40 / 100
第五章 冬の嵐
121.偽聖女、小さな騎士と冒険者にほっこりする ※一部クロ視点
しおりを挟む
オラはママ先生と別れてからトトを追いかける。
ゆっくり歩いていたトトにすぐに追いついた。
すぐには孤児院に入らず、トトはキョロキョロと中を見ている。
きっとママ先生にバレないようにこっそり入ろうとしているのだろう。
オラはそんなトトにゆっくりと近づいて肩を叩く。
「うおおぉぉぉ!」
びっくりしたのかその場で腰を抜かしていた。
すぐに誰か確認したトトはゆっくりと息を吐いていた。
「はぁー、クロか」
オラはトトに手を貸すとすぐに立ち上がった。
それでも周囲をキョロキョロと警戒していた。
「ママ先生に心配かけたら、トトでも怒るからな」
「なっ!? オイラは何もしてないぞ!」
冒険者ギルドで何を話していたかは、オラの耳には聞こえていた。
トトはオラやキキと違って、自分には取り柄がないと思っているらしい。
だから、興味を惹くために汚い言葉を冒険者達から教えてもらっていた。
おっちゃん達も将来の若手冒険者に対する指導だと思っているのだろう。
ただ、ママ先生はそんなことには気づいてはいないし、トトのことだってしっかりと見ている。
いつもやんちゃな子ども達をまとめているのはトトだからな。
簡単にできるように見えて、オラにはできないトトの才能だ。
いつもママ先生がオラの前でトトはすごいと言っているのを聞いていた。
「ママ先生も帰ってくるからちゃんと謝るんだぞ」
「へっ!? オイラは何も――」
それでも何もしてないと言い張るトトに少し呆れてしまう。
「それはママ先生の前でも言える? ルールを破ったのはママ先生を裏切ることになるんだぞ」
しっかりみんなが守れるようにって理由でルールはママ先生とオラ達で決めた。
孤児院のルールを破ったのはいけないことだ。
「オイラはそんなつもりない」
「それはオラもママ先生も知ってるよ。それでもママ先生が心配してトトを探しに行ってたんだぞ」
「えっ……だってオイラのこと」
「好きに決まっているじゃん。ママ先生だよ?」
後を追いかけて行ったが、探しに行ったのは間違いではないはず。
外に出た時に一番心配していたのはママ先生だった。
「みんな歩くの速いねー!」
声がする方に振り向くと走ってくるママ先生がいた。
特に危ないこともないのに、必死な姿で帰ってくるママ先生――。
きっとこの先もオラ達を一番に思ってくれる大人はあの人しかいないだろう。
♢
冒険者ギルドから出た私は急いで孤児院に向かった。
いくら知っている道だからって、子どもだけで帰らせるのは危ない。
すごくしっかりしているが、あの子達はまだ5歳にも満たない子どもだ。
ただ、足が遅い私は孤児院に帰るまで結構な距離があった。
孤児院についた頃には息も荒れている。
門の前ではクロとトトが何かを話しているようだ。
「二人とも無事に帰って――」
「ママ先生ごめんなさい」
トトは私に泣きながら抱きついてきた。
何のことを言っているのかわからないが、トトの後ろでクロが口元に人差し指を当ててシーっと静かにするようにポーズで伝えてきた。
きっとクロがトトに何かを伝えたのだろう。
「ちゃんと帰って来れたならよかった」
私はトトの頭を撫でると小さく頷いていた。
「オイラは先生の邪魔じゃない?」
「私の? むしろ毎日助かっているわよ。みんなの面倒を見られるほど器用じゃないからね」
いつも子ども達が協力してくれているから、どうにか孤児院の運営もできている。
ほとんど子ども達に任せていると言っても良いぐらいだ。
私は近くにいたクロに手招きする。
クロは疑問に思ったのか、首を傾げながらも近づいてきた。
「みんなが居てくれるから私もママ先生を続けられているのよ」
二人を強く抱きしめる。
「いつもありがとう! 小さな騎士さんと冒険者さん」
「うん!」
「ニヒヒ!」
クロとトトは嬉しそうに私の胸の中で笑っていた。
ゆっくり歩いていたトトにすぐに追いついた。
すぐには孤児院に入らず、トトはキョロキョロと中を見ている。
きっとママ先生にバレないようにこっそり入ろうとしているのだろう。
オラはそんなトトにゆっくりと近づいて肩を叩く。
「うおおぉぉぉ!」
びっくりしたのかその場で腰を抜かしていた。
すぐに誰か確認したトトはゆっくりと息を吐いていた。
「はぁー、クロか」
オラはトトに手を貸すとすぐに立ち上がった。
それでも周囲をキョロキョロと警戒していた。
「ママ先生に心配かけたら、トトでも怒るからな」
「なっ!? オイラは何もしてないぞ!」
冒険者ギルドで何を話していたかは、オラの耳には聞こえていた。
トトはオラやキキと違って、自分には取り柄がないと思っているらしい。
だから、興味を惹くために汚い言葉を冒険者達から教えてもらっていた。
おっちゃん達も将来の若手冒険者に対する指導だと思っているのだろう。
ただ、ママ先生はそんなことには気づいてはいないし、トトのことだってしっかりと見ている。
いつもやんちゃな子ども達をまとめているのはトトだからな。
簡単にできるように見えて、オラにはできないトトの才能だ。
いつもママ先生がオラの前でトトはすごいと言っているのを聞いていた。
「ママ先生も帰ってくるからちゃんと謝るんだぞ」
「へっ!? オイラは何も――」
それでも何もしてないと言い張るトトに少し呆れてしまう。
「それはママ先生の前でも言える? ルールを破ったのはママ先生を裏切ることになるんだぞ」
しっかりみんなが守れるようにって理由でルールはママ先生とオラ達で決めた。
孤児院のルールを破ったのはいけないことだ。
「オイラはそんなつもりない」
「それはオラもママ先生も知ってるよ。それでもママ先生が心配してトトを探しに行ってたんだぞ」
「えっ……だってオイラのこと」
「好きに決まっているじゃん。ママ先生だよ?」
後を追いかけて行ったが、探しに行ったのは間違いではないはず。
外に出た時に一番心配していたのはママ先生だった。
「みんな歩くの速いねー!」
声がする方に振り向くと走ってくるママ先生がいた。
特に危ないこともないのに、必死な姿で帰ってくるママ先生――。
きっとこの先もオラ達を一番に思ってくれる大人はあの人しかいないだろう。
♢
冒険者ギルドから出た私は急いで孤児院に向かった。
いくら知っている道だからって、子どもだけで帰らせるのは危ない。
すごくしっかりしているが、あの子達はまだ5歳にも満たない子どもだ。
ただ、足が遅い私は孤児院に帰るまで結構な距離があった。
孤児院についた頃には息も荒れている。
門の前ではクロとトトが何かを話しているようだ。
「二人とも無事に帰って――」
「ママ先生ごめんなさい」
トトは私に泣きながら抱きついてきた。
何のことを言っているのかわからないが、トトの後ろでクロが口元に人差し指を当ててシーっと静かにするようにポーズで伝えてきた。
きっとクロがトトに何かを伝えたのだろう。
「ちゃんと帰って来れたならよかった」
私はトトの頭を撫でると小さく頷いていた。
「オイラは先生の邪魔じゃない?」
「私の? むしろ毎日助かっているわよ。みんなの面倒を見られるほど器用じゃないからね」
いつも子ども達が協力してくれているから、どうにか孤児院の運営もできている。
ほとんど子ども達に任せていると言っても良いぐらいだ。
私は近くにいたクロに手招きする。
クロは疑問に思ったのか、首を傾げながらも近づいてきた。
「みんなが居てくれるから私もママ先生を続けられているのよ」
二人を強く抱きしめる。
「いつもありがとう! 小さな騎士さんと冒険者さん」
「うん!」
「ニヒヒ!」
クロとトトは嬉しそうに私の胸の中で笑っていた。
166
お気に入りに追加
3,800
あなたにおすすめの小説

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?

お母様と婚姻したければどうぞご自由に!
haru.
恋愛
私の婚約者は何かある度に、君のお母様だったら...という。
「君のお母様だったらもっと優雅にカーテシーをきめられる。」
「君のお母様だったらもっと私を立てて会話をする事が出来る。」
「君のお母様だったらそんな引きつった笑顔はしない。...見苦しい。」
会う度に何度も何度も繰り返し言われる言葉。
それも家族や友人の前でさえも...
家族からは申し訳なさそうに憐れまれ、友人からは自分の婚約者の方がマシだと同情された。
「何故私の婚約者は君なのだろう。君のお母様だったらどれ程良かっただろうか!」
吐き捨てるように言われた言葉。
そして平気な振りをして我慢していた私の心が崩壊した。
そこまで言うのなら婚約止めてあげるわよ。
そんなにお母様が良かったらお母様を口説いて婚姻でもなんでも好きにしたら!

【完結】私よりも、病気(睡眠不足)になった幼馴染のことを大事にしている旦那が、嘘をついてまで居候させたいと言い出してきた件
よどら文鳥
恋愛
※あらすじにややネタバレ含みます
「ジューリア。そろそろ我が家にも執事が必要だと思うんだが」
旦那のダルムはそのように言っているが、本当の目的は執事を雇いたいわけではなかった。
彼の幼馴染のフェンフェンを家に招き入れたかっただけだったのだ。
しかし、ダルムのズル賢い喋りによって、『幼馴染は病気にかかってしまい助けてあげたい』という意味で捉えてしまう。
フェンフェンが家にやってきた時は確かに顔色が悪くてすぐにでも倒れそうな状態だった。
だが、彼女がこのような状況になってしまっていたのは理由があって……。
私は全てを知ったので、ダメな旦那とついに離婚をしたいと思うようになってしまった。
さて……誰に相談したら良いだろうか。

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。