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第一章 社畜、パパになる

17.社畜、魔宝石に驚く

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 ヤクザのゴボタを見たくなかった俺は途中から作業を代わり、ゴボタには石集めをしてもらった。

 そこから辺に石は転がっているのか、ゴボタはたくさん持ってきた。

 何に使うかわからない魔宝石だが、これでリーゼントの機嫌も良くなればいいと思いながらも帰ることにした。

「リーゼン……トオオオォォォ!」

「ゴボオオオオオ!」

「あっ、おかえりー」

 俺達は拠点に帰ると、立派な屋根に驚いた。

 もはや屋根というよりはツリーハウスのように見える。

 全体的に屋根があることで、ハンモックを作った時でもしっかり日差しを当らないようにしたのだろう。

 リーゼントの才能に俺はただ驚くしかなかった。

「石油はあったのか?」

 リーゼントは期待した眼差しで俺を見つめてきた。

 そんな顔で俺を見ないでくれ。

「あっ……」

「あー、ボスはすぐに嘘をつくんですね。あーあ」

 不貞腐れた顔で俺に鼻くそをつけてくる。

 実際に石油を見つけられなかったため、文句を言われても仕方ない。

 それに石油をみつけたからって、ガソリンにできるわけではないからな。

「でも代わりに魔宝石をみつけたぞ!」

 俺は魔宝石をリーゼントにすぐに見せる。

 興味が出たのか手に取って、マジマジとみていた。

「こんなのでオラが騙されると思うなよ!」

 リーゼントは持っていた魔宝石を地面に叩きつけて怒っていた。

 ここはちゃんと謝らないといけないだろう。

 その前に投げられた魔宝石を拾い、視線を上げるとそこにはスクーターで何かをしているゴボタがいた。

「ゴボタ何して……」

 スクーターに魔宝石を収納しようと思ったのだろう。

「あっ、あいつ石っころを入れてやがる!」

「へっ!?」

 スクーターには座面を上げたところに、ガソリンを入れるタンクが付いている。

 そこのキャップを外して魔宝石を入れていたのだ。

 これでスクーターは完全に壊れただろう。

 ひっくり返しても細かい魔宝石を全て取り出すことはできないからな。

「やめるんだあああ!」

 急いでリーゼントは止めに行ったが、すでに遅かった。

 ゴボタは持っていた魔宝石をガソリンタンクにたくさん入れていた。

「石油もないから仕方ないよ」

――パチン!

 俺はそっとリーゼントの肩に触れると手を弾かれてしまった。

「スクーターがなければ生粋のツッパリがただのツッパリになるだろうが!」

 言っていることが全くわからない。

 ただ、リーゼントにとってスクーターは大事なんだろう。

「あー、そのスクーターは俺のだけどな」

「ボスは黙ってて!」

「はい……」

 さっきといいリーゼントは俺に対して当たりが強かった。

 リーゼントはゴボタに対して怒っていたが、ゴボタは気にせずスクーターのエンジンをかけだした。

「壊れるじょおおおおお!」

 リーゼントは一生懸命スクーターにくっついて、どうすれば良いのか悩んでいた。

 一方の俺はその場で伏せた。

 さすがに全く別のものが入っているため、危険だと感じていた。

 これがスクーターに対する愛情の違いだろう。

――ドゥンドゥン!

 だが、俺の予想はことごとく裏切られた。

 スクーターのエンジンがついたのだ。

 ゆっくりと近寄りガソリンメーターを確認すると満タンになっていた。

 何が起こったのか全くわからないリーゼントはその場でボーッと立ち尽くしていた。

 俺はスクーターに乗り、アクセルをかけてみる。

「走るんかよー」

 そのままスクーターは走り出した。

 特に変な音も聞こえず、ちゃんといつも通り走っている。

 魔宝石って実は石油だったのだろうか。

「ワオオオオオン!」

 リーゼントの鳴き声が大きく響く。

 それだけスクーターが動いたのが嬉しいのだろう。

 すぐにリーゼントは走って追いかけてきた。

「うぉ、あいつの顔やべーぞ」

 泣いて鼻水を垂らしたリーゼントの顔は少し気持ち悪かった。

 俺が止まると、スクーターに頬をスリスリとしている。

「しゅくーたー、会いたかったぜぇ」

 本当にスクーターが好きなんだな。

 帰ることができたら、スクーターじゃなくてバイクでも買ってあげたいと思うほどだ。

 スクーターよりは、見た目はカッコ良いからな。

 ツッパリって言われたらスクーターよりバイクの方が似合いそうだ。

 その後もしばらくはスクーターに頬擦りをしていた。
 

「魔宝石は何色を入れたんだ?」

「これぇ!」

 ゴボタは赤色の魔宝石を渡してきた。

 適当に魔宝石をガソリンタンクに入れているかと思ったが、全部の割合が異なっており気になっていた。

 どうやら色によって何かが違うのだろうか。

 ゴボタもわからなさそうにしていたが、スクーターは赤色って覚えていた方が良いだろう。

 魔宝石は色がさまざまで赤、青、黄、緑、紫、白、黒、茶、色が混ざったやつと九種類もある。

 それに同じ赤でも若干色が異なっている。

 これはルビーとガーネットのように、赤でも違う魔宝石なのかもしれない。

 俺とゴボタはリーゼントはそのままにしておいて、魔宝石を運んで拠点の中に入ることにした。

「屋根があるだけで違うな」

「ゴボッ!」

 やはりゴボタもそう感じたのだろう。

 さすがに春に近い天気でも、ずっと日に当たっていたら暑いからな。

 屋根の下で風を感じながら、ボーッとするって最高だな。

 社畜だった俺には考えられない癒しの空間だ。

「じゃあ、俺達だけでも先に飯を食べるか」

「ご飯……」

「ああ、言わなくてもわかってるぞ。俺もそろそろ果実に飽きてきたからな」

 食料はほぼ果実ばかりで、食べている気にならないのが正直なところだ。

 持っているプロテインバーも甘いやつばかりのため、食べる気にもならない。

 今度は食事の改善が必要になってくるだろう。

「リーゼント、飯にするぞー!」

「ツッパリは犬の勲章だぜー!」

 どこかで聞いたことあるような歌をリーゼントは歌っていた。
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