庭にできた異世界で丸儲け。破格なクエスト報酬で社畜奴隷からニートになる。〜投資額に応じたスキルを手に入れると現実世界でも無双していました〜

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101. 自動アイテム生成の力

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 昼見世ひるみせは休みとなった朱理しゅりは、一先ひとまずゆっくり風呂に入り、疲れを癒す事にした。普段は20分そこそこで出るものを、40分程かけて堪能し、襦袢じゅばんを引っ掛けて自室へ戻る。
 時刻は‪13時‬を回っており、他の娼妓しょうぎらは各々おのおの、支度に取り掛かっている頃だ。
 オンデマンドで映画でも見ようかと思っていた時、がらりとふすまを開いて入って来た黒蔓くろづるの姿に、目が点になる。

「……え? どしたの、その格好……なにごと?」
「なにごとってなんだ、普通だろ」
「いや、普通だから普通じゃないっつーか、なんつーか……」

 黒蔓は普段、着流しの胸元を広くくつろげ、羽織も肩に引っ掛けるだけという、何ともしどけない出で立ちをしている。
 だが今、目の前に立っているのは、普段より上等な着物をきっちり着こなし、羽織にそでを通した姿だった。

「意味分からん事言ってないで、さっさと支度しろ」
「はっ!? 今日、休んで良いって言ったじゃん!」
「見世はな。今日は全楼懇談会ぜんろうこんだんかいだ。ついでだから、お前も連れて行く」
「ぜん……なに? そんなの聞いて無いし! ついでってなんだよ!」
「良いから早くしろ。開始は‪14時‬半だからな」
「ちょっと待っ……なにそれ! なにするとこ!?」

 話が見えずに混乱する朱理を衣装部屋へと引きって行き、外出用の着物を手際良く着せ付け始めた。帯を締めながらおざなりに説明する。

「吉原全店の楼主や内儀ないぎ、遣手が集まる月一の定例会だ。情報共有や規約見直しやらの話をする、まぁ、会議と交流をねた集会みたいなもんだな」
「はー? そんなん、俺が行って良いとこじゃなくない?」
「問題ねぇよ。お前の客どもが雁首揃えてるだけの事だ」
「余計に厭だわ! 御内儀と鉢合わせたら気不味きまずいじゃんか!」
「来るのは楼主か遣手がほとんどだから心配するな。ま、内儀が来たところで、集会中に揉める様な阿呆は居ないだろ」
「いやいやいや、おかしいって。場違い過ぎるでしょ、俺。そう言うのはひかるさんが行くべきなんじゃねぇの?」
東雲しののめには昼見世を仕切らせるから無理」
「えぇー……。休ませたのはこの為だったんだな……ちくしょう……」
「ふん、ただで休ませる訳ないだろ。楼主どもは皆、お前が来たら泣いて喜ぶだろうよ。精々、愛想振り撒いとけ」

 ものの15分たらずで支度を済まされ、嫌々ながらも黒蔓の後を追いつつ、朱理はその真意を察した。
 朱理の顧客には、楼主などの妓楼ぎろう関係者が数多く居る。この三日で登楼を断った者のご機嫌取りフォロー兼、営業をするつもりなのだろう。
 朱理は深く嘆息しながら、腹をくくるしか無いのだった。

────────────────
 
 集会所へ向かう車内で煙草をくゆらせ、隣に座る黒蔓を見遣る。

「そんなきっちりした格好、久し振りに見たわ。珍しく明るい色着てるけど、京友禅きょうゆうぜん?」
「いや、加賀かが大島おおしまと迷ったが、今日は友禅の方が良さそうだったんでな」
「なんで?」
「お前が居るからだよ。俺だけ暗くちゃ、見栄みばえが悪いだろうが」
「えぇ……ちょっと大袈裟に考え過ぎじゃない? 道中じゃないんだからさ……。それに、大島でも明るい色はあるでしょ」
「大島は泥しか無いから、もっと暗くなる。お前も一枚くらい持っとけよ」
「持ってるよ。泥染めじゃないけど」
「そりゃ大島とは言えないな」
「意識高けぇなオイ……」

 黒蔓は加賀友禅かがゆうぜん鳩羽色はとばいろの着物、白地に黒鳥と赤花模様の半襟はんえり菫色すみれいろの羽織。
 朱理は京友禅の小町鼠こまちねずの着物、黒地に赤白金菊と赤垂れ藤の半襟、薄紅うすくれないの羽織。
 二人共、冬用の黒足袋くろたびを履いている。
 下手しもて娼妓しょうぎの仕事着は全て女物だが、私用の際は男物の着物で出掛けるのだ。

 やがて車は集会所へと到着した。まず、大広間の座敷で客の情報交換、規約の見直し、立案、吉原情勢などが話し合われ、ひと段落すると、別室にて立食会が行われる流れだ。
 二人が広間へ足を踏み入れると、既に到着していた楼主らが騒めくのが分かった。

「見ろ、御出おいでなすったよ。万華郷の黒蔓さんだ」
「相変わらずの気迫よのぉ。一瞬で空気が変わりやがる」
「あれだけのキレ者を抱えてるんだ、あの見世はますます繁盛するわいな」
「おいおい、いっしょくたにしちゃいけねぇよ。あすこはもう別次元だぜ」
「おや? 隣に連れているのは、まさか……」
「なんと、朱理太夫じゃないか! どうしてこんな所に……」
「聞いた話じゃ、あのたかむらに初馴染みから居続けられていたとか……」
「嗚呼……道理で。予約が軒並み後ろ倒しだってんで、おかしいと思ってたんだよ」
「なんてこったい、また厄介なのに目ぇつけられたもんだ。可哀想に……」

 此方こちらを見ながらひそひそと耳打ちし合うやからを横目に、黒蔓は舌打ちして煙草に火を点けた。苦笑を漏らしながら朱理は首をかしげる。

京雀きょうすずめに負けず劣らず、吉原雀よしわらすずめも賑やかなことだねぇ」
「くちさがない連中だ。毎度毎度、飽きもせずやかましいったらありゃしない」
「それにしても、相変わらずの人気ぶりだね、黒蔓さん。皆が貴方を見てる」
「ふん。今日はお陰で半分はお前に釘付けさ」
「はいはい。大人しく視線避けになっておきますよ」
「俺の側から離れるなよ。流石に此処でやらかす様な馬鹿は居ないと思うが、念の為だ」
「はーい」

 呑気な声で答えつつ、朱理もたもとから煙草を取り出し、さり気なく黒蔓へ身体を寄せるのだった。
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