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ストーカーライフ
45. 強奪者 ※ダンジョン視点
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私は王都の最果てのダンジョンを管理しているダンジョンコアだ。
まぁ、ダンジョンコアって言っても簡単に言えば魔物とそこまで変わらない。
身動きは取れないが、その分敵を倒すことで経験値が得られて強くなるという仕組みだ。
「おっ、また人が来たか……」
私はモニター越しに入り口を見ると、謎の生物を連れた人が歩いてきた。
「モニターにもスキルポイント振るべきだったな」
モニターの画質が悪いのか、はっきりと何が入ってきたかは見づらかった。
以前はこのダンジョンも、冒険者達が集まるほどの賑やかなダンジョンだった。
だがいつからか周りにダンジョンがたくさんできてから、以前のように賑やかなことはなくなった。
いつしかここに来るのは、自ら命を絶つ人や魔物しかいない。
だから今回もそうだと思った。
だが、こいつらは違った。
「ははは、またトラップに引っかかってやがるぜ!」
ことごとく私が用意したトラップに引っかかっていたのだ。
それはもう腹を抱えるほどだった。
「はぁー、久しぶりに楽しんだ。きっとあいつらならすぐに死ぬだろう」
私はそう思って一眠りすることにした。それが悲劇の始まりだった。
♢
「ダンジョンさん起きてください!」
モニターから聞こえる声に目を覚ました。
「どうした?」
「変質者が現れました!」
「変質者?」
「はい! 毛がない頭のおかしいやつが私達を追いかけて来るんです」
「毛がない頭がおかしいやつ?」
言葉だけ聞けば、ただのハゲのことを言っているのだろうと思った。
だがよくモニターを見ると、確かに二足歩行で走る何かがグレートウルフを追いかけていた。
「あっ、ちょっと待ってな」
目を凝らして見るとスライム、オーク、ハーピーからも同様に苦情の連絡が入っていた。
何でもめちゃくちゃ強くて、アイテムを強奪していくと言っていた。
ここにいる魔物は他のダンジョンよりも強力なはずだ。冒険者達が来なくなった理由の一つが、魔物召喚のスキルが強かったからだ。
その辺にいるスライムは上位種のヒュージスライムだし、オークもオークキングと普通では倒せない。
「とりあえずお前らは声をかけられたらすぐに逃げるんだ」
「わかりました!」
グレートウルフが身の危険を感じるとは、どんなやつなんだろう。
私はそれが気になってモニターを見ているとついにその正体がわかった。
トラップに引っ掛かっていたあいつらだ。
「ダンジョンさん緊急事態です!」
「どうした?」
次に連絡が来たのは最下層にいるブラックドラゴンからだった。
ブラックドラゴンといえばドラゴン種の中でも凶暴な分類に入るため、ダンジョンの私でさえも手懐けるのに苦労した。
実際は私のスキルで産んでいる魔物だから彼らは私を主人と思っている。
「突然、人間とフェンリルと鬼神が現れました!」
私はその言葉を聞いて震え上がった。
フェンリルといえば聖獣と言われる魔物で、その力は私達の魔物を軽く超えている存在だ。
そして鬼神も同様に魔物を超えた、聖魔と呼ばれている。
その二体と人間とはどういう組み合わせなんだ。
戦ったらブラックドラゴンでも敵わないだろう。
モニター越しにブラックドラゴンが殺さないでと頭を下げているのが見てわかる。
「ダンジョンさん、一生のお願いしてもいいですか?」
「なんだ?」
「やつらがトラップを持って帰ってもいいならすぐに出て行くと言ってます」
それで私達の命が安全ならそれぐらい構わない。まずは命が優先だからな。
「わかった! いくらでも持っていけと伝えてくれ」
「わかりました」
ブラックドラゴンがやつらに伝えると、向きを変えて出口に向かっていった。
これでやっと魔物達からの苦情が来ない。そう思ったのが甘かった。
苦情は来なくなったが私の精神が崩壊するかと思った。
「ぬぉー、それは値段が高かったトラップだ! やめてくれー!」
トラップを持って帰るという話を受けたのは、流石に持って帰れないと思ったからだ。
基本的には取り外しはダンジョンである、私しかできないはずだ。
それを人間が魔法を唱えると、全てが片手サイズとなり、次々とトラップを回収していく。
しかも、トラップの仕掛けボタンである魔法陣も違うものに貼り付けていくのだ。
気づいた頃には私のダンジョンの中のトラップは全て無くなっていた。
こんな惨めなことはダンジョン人生はじめての出来事だった。
まぁ、ダンジョンコアって言っても簡単に言えば魔物とそこまで変わらない。
身動きは取れないが、その分敵を倒すことで経験値が得られて強くなるという仕組みだ。
「おっ、また人が来たか……」
私はモニター越しに入り口を見ると、謎の生物を連れた人が歩いてきた。
「モニターにもスキルポイント振るべきだったな」
モニターの画質が悪いのか、はっきりと何が入ってきたかは見づらかった。
以前はこのダンジョンも、冒険者達が集まるほどの賑やかなダンジョンだった。
だがいつからか周りにダンジョンがたくさんできてから、以前のように賑やかなことはなくなった。
いつしかここに来るのは、自ら命を絶つ人や魔物しかいない。
だから今回もそうだと思った。
だが、こいつらは違った。
「ははは、またトラップに引っかかってやがるぜ!」
ことごとく私が用意したトラップに引っかかっていたのだ。
それはもう腹を抱えるほどだった。
「はぁー、久しぶりに楽しんだ。きっとあいつらならすぐに死ぬだろう」
私はそう思って一眠りすることにした。それが悲劇の始まりだった。
♢
「ダンジョンさん起きてください!」
モニターから聞こえる声に目を覚ました。
「どうした?」
「変質者が現れました!」
「変質者?」
「はい! 毛がない頭のおかしいやつが私達を追いかけて来るんです」
「毛がない頭がおかしいやつ?」
言葉だけ聞けば、ただのハゲのことを言っているのだろうと思った。
だがよくモニターを見ると、確かに二足歩行で走る何かがグレートウルフを追いかけていた。
「あっ、ちょっと待ってな」
目を凝らして見るとスライム、オーク、ハーピーからも同様に苦情の連絡が入っていた。
何でもめちゃくちゃ強くて、アイテムを強奪していくと言っていた。
ここにいる魔物は他のダンジョンよりも強力なはずだ。冒険者達が来なくなった理由の一つが、魔物召喚のスキルが強かったからだ。
その辺にいるスライムは上位種のヒュージスライムだし、オークもオークキングと普通では倒せない。
「とりあえずお前らは声をかけられたらすぐに逃げるんだ」
「わかりました!」
グレートウルフが身の危険を感じるとは、どんなやつなんだろう。
私はそれが気になってモニターを見ているとついにその正体がわかった。
トラップに引っ掛かっていたあいつらだ。
「ダンジョンさん緊急事態です!」
「どうした?」
次に連絡が来たのは最下層にいるブラックドラゴンからだった。
ブラックドラゴンといえばドラゴン種の中でも凶暴な分類に入るため、ダンジョンの私でさえも手懐けるのに苦労した。
実際は私のスキルで産んでいる魔物だから彼らは私を主人と思っている。
「突然、人間とフェンリルと鬼神が現れました!」
私はその言葉を聞いて震え上がった。
フェンリルといえば聖獣と言われる魔物で、その力は私達の魔物を軽く超えている存在だ。
そして鬼神も同様に魔物を超えた、聖魔と呼ばれている。
その二体と人間とはどういう組み合わせなんだ。
戦ったらブラックドラゴンでも敵わないだろう。
モニター越しにブラックドラゴンが殺さないでと頭を下げているのが見てわかる。
「ダンジョンさん、一生のお願いしてもいいですか?」
「なんだ?」
「やつらがトラップを持って帰ってもいいならすぐに出て行くと言ってます」
それで私達の命が安全ならそれぐらい構わない。まずは命が優先だからな。
「わかった! いくらでも持っていけと伝えてくれ」
「わかりました」
ブラックドラゴンがやつらに伝えると、向きを変えて出口に向かっていった。
これでやっと魔物達からの苦情が来ない。そう思ったのが甘かった。
苦情は来なくなったが私の精神が崩壊するかと思った。
「ぬぉー、それは値段が高かったトラップだ! やめてくれー!」
トラップを持って帰るという話を受けたのは、流石に持って帰れないと思ったからだ。
基本的には取り外しはダンジョンである、私しかできないはずだ。
それを人間が魔法を唱えると、全てが片手サイズとなり、次々とトラップを回収していく。
しかも、トラップの仕掛けボタンである魔法陣も違うものに貼り付けていくのだ。
気づいた頃には私のダンジョンの中のトラップは全て無くなっていた。
こんな惨めなことはダンジョン人生はじめての出来事だった。
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