庭にできた異世界で丸儲け。破格なクエスト報酬で社畜奴隷からニートになる。〜投資額に応じたスキルを手に入れると現実世界でも無双していました〜

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第二区画

89. 異世界のクリア

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 俺は屈みながら穴の中を歩いた。いい加減腕を離してくれてもいいが、逃げないようにしっかりとホールドされている。

 あれ?

 俺って思春期の学生だったのかと思うほど困った状況だ。

「ここはこんな仕組みなのね」

 マリアンナはそんな俺を気にせず、どんどんと穴の奥を進んでいく。

 ある程度歩いて行くと、いつもと同じようにアナウンスが流れてくる

【第一区画は終了しています】

 頭の中に流れてくるいつもと違うデジタル音声に俺は驚いていた。

「やはりあなたは知らないようね」

 俺は内容に驚いていたが、彼女は突然声が聞こえたことに驚いていたと、勘違いしていたようだ。

 しばらくすると辺りは明るくなり、いつもと同じ異世界の光景があった。

ここは・・・日本に似ているのね」

 マリアンナの言葉から穴はいくつもあるかのような言い方だ。

「ここはどこですか?」

「ここは私達が住む世界と別の世界よ。私達は神の試練・・・・と呼んでいるわ」

 どうやら異世界なのは間違いないらしい。話からしていくつも入り口が存在しており、世界がたくさんあることになる。

「ここには魔物も存在しないから既に誰かがクリアしたようね」

 どうやら異世界をクリアすると魔物が出なくなる仕組みのようだ。本当にダンジョンみたいな構造なんだろう。

 それにしてもいつもなら喜んで寄ってくるコボルトの姿もいなかった。クリアするとコボルト達に会えないって考えると悲しくなってきた。俺の癒しがなくなってしまう。

「あら、そんなに落ち込まなくてもいいわ。クリアしたってことは安全だから大丈夫よ」

「えっ?」

 クリアしないと何かが起きるということなのだろうか。

「あなたは気にしなくていいわ。これでミスター服部の家を買う理由もなくなったから大丈夫よ。戻りましょう」

 いつもならクエストをクリアしないと、透明な何かに邪魔されて、出ることができなかった。しかし、今は何かが起きることもなく穴を通ることができた。

 先に歩く彼女を追いかけるように後をついて行くと、突然誰かに呼ばれているような感覚がした。

「ガウガウ!」

 コボルトの声が聞こえて立ち止まった。どこかでコボルト達が呼んでいた。

「早く行くわよ」

 どうやら彼女には聞こえていないようだ。

「ガウガウ!」

 再び歩き出すとコボルトの声はまだ聞こえる。声がする方を見つめると何か違和感を覚えた。

「ミスター服部遅いわ」

 穴の入り口で彼女がイライラしながら待っていた。俺は怪しまれないように、急いでマリアンナの元へ向かった。

 穴から出ると特に変化もなく、いつも通りの感じだ。

「この穴もそのうち閉じるから気にしなくていいわ」

 どうやら庭にできた穴は彼女が言うには、クリアすると閉じるらしい。まだ"FIRE"もしていないのに穴が閉じてしまえば、異世界で荒稼ぎが出来なくなってしまう。

 本当に穴は閉じるのだろうか。コボルト達が必死に鳴いていたのと、穴の中の違和感に俺は穴が閉じる気がしなかった。

「これは今まで迷惑をかけたお金よ」

 マリアンナは突然鞄から札束を取り出し渡してきた。

「えっ?」

「中で見たことは忘れなさい。100万円であれば贈与税はかからないわよね?」

 どうやら今までの迷惑料らしい。年間110万円以上の資産を受け取ってしまうと贈与税という税金がかかってしまう。

 マリアンナは税金がかからないように、わざと100万円でわかりやすい取引をしたいようだ。

「早く受け取りなさい」

 俺がお金を受け取らないと、マリアンナは俺のズボンに手を突っ込んできた。

「あんっ!?」

 つい声が出てしまった。まさかズボンと腹の隙間から直接札束を入れてきたのだ。

 私の大事な息子がいるところに直接手を入れたのだ。

「ふふふ、ミスター服部はまだウブなのね」

 俺は何も知らないウブな扱いになったようだ。

 最近……いや、かなりご無沙汰なだけだ。

 この感じだとさっきまで屈んでいた理由にも気付いているのだろう。

「それじゃあ、またね! ミスター服部!」

 マリアンナは俺に投げキスをすると、近くに止めていた車に乗って帰っていった。

 嵐のような人とは彼女のような人のことを言うのだろう。

 それにしても全く収まる気もないご無沙汰すぎる息子のために、ズボンに入ってるこのお金を有意義に使おうと俺は決心した。
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