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第五章 冬の嵐
120.偽聖女、一人でギルドに入る
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「何を言っているのかな?」
トトは冒険者達と話をしているようだ。
ただ、私の聴力では何も聞こえない。
冒険者の大きな声でトトの声はかき消されてしまう。
「クロは聞こえる?」
声をかけると黒く尖ったクロの耳がピクピクと動いていた。
あまりの可愛さについつい頭を撫でてしまう。
「ママ先生どうしたの?」
クロはパチパチと瞬きをして私の顔を見ている。
真剣に聞こうとしていたクロの邪魔をしてしまったようだ。
「邪魔しちゃったね」
「ううん、もっと触ってもいいよ」
クロは私の手を取って頭の上に置いた。
将来、この子は世界の女性を魅了する男性になるだろう。
そう思いながらもクロの頭を撫でるのをやめない。
だって――。
さっきから気持ちよさそうな顔をして微笑んでいる。
これを見て止められる人はいないと思う。
「あっ、ママ隠れるよ!」
突然クロは私の手を掴むと、建物の裏に隠れるようにその場から立ち去っていく。
「ありがとう!」
しばらくするとトトは冒険者ギルドから出て、孤児院の方へ戻って行く。
どうやら話は終わったようだ。
私はトトを追いかけようとしたが、クロに止められた。
「オラがトトに注意しておくから、ママ先生は冒険者ギルドにあいさつしてきたらどうかな?」
「それもそうね。トトがお世話になっているなら挨拶ぐらいしたほうが良いわね」
あの様子だとトトは何回も通っているのだろう。
さすがに知ってて声をかけないのも失礼にあたる。
早速、中にいる人達にお礼を伝えることにした。
「きっと野菜屋のお兄ちゃんもいるから大丈夫だよ」
いつもはアルヴィンとしか冒険者ギルドに来たことがないため、私が怖がらないように配慮までしてくれた。
ああ、本当にこの子の将来が色んな意味で心配になる。
優しすぎて女性達が取り合いして、ナイフで襲ってこないかしら。
「ママ先生も気をつけて帰って来てね」
クロは手を振りながら、孤児院に走って帰って行く。
私は表玄関から冒険者ギルドの扉に手をかける。
すると突然扉が開いた。
「うぉ!? 女神様がこんなところにどうしたんだ?」
そこにいたのは時々手伝ってくれる野菜屋の旦那さんだ。
「いや、さっきトトが出てくるのが見えたのでみなさんに挨拶でもしようと思って」
「おおおおう。いつもみんなで楽しく遊んでるぞ!」
他の冒険者達も後ろで手を振っていた。
「女神様も一杯飲んでいくか?」
「私にはまだ無理ですね」
「ははは、やっぱりお嬢ちゃんにはこの酒は強いか」
「がははは、またお前振られたな」
「俺は一生酒が恋人だからな」
声をかけてくれる人は増えたが、優しい気前の良い人達ばかりだ。
「それでトトのことですが、いつも何をしに来てるんですか?」
「あー、あれだ。あれぐらいの歳になると、母親には言えないことってあるだろう」
確かに孤児院の中で男性はアルヴィンしかいない。
トトみたいにやんちゃな子だとアルヴィンより冒険者の方が相談しやすいのかもしれない。
それはママ先生として孤児院をやっている私がもう少し気づくべきだった。
「皆さんにご迷惑をおかけしてすみません」
「いやいや、気にしなくて良いよ。むしろ俺らにもあんな時期があったからな。うん、つい最近までだけどな……」
「ああ、俺も考えただけで落ち込みたくなる」
トトの話をしていたのに、なぜか冒険者達は暗く落ち込み出した。
「皆さんも元気出してくださいね! これからもトトをよろしくお願いします」
「何かあれば俺らを頼ってくれよ!」
本当に街の人達と仲良くなって良かったと改めて思った。
冒険者に挨拶だけして私は孤児院に戻ることにした。
「はぁー、トトも素直になれればいいけどな」
「きっと女神様なら大丈夫だろ。構ってもらいたくて汚い言葉を教えているとも言えないしな……」
冒険者ギルドでは静かに男達の声が響いていた。
トトは冒険者達と話をしているようだ。
ただ、私の聴力では何も聞こえない。
冒険者の大きな声でトトの声はかき消されてしまう。
「クロは聞こえる?」
声をかけると黒く尖ったクロの耳がピクピクと動いていた。
あまりの可愛さについつい頭を撫でてしまう。
「ママ先生どうしたの?」
クロはパチパチと瞬きをして私の顔を見ている。
真剣に聞こうとしていたクロの邪魔をしてしまったようだ。
「邪魔しちゃったね」
「ううん、もっと触ってもいいよ」
クロは私の手を取って頭の上に置いた。
将来、この子は世界の女性を魅了する男性になるだろう。
そう思いながらもクロの頭を撫でるのをやめない。
だって――。
さっきから気持ちよさそうな顔をして微笑んでいる。
これを見て止められる人はいないと思う。
「あっ、ママ隠れるよ!」
突然クロは私の手を掴むと、建物の裏に隠れるようにその場から立ち去っていく。
「ありがとう!」
しばらくするとトトは冒険者ギルドから出て、孤児院の方へ戻って行く。
どうやら話は終わったようだ。
私はトトを追いかけようとしたが、クロに止められた。
「オラがトトに注意しておくから、ママ先生は冒険者ギルドにあいさつしてきたらどうかな?」
「それもそうね。トトがお世話になっているなら挨拶ぐらいしたほうが良いわね」
あの様子だとトトは何回も通っているのだろう。
さすがに知ってて声をかけないのも失礼にあたる。
早速、中にいる人達にお礼を伝えることにした。
「きっと野菜屋のお兄ちゃんもいるから大丈夫だよ」
いつもはアルヴィンとしか冒険者ギルドに来たことがないため、私が怖がらないように配慮までしてくれた。
ああ、本当にこの子の将来が色んな意味で心配になる。
優しすぎて女性達が取り合いして、ナイフで襲ってこないかしら。
「ママ先生も気をつけて帰って来てね」
クロは手を振りながら、孤児院に走って帰って行く。
私は表玄関から冒険者ギルドの扉に手をかける。
すると突然扉が開いた。
「うぉ!? 女神様がこんなところにどうしたんだ?」
そこにいたのは時々手伝ってくれる野菜屋の旦那さんだ。
「いや、さっきトトが出てくるのが見えたのでみなさんに挨拶でもしようと思って」
「おおおおう。いつもみんなで楽しく遊んでるぞ!」
他の冒険者達も後ろで手を振っていた。
「女神様も一杯飲んでいくか?」
「私にはまだ無理ですね」
「ははは、やっぱりお嬢ちゃんにはこの酒は強いか」
「がははは、またお前振られたな」
「俺は一生酒が恋人だからな」
声をかけてくれる人は増えたが、優しい気前の良い人達ばかりだ。
「それでトトのことですが、いつも何をしに来てるんですか?」
「あー、あれだ。あれぐらいの歳になると、母親には言えないことってあるだろう」
確かに孤児院の中で男性はアルヴィンしかいない。
トトみたいにやんちゃな子だとアルヴィンより冒険者の方が相談しやすいのかもしれない。
それはママ先生として孤児院をやっている私がもう少し気づくべきだった。
「皆さんにご迷惑をおかけしてすみません」
「いやいや、気にしなくて良いよ。むしろ俺らにもあんな時期があったからな。うん、つい最近までだけどな……」
「ああ、俺も考えただけで落ち込みたくなる」
トトの話をしていたのに、なぜか冒険者達は暗く落ち込み出した。
「皆さんも元気出してくださいね! これからもトトをよろしくお願いします」
「何かあれば俺らを頼ってくれよ!」
本当に街の人達と仲良くなって良かったと改めて思った。
冒険者に挨拶だけして私は孤児院に戻ることにした。
「はぁー、トトも素直になれればいいけどな」
「きっと女神様なら大丈夫だろ。構ってもらいたくて汚い言葉を教えているとも言えないしな……」
冒険者ギルドでは静かに男達の声が響いていた。
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