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第四章 もふもふはサラサラ
39.もふもふの父が登場するようです
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その後部屋から駆け出したオーブナーの姿はメイドや執事に見られていた。
その結果、執事のクリスも簡単な物で良いから、替え服が欲しいと言ってきた。
マリアはそんなクリス達の要望を叶えるために、作り方を公爵家お抱えの洋裁師に伝えた。
名前が付いていないのも分かりにくいため、エプロンと名付けられた。
気づいた頃には屋敷の中はエプロンを使う人達ばかりだ。
そんな公爵家の人達は今日も忙しく働いている。
「今日は何かあるんですか?」
「久々に公爵様達がお帰りになるんです」
オーブナーの父はこの国の宰相を務めており、兄もその見習いとして城で泊まり込みで働いているらしい。
今までオーブナーが帰ってくるまでは、ミリアムと屋敷に仕える人達しか住んでいなかった。
そんな屋敷が久しぶりに賑やかになるとクリスは喜んでいた。
僕達は邪魔にならないように部屋で遊ぶことにした。
♢
――トントン!
「リック達今いいか?」
扉をノックする音が聞こえると、中に入ってきたのはオーブナーだ。
「何かありましたか?」
「父がリック達に会いたいと言っていたから呼びに来た。別に嫌なら挨拶しに来なくてもいいぞ。むしろ体調が悪いと言ってくれ」
これはどうするべきなんだろうか。オーブナーの言葉をそのまま受け取ると、会わせたくないような気がする。
ただ、お世話になっている屋敷の家主に会わないのは失礼にあたるだろう。
マリアもそれを思ったのか、少しだけ挨拶することにした。
オーブナーは大きくため息をついていたが、仕方なさそうに僕達を案内する。
「本当に怖かったら、俺の後ろに隠れていろよ」
着くまでずっと同じことを言っていた。そんなに現公爵が怖いのだろうか。
事前に何が無礼な行動なのか、挨拶の仕方はどうするのか聞かされるほどだ。
家族だから礼儀作法や教育が厳しかったのかもしれない。
「父上、リックとマリアを連れてきました」
オーブナーの横に立って頭を下げる。そして、すぐに顔を上げてから挨拶をする。
「この度は挨拶させて……もふもふだ!」
だが、僕の目の前に現れたのはもふもふとした男だった。髪の毛は茶色でウェーブがかかり、体格はオーブナーよりも大きかった。
事前に宰相をしていると聞いたが、そんなに体力を使う仕事なんだろうか。
少し毛深いのはオーブナーに似ている。さすが親子と言った感じだ。
そして、隣では僕の言葉にオーブナーは頭を抱えていた。
「ほぅ、私を見てもふもふと言うのか」
どうやら僕は怒らせてしまったらしい。
「ちょっとこっちに来なさい」
「父上、それは――」
「オーブナーは黙りなさい」
静かに張り詰めた空気が流れる。僕はゆっくりと公爵の元へ向かう。
僕の目の前には足を組んだ公爵。
近くでみるとさらにもふもふ感が伝わってくる。
触りたい……でも、触ったら確実に怒られるだろう。
「うっ……」
僕は手を出しては、戻してを繰り返す。必死にもふもふしないように、右手を反対の手で抑える。
そんな僕を見て公爵はゆっくりと僕の手を取った。
――ポン
「そんなに触りたいなら触りなさい」
僕の手は公爵の頭に置かれた。ああ、これが公爵のもふもふか。
柔らかな髪質だが、モスス達とは違い人間だから触り心地が違う。
「父上が撫でられている……」
「まるで撫でられている熊のようだわ」
触れて満足した僕は手を離す。すると少し不満そうな顔をしている公爵がいた。
「すみません」
謝ると公爵はいつも通りの顔に戻っていた。
「君は私が怖くないのか? オーブナーにも懐いているようだが?」
「えっ? オーブナーさんはとても優しくて頼り甲斐のある人ですよ」
「そうか」
少し顔が微笑んでいるのか、笑った顔はどこかオーブナーに似ていた。
その結果、執事のクリスも簡単な物で良いから、替え服が欲しいと言ってきた。
マリアはそんなクリス達の要望を叶えるために、作り方を公爵家お抱えの洋裁師に伝えた。
名前が付いていないのも分かりにくいため、エプロンと名付けられた。
気づいた頃には屋敷の中はエプロンを使う人達ばかりだ。
そんな公爵家の人達は今日も忙しく働いている。
「今日は何かあるんですか?」
「久々に公爵様達がお帰りになるんです」
オーブナーの父はこの国の宰相を務めており、兄もその見習いとして城で泊まり込みで働いているらしい。
今までオーブナーが帰ってくるまでは、ミリアムと屋敷に仕える人達しか住んでいなかった。
そんな屋敷が久しぶりに賑やかになるとクリスは喜んでいた。
僕達は邪魔にならないように部屋で遊ぶことにした。
♢
――トントン!
「リック達今いいか?」
扉をノックする音が聞こえると、中に入ってきたのはオーブナーだ。
「何かありましたか?」
「父がリック達に会いたいと言っていたから呼びに来た。別に嫌なら挨拶しに来なくてもいいぞ。むしろ体調が悪いと言ってくれ」
これはどうするべきなんだろうか。オーブナーの言葉をそのまま受け取ると、会わせたくないような気がする。
ただ、お世話になっている屋敷の家主に会わないのは失礼にあたるだろう。
マリアもそれを思ったのか、少しだけ挨拶することにした。
オーブナーは大きくため息をついていたが、仕方なさそうに僕達を案内する。
「本当に怖かったら、俺の後ろに隠れていろよ」
着くまでずっと同じことを言っていた。そんなに現公爵が怖いのだろうか。
事前に何が無礼な行動なのか、挨拶の仕方はどうするのか聞かされるほどだ。
家族だから礼儀作法や教育が厳しかったのかもしれない。
「父上、リックとマリアを連れてきました」
オーブナーの横に立って頭を下げる。そして、すぐに顔を上げてから挨拶をする。
「この度は挨拶させて……もふもふだ!」
だが、僕の目の前に現れたのはもふもふとした男だった。髪の毛は茶色でウェーブがかかり、体格はオーブナーよりも大きかった。
事前に宰相をしていると聞いたが、そんなに体力を使う仕事なんだろうか。
少し毛深いのはオーブナーに似ている。さすが親子と言った感じだ。
そして、隣では僕の言葉にオーブナーは頭を抱えていた。
「ほぅ、私を見てもふもふと言うのか」
どうやら僕は怒らせてしまったらしい。
「ちょっとこっちに来なさい」
「父上、それは――」
「オーブナーは黙りなさい」
静かに張り詰めた空気が流れる。僕はゆっくりと公爵の元へ向かう。
僕の目の前には足を組んだ公爵。
近くでみるとさらにもふもふ感が伝わってくる。
触りたい……でも、触ったら確実に怒られるだろう。
「うっ……」
僕は手を出しては、戻してを繰り返す。必死にもふもふしないように、右手を反対の手で抑える。
そんな僕を見て公爵はゆっくりと僕の手を取った。
――ポン
「そんなに触りたいなら触りなさい」
僕の手は公爵の頭に置かれた。ああ、これが公爵のもふもふか。
柔らかな髪質だが、モスス達とは違い人間だから触り心地が違う。
「父上が撫でられている……」
「まるで撫でられている熊のようだわ」
触れて満足した僕は手を離す。すると少し不満そうな顔をしている公爵がいた。
「すみません」
謝ると公爵はいつも通りの顔に戻っていた。
「君は私が怖くないのか? オーブナーにも懐いているようだが?」
「えっ? オーブナーさんはとても優しくて頼り甲斐のある人ですよ」
「そうか」
少し顔が微笑んでいるのか、笑った顔はどこかオーブナーに似ていた。
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