46 / 100
第五章 冬の嵐
127.偽聖女、カルボナーラ風うどんで異世界転移させる
しおりを挟む
ずらっとお皿が並べられたテーブルを前にみんなで揃って座る。
「ここではみんなで食べるのが普通なのかしら?」
「基本的にそうですね」
アンフォは私の隣に腰掛ける。
いつもは取り合いになっている席決めは、お客さんがいるのをわかって席を譲っていた。
ちなみにアルヴィンはちゃっかり私の目の前に座っている。
「マミイモこれはなんだ?」
バッカアは何か気になったのだろう。
ちびっこ達も首を傾げて、マジマジとお皿に乗ったうどんを見ている。
確かに知っているうどんなのに、出汁もなければ色も黄色だから戸惑っている。
「カルボナーラ風うどんです」
「おー、ちゅるちゅるか!」
"ちゅるちゅる"という言葉を聞いて、ちびっこ達のテンションは絶好調だ。
お腹の音が再び演奏を奏でている。
「しぇんしぇい!」
「早く!」
「じゃあ、皆さん手を合わせて」
「合わせました!」
「あわしぇました!」
アンフォも周囲を見ながらマネをする。
この世界には食べる前の祈りがないから戸惑うのも仕方ない。
「いただきます!」
「いたましゅ!」
「ましゅ!」
子ども達はすぐにフォークを手に取り、うどんを口に入れた。
「うみゃああああ!」
「あわわわわわ!」
言葉にならない声がそこら中から聞こえてきた。
一般的に子どもはクリーム系が好きな子も多いため、相当衝撃が強かったのだろう。
そして、隣にいる大人も同様だ。
「ちょ……バカ野郎どうしたのよ」
「なんだこれ……今まで生きててよかったあー!」
バッカアはうどんを食べただけで、涙をポロポロと流していた。
それでも口をモグモグと動かし、うどんを食べ続けている。
「アンフォ――」
「ぐすん……。心が浄化されますわ」
うん、やはりこの二人は兄妹なんだろう。
泣きながら食べている二人はそのまま放置することにした。
「アルヴィンさんは慣れて……遠い彼方へ行ってますね」
目の前にいるアルヴィンもフォークを持った状態で意識がどこかにいっていた。
そんなに美味しいのかと疑問に思いながらも、カルボナーラ風うどんを口に入れる。
「わあ……」
確かに声が出なくなるのは理解できた。
チーズを使っていないのに牛乳がかなり濃厚で、重すぎずにしっかりとクリームが絡み合っていた。
また、パスタと違ってもちもちして食べやすいのだろう。
「んー、ここまで濃厚だとチーズを作ってグラタンとかにしたら良いかもしれないね」
ボソッと呟いた声に別の世界に行っていた人達が現実世界に戻ってきた。
「マミイモ!」
「お姉様!」
「ママ先生!」
「ママ先生!」
「しぇんしぇい!」
みんながキラキラした顔で私の方を見てくる。
これはすぐに作って欲しいということなんだろう。
それだけこの世界の食文化が成長していない。
三代欲求の中でも食欲が一番低そうな気がした。
「まずは残さず食べてくださいね!」
その後も食べ終わるまでは、誰一人話すことなく食べきっていた。
子ども達の中で"カルボちゅるちゅる"という名前で人気のメニューとなった。
♢
食べ終わった私はアンフォとレナードの三人でこの世界の食文化について話していた。
「牛乳や卵を作った料理ってあまりないですか?」
「たまにしか食べないわ。グシャ公爵家では魔除けに使われている食材ですわ」
「それは私のところも同じです」
「魔除けですか?」
「ええ、基本的に卵や牛乳には魔力が含まれていると言われています」
「魔力ってあの魔力ですよね?」
「はい」
言われてみれば魔物から出てくるもののため、その可能性は否定できない。
卵も有精卵であれば、魔力が含まれているだろう。
「魔力を体に入れると代わりに呪いを吸収してくれるので、定期的に食事に出ますわ」
「ただ、私のところもここまで美味しくなかったですね」
風邪予防として日頃から食べられるのだろう。
貴族の方が風邪になりにくいのも、影響があるのかもしれない。
この冬に子供達が風邪を引くかどうかで、卵と牛乳が効果あるのか実験にもなる。
「じゃあ、暗くなる前に今日は解散しましょうか」
外も少しずつ暗くなり、風が強く吹き出した。
冬が訪れたことをすぐに実感できるほどだ。
「わざわざ来てくれてありがとう」
「ふん、お姉様が来てくれないのがいけないのよ!」
アンフォは相変わらずツンツンしているようだ。
「また、私が来てあげるからそのチーズというものも食べさせなさいよ!」
そして一瞬デレデレとしながらも楽しかったのか、にこやかに帰っていった。
「ここではみんなで食べるのが普通なのかしら?」
「基本的にそうですね」
アンフォは私の隣に腰掛ける。
いつもは取り合いになっている席決めは、お客さんがいるのをわかって席を譲っていた。
ちなみにアルヴィンはちゃっかり私の目の前に座っている。
「マミイモこれはなんだ?」
バッカアは何か気になったのだろう。
ちびっこ達も首を傾げて、マジマジとお皿に乗ったうどんを見ている。
確かに知っているうどんなのに、出汁もなければ色も黄色だから戸惑っている。
「カルボナーラ風うどんです」
「おー、ちゅるちゅるか!」
"ちゅるちゅる"という言葉を聞いて、ちびっこ達のテンションは絶好調だ。
お腹の音が再び演奏を奏でている。
「しぇんしぇい!」
「早く!」
「じゃあ、皆さん手を合わせて」
「合わせました!」
「あわしぇました!」
アンフォも周囲を見ながらマネをする。
この世界には食べる前の祈りがないから戸惑うのも仕方ない。
「いただきます!」
「いたましゅ!」
「ましゅ!」
子ども達はすぐにフォークを手に取り、うどんを口に入れた。
「うみゃああああ!」
「あわわわわわ!」
言葉にならない声がそこら中から聞こえてきた。
一般的に子どもはクリーム系が好きな子も多いため、相当衝撃が強かったのだろう。
そして、隣にいる大人も同様だ。
「ちょ……バカ野郎どうしたのよ」
「なんだこれ……今まで生きててよかったあー!」
バッカアはうどんを食べただけで、涙をポロポロと流していた。
それでも口をモグモグと動かし、うどんを食べ続けている。
「アンフォ――」
「ぐすん……。心が浄化されますわ」
うん、やはりこの二人は兄妹なんだろう。
泣きながら食べている二人はそのまま放置することにした。
「アルヴィンさんは慣れて……遠い彼方へ行ってますね」
目の前にいるアルヴィンもフォークを持った状態で意識がどこかにいっていた。
そんなに美味しいのかと疑問に思いながらも、カルボナーラ風うどんを口に入れる。
「わあ……」
確かに声が出なくなるのは理解できた。
チーズを使っていないのに牛乳がかなり濃厚で、重すぎずにしっかりとクリームが絡み合っていた。
また、パスタと違ってもちもちして食べやすいのだろう。
「んー、ここまで濃厚だとチーズを作ってグラタンとかにしたら良いかもしれないね」
ボソッと呟いた声に別の世界に行っていた人達が現実世界に戻ってきた。
「マミイモ!」
「お姉様!」
「ママ先生!」
「ママ先生!」
「しぇんしぇい!」
みんながキラキラした顔で私の方を見てくる。
これはすぐに作って欲しいということなんだろう。
それだけこの世界の食文化が成長していない。
三代欲求の中でも食欲が一番低そうな気がした。
「まずは残さず食べてくださいね!」
その後も食べ終わるまでは、誰一人話すことなく食べきっていた。
子ども達の中で"カルボちゅるちゅる"という名前で人気のメニューとなった。
♢
食べ終わった私はアンフォとレナードの三人でこの世界の食文化について話していた。
「牛乳や卵を作った料理ってあまりないですか?」
「たまにしか食べないわ。グシャ公爵家では魔除けに使われている食材ですわ」
「それは私のところも同じです」
「魔除けですか?」
「ええ、基本的に卵や牛乳には魔力が含まれていると言われています」
「魔力ってあの魔力ですよね?」
「はい」
言われてみれば魔物から出てくるもののため、その可能性は否定できない。
卵も有精卵であれば、魔力が含まれているだろう。
「魔力を体に入れると代わりに呪いを吸収してくれるので、定期的に食事に出ますわ」
「ただ、私のところもここまで美味しくなかったですね」
風邪予防として日頃から食べられるのだろう。
貴族の方が風邪になりにくいのも、影響があるのかもしれない。
この冬に子供達が風邪を引くかどうかで、卵と牛乳が効果あるのか実験にもなる。
「じゃあ、暗くなる前に今日は解散しましょうか」
外も少しずつ暗くなり、風が強く吹き出した。
冬が訪れたことをすぐに実感できるほどだ。
「わざわざ来てくれてありがとう」
「ふん、お姉様が来てくれないのがいけないのよ!」
アンフォは相変わらずツンツンしているようだ。
「また、私が来てあげるからそのチーズというものも食べさせなさいよ!」
そして一瞬デレデレとしながらも楽しかったのか、にこやかに帰っていった。
158
お気に入りに追加
3,795
あなたにおすすめの小説

愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!
つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。
他サイトにも公開中。

お母様と婚姻したければどうぞご自由に!
haru.
恋愛
私の婚約者は何かある度に、君のお母様だったら...という。
「君のお母様だったらもっと優雅にカーテシーをきめられる。」
「君のお母様だったらもっと私を立てて会話をする事が出来る。」
「君のお母様だったらそんな引きつった笑顔はしない。...見苦しい。」
会う度に何度も何度も繰り返し言われる言葉。
それも家族や友人の前でさえも...
家族からは申し訳なさそうに憐れまれ、友人からは自分の婚約者の方がマシだと同情された。
「何故私の婚約者は君なのだろう。君のお母様だったらどれ程良かっただろうか!」
吐き捨てるように言われた言葉。
そして平気な振りをして我慢していた私の心が崩壊した。
そこまで言うのなら婚約止めてあげるわよ。
そんなにお母様が良かったらお母様を口説いて婚姻でもなんでも好きにしたら!

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。