかい食パンで食べたいが、ハード系のパンしかないため仕方ない。
それでも以前ピクニックで食べたサンドイッチは美味しかった。
「ハムとリリは運んでもらってもいいかな?」
「はーい!」
出来たものから次々とハムとリリを中心に協力して運んでもらう。
「わぁー、今日はサンドイッチだね!」
居間から子ども達の喜んだ声が聞こえてくると、つい頬も緩んでしまう。
サンドイッチってパンの消費も多いから、たくさん買ってこないといけない。
お金の心配より、単純に買い物に行く回数が増えてしまう。
それがダウンジャケットと温石のおかげで、気にせずに行けるようになった。
以前は真冬に半袖で三往復スーパーに行くような感覚だった。
それだけ私にとって寒さは天敵だ。
ちなみにダウンジャケットを着て買い物に行ったら、みんな羨ましいのかニヤニヤした顔で見ていた。
「ママ先生準備できたよー!」
片付けを途中で終わらせて居間に向かうと、すでにみんな座っていた。
お腹が減ったのか私が来るのを待っていたようだ。
「じゃあ、食べようか。手を合わせてください」
「あわしぇました」
「合わせました」
「いただ――」
「たのもー!」
食事の挨拶の途中で外から声が聞こえてきた。
「レナードさんは子ども達の面倒を見てもらっても良いですか?」
「わかりました」
私が急いで玄関に向かうと、そこには二足立ちしたタヌキがいた。
「タヌキ……?」
「あれは半獣です」
私を追いかけてきたアルヴィンは、タヌキを見て"半獣"と言っていた。
また聞いたことのない言葉に私は首を傾げる。
「ここにきたら美味しいものが食べられるって本当か?」
タヌキが話したことに驚いたが、孤児院はレストランのような扱いになっているのだろうか。
ただ、背中でぐったりしている小さな子タヌキも気になった。
荷物も持ちやすくするために、布で包んで木の先端についている。
見た目が日本昔話や紙芝居に出てきそうな姿にそっくりだ。
「寒いから中に入ったらどうかな?」
まずは子どもの状態を確認する方が先になるだろう。
「嘘だ!」
「嘘だ?」
「そうやってタヌ達を食べるんだろ!」
「いや、さすがにタヌキは食べないよ?」
「ムッ……それは本当か」
どうやらタヌキは疑い深い性格をしているようだ。
体がボロボロになっているタヌキを招き入れる。
少しにおいが気になるのは湯浴みすらしていないからだろう。
「アルヴィンさんは桶にお湯を入れてもらっても良いですか?」
「何かあったらいけないのでクロを呼びますね。クロ、ママ先生の護衛を頼む!」
クロを呼んでアルヴィンは桶を取りに行った。
すぐに口の周りにたくさんのタマゴサラダを付けたクロが走って来た。
きっと呼ばれて急いで口の中に詰めてきたのだろう。
「ぐむむ」
「食べ終わってからでいいよ」
優しく背中を撫でると、急いで口の中にあるものを流し込んでいく。
「うん、食べ終わったよ」
「ふふふ、えらいね」
口の中を見せてちゃんと食べたのを伝えてきた。
マジマジと見たクロは歯がどこか尖っていた。
犬歯がはっきりと目立つのも特徴なんだろう。
その様子をどこか羨ましそうにタヌキは見ていた。
「ちょっと手伝ってもらってもいいかな?」
少しほのぼのと話していたが、クロを呼んでもらったのは話をするためじゃない。
それに気づいたクロもタヌキを見て、警戒を強める。
「この子誰?」
「ワイはポンタだ!」
「オラ達に何か用か?」
「ここに来たら美味しいものを食べさせてくれるって聞いたから来た!」
クロは私と目を合わせてため息を吐いた。
「ポンタの分はないぞ?」
「嘘だ!」
「んー、確かに嘘かもしれないね? 私の分が残ってたもんね」
「あれはママ先生のやつだよ?」
サンドイッチの材料は全て使っているため、ポンタにあげる分はない。
あるのはまだ食べてない私の分だけ。
動いたとしても家事をする程度のため、朝食がなくても特に問題はない。
「よかったら食べる?」
「うん!」
ポンタは目をキラキラさせていた。
獣人とは違う獣に近い見た目をしている半獣。
子ども達とはどこか違う可愛さがポンタにはあった。
暖を取る手段を手に入れた私はやっと活動的になった。
「ママ先生みんなの着替え終わったよ」
「クロとトトありがとう! そろそろ朝食出来るから待っててね」
今日はゆで卵とマヨネーズで作ったタマゴサラダと葉物をパンで挟んだサンドイッチだ。
本当は柔らかい食パンで食べたいが、ハード系のパンしかないため仕方ない。
それでも以前ピクニックで食べたサンドイッチは美味しかった。
「ハムとリリは運んでもらってもいいかな?」
「はーい!」
出来たものから次々とハムとリリを中心に協力して運んでもらう。
「わぁー、今日はサンドイッチだね!」
居間から子ども達の喜んだ声が聞こえてくると、つい頬も緩んでしまう。
サンドイッチってパンの消費も多いから、たくさん買ってこないといけない。
お金の心配より、単純に買い物に行く回数が増えてしまう。
それがダウンジャケットと温石のおかげで、気にせずに行けるようになった。
以前は真冬に半袖で三往復スーパーに行くような感覚だった。
それだけ私にとって寒さは天敵だ。
ちなみにダウンジャケットを着て買い物に行ったら、みんな羨ましいのかニヤニヤした顔で見ていた。
「ママ先生準備できたよー!」
片付けを途中で終わらせて居間に向かうと、すでにみんな座っていた。
お腹が減ったのか私が来るのを待っていたようだ。
「じゃあ、食べようか。手を合わせてください」
「あわしぇました」
「合わせました」
「いただ――」
「たのもー!」
食事の挨拶の途中で外から声が聞こえてきた。
「レナードさんは子ども達の面倒を見てもらっても良いですか?」
「わかりました」
私が急いで玄関に向かうと、そこには二足立ちしたタヌキがいた。
「タヌキ……?」
「あれは半獣です」
私を追いかけてきたアルヴィンは、タヌキを見て"半獣"と言っていた。
また聞いたことのない言葉に私は首を傾げる。
「ここにきたら美味しいものが食べられるって本当か?」
タヌキが話したことに驚いたが、孤児院はレストランのような扱いになっているのだろうか。
ただ、背中でぐったりしている小さな子タヌキも気になった。
荷物も持ちやすくするために、布で包んで木の先端についている。
見た目が日本昔話や紙芝居に出てきそうな姿にそっくりだ。
「寒いから中に入ったらどうかな?」
まずは子どもの状態を確認する方が先になるだろう。
「嘘だ!」
「嘘だ?」
「そうやってタヌ達を食べるんだろ!」
「いや、さすがにタヌキは食べないよ?」
「ムッ……それは本当か」
どうやらタヌキは疑い深い性格をしているようだ。
体がボロボロになっているタヌキを招き入れる。
少しにおいが気になるのは湯浴みすらしていないからだろう。
「アルヴィンさんは桶にお湯を入れてもらっても良いですか?」
「何かあったらいけないのでクロを呼びますね。クロ、ママ先生の護衛を頼む!」
クロを呼んでアルヴィンは桶を取りに行った。
すぐに口の周りにたくさんのタマゴサラダを付けたクロが走って来た。
きっと呼ばれて急いで口の中に詰めてきたのだろう。
「ぐむむ」
「食べ終わってからでいいよ」
優しく背中を撫でると、急いで口の中にあるものを流し込んでいく。
「うん、食べ終わったよ」
「ふふふ、えらいね」
口の中を見せてちゃんと食べたのを伝えてきた。
マジマジと見たクロは歯がどこか尖っていた。
犬歯がはっきりと目立つのも特徴なんだろう。
その様子をどこか羨ましそうにタヌキは見ていた。
「ちょっと手伝ってもらってもいいかな?」
少しほのぼのと話していたが、クロを呼んでもらったのは話をするためじゃない。
それに気づいたクロもタヌキを見て、警戒を強める。
「この子誰?」
「ワイはポンタだ!」
「オラ達に何か用か?」
「ここに来たら美味しいものを食べさせてくれるって聞いたから来た!」
クロは私と目を合わせてため息を吐いた。
「ポンタの分はないぞ?」
「嘘だ!」
「んー、確かに嘘かもしれないね? 私の分が残ってたもんね」
「あれはママ先生のやつだよ?」
サンドイッチの材料は全て使っているため、ポンタにあげる分はない。
あるのはまだ食べてない私の分だけ。
動いたとしても家事をする程度のため、朝食がなくても特に問題はない。
「よかったら食べる?」
「うん!」
ポンタは目をキラキラさせていた。
獣人とは違う獣に近い見た目をしている半獣。
子ども達とはどこか違う可愛さがポンタにはあった。
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