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第五章 冬の嵐

119.偽聖女、ストーカーになる

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「アルにいは愛人のところに行ったの?」

「もう! トトはまたどこでそんな言葉覚えて来たの!」

 私は言葉使いの悪いトトを追いかける。

「オイラのこと捕まえ――」

「ママ先生を困らせるな」

 逃げた先にはクロがいたため、トトはすぐに捕まっていた。

「クロひきょーだぞー!」

「今のはトトが悪い」

「ムッ!」

 トトはクロに対して怒っていた。

「言葉使いの悪い口はこれかあ?」

 トトの頬を掴んでグリグリと回す。

 いつからかトトの言葉使いが目立つようになってきた。

 少し汚い言葉を使う程度でまだまだ可愛いが、彼はヤンチャな子をまとめるリーダーポジションの子だ。

 トトのマネをして、ちびっこ達がヤンチャに育ったら大変なことになってしまう。

「いたたたた」

「ならもう言わないって約束する?」

「言わないでしゅ」

 だからこうやってしっかり反省するまで頬で遊ぶ。

 これだけは言っておこう。

 決して私が単に頬を触りたいわけではない。

 これもちゃんとした教育の一環だ。

「イタタタ……」

 頬を撫でているトトの姿を見ると、ついついまた頬で遊びたくなる。

「ママ先生、また今度ね!」

 反省したのかわからないが、トトは満足したのか笑顔で子ども達と遊びに行った。

 彼は何がしたいのだろうか。

「ママ先生、オラが注意しておこうか?」

「んー、ちょっとした反抗期とかなんじゃないかな?」

「はんこうき?」

 普通なら第一次反抗期が1歳から3歳ぐらいにあるはず。

 むしろ今まで良い子ばかりで気にしたことがなかったが、遅く来たと思えばちゃんと成長している証拠だ。

 これぐらいの反抗期なら可愛いからつい許してしまう。

「でもどこで言葉を覚えてくるのか不思議だね」

「兄ちゃんもレナねえも教えてないもんね」

「バッカアが難しい言葉を知っているわけでもないからね」

 以前からたまに出てくる汚い言葉を誰が教えているのか確認したら、アルヴィンとレナードは教えていなかった。

 むしろ子ども達に悪影響がないように、言葉には気をつけていると言っていた。

 バッカアはバカ野郎だから、難しい言葉を知っている可能性は低い。

 日常的に"浮気"や"愛人"という言葉を使うことはないからね。

「少しトトを観察してみようか」

「オラも付いていく!」

 私とクロは二人でトトの1日を観察することにした。

 すぐに追いかけてちびっこ達と遊んでいる庭に向かった。

「ポッポ何か手伝うか?」

「今は大丈夫ぽ!」

 庭ではトトがポッポに何か手伝うことがないかと聞いていた。

 牛や鶏の世話は基本的にポッポが中心に行っているため、人手が足りないと思ったのだろう。

 牧場にいたテバサキの仲間達は治療の効果もあって、少しずつ回復した。

 今はリハビリを兼ねて、ちびっこ達と遊んでいる。

 ちびっこ達の相手をしなくても良くなったトトは暇になったのだろう。

「急にやることがないと時間の使い方がわからないもんね」

「キキと一緒に勉強すれば良いのに」

 勉強嫌いのトトは暇だからという理由で勉強はしないだろう。

 トコトコと寂しそうに歩いていくトトを追いかけると、今度は孤児院の外に出て行った。

「えっ? どこにいくの?」

「ママ先生行くよ!」

 基本的に孤児院の外に行く時は、大人と一緒に出かけるルールを作っている。

 トトはそれを気にせずに外に出かけていた。

 きっと抜け出すのはこれが初めてではないのだろう。

 ただ、トトがどこに行くのか興味が湧いてきた。

 子ども達は私に嫌われるようなことはしない。

 そんな中でルールを破ってまで外に出る理由が何かあるはずだ。

 私とクロは隠れてそのまま追いかけると、トトはある建物の前で止まった。

「冒険者ギルドだね」

「何か用があるのかな?」

 トトは迷うことなく冒険者ギルドの中に入って行く。

 私とクロは見つからないように、外からその様子を伺うことにした。
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