庭にできた異世界で丸儲け。破格なクエスト報酬で社畜奴隷からニートになる。〜投資額に応じたスキルを手に入れると現実世界でも無双していました〜

k-ing ★書籍発売中

文字の大きさ
上 下
68 / 156
第一区画

68. スキルブック

しおりを挟む
 俺達は気を取り直して、ダンジョン"豊満な殺戮"の攻略を進めた。

 あれから、食糧庫や幼虫がたくさんいる子供部屋はあったが、子供部屋に関しては入り口ですぐに桃乃が魔法で処理をしている。

 時折、悪魔の様な顔をする桃乃に俺は若干引いていたが、ひょっとしたらそっちが本当のす――。

「じゃないです!」

「えっ?」

「先輩、さっきから声漏れてますよ? 誰に解説してるんですか?」

 ああ、どうやら声が漏れていたらしい。悪魔の様な――。

「だから悪魔じゃないですよ。先輩を燃やしましょうか?」

「……」

 俺は桃乃の顔を見て、震えが止まらなかった。今も悪魔のような顔を俺に向けられると、絶対に怒らせてはいけない人だと再認識した。

「えっ、先輩嘘ですよ? 本気で受け取らないでくださいよ」

 俺はとりあえず桃乃に逆らわないようにした。ここ最近いつのまにか立場が逆になってきたのか、桃乃の性格が変わりつつある。

 それもスキルの影響かもしれない。それだけでパッシブスキルは人を変えてしまう。

「先輩、変なこと考えてないでちょっとこれを見てくださいよ」

 魔法使いのはずが、俺より前を歩いている桃乃に呼ばれるとそこには大きな扉があった。

 前までは扉などなく、いきなり大きな空間が広がっている程度だった。

「ボス部屋か?」

「先輩、それってフラグ――」

 その扉はいかにもこの先何かがいるような雰囲気を放っていた。大体こういう扉の先にはボスがいると決まっている。

「中に入りますか?」
 心配そうに聞いてくれてはいるが、桃乃の顔は輝いていた。すでに中に入りたいと言っている顔に入らないという選択肢はないだろう。

 あの怯えていた桃乃は存在しなくなっていた。

「ああ、俺が開けるから後ろからついてこいよ」

 ここは先輩……そんな悲しい顔をしなくてもいいじゃないか。

 隣で桃乃は悲しい顔をしている。次は開けるのを譲ってあげるけど、今回は安全のために俺が開けることにした。

 決して俺が開けたいからではない。俺の方が足が速いから対応しやすいためだ。

「じゃあ、行くぞ」

 俺は大きく扉を開けた。きっとここにはボスのクイーンキラーアント、つまり女王アリがいるはずだ。

「……」

 扉を開けるとそこには……何も存在しなかった。

 キラーアントさえも一匹たりとも存在していない。

「先輩何もいないですよ?」

「……」

 俺はここで活躍するつもりが何もなく終わってしまった。

 フラグを立てたつもりが……。

 俺はボス部屋の奥に進んでいくと、怪しげな宝箱が置いてあった。

「先輩、どうし……宝箱ですね!」

 後から来た桃乃が宝箱と俺を交互に見ている。

「ああ、今度は開けていいぞ」

 俺の言葉にすぐに桃乃は宝箱に手を伸ばした。

「ちょっと待った!」

 俺は宝箱を開けようとした桃乃の手を止めた。

「やっぱ、先輩が開けたいんじゃ――」

「いや、これ罠があったらどうす――」

「先輩お願いします! こういう時は年上の出番ですよ?」

 薄情じゃないかというほどすぐに後ろに引いた。むしろ俺を盾にして隠れている。こういう時だけ頼られても困るが、先輩としては引けない。

 俺はアイテムを変更し、スコップを取り出した。最近気づいたのだが、袋に入っていないスコップだが、装備一覧を確認すると武器の項目にスコップは保存されていた。そう、武器・・としてだ。

「じゃあ、開けるぞ」

 俺は離れたところでスコップを使って、宝箱を開けると簡単に開いた。

「ちょ、先輩中の確認してきてください」

 いや、だから上司の俺を盾にしないでくれよ。

 ゆっくりと近づき中を確認すると1冊の本が入っていた。

「先輩何がありましたか?」

「火属性魔法のスキルブックらしい」

 神光智慧大天使ウリエルで調べるとスキルブックという存在だった。

 スキルブックは適性がある人が読むことで、スキルを手に入れる1回限りの魔法の本らしい。

 きっと、火属性魔法だから俺には反応していないのかただの本にしか見えなかった。

 現に桃乃はスキルブックを見て目を輝かしている。

「その本光ってますよ!」

 どうやら適性がある人にとっては輝いて見えるらしい。

「じゃあ、これやるよ! 俺は使えないだろうし、売るより戦力をあげた方が効率いいだろ?」

「ありがとうございます」

 俺が桃乃にスキルブックを渡すと、桃乃は嬉しそうにしていた。

 おっ、これは先輩としての株を上げたのか?

 受け取った桃乃はすぐにスキルブックを開くと、本から光が溢れると同時に光が桃乃に吸収されている。

 もっとカッコいい演出があると思ったが、特になかったようだ。

「どうだ?」

「スキルを覚えましたよ!」

 どうやら本当にスキルを獲得できるらしい。

「何のスキルだった?」

「ボルケーノストライクという上級・・の火属性魔法です。初めての上級魔法ですよ!」

 名前からして強そうなスキルを手に入れたらしい。それでも俺は納得がいかなかった。

「魔法にランク・・・があるのか?」

「えっ? 先輩の魔法にはないんですか?」

「うん……」

 どうやら桃乃は魔法を覚えた時からランクがついていたらしい。

 ファイヤーボールなどの基本的な技は下級魔法。

 ウォーターカッターなど威力が少し上がったものは中級魔法。

 今回覚えたボルケーノストライクは上級魔法に分類されているらしい。

 ウォーターカッターで中級魔法なら上級魔法はとんでもない威力だろう。

 確かに神光智慧大天使ウリエルでもランクが分かれていると説明されている。

 それなのにランクが存在しない属性魔法に何か特別な何かがあるのだろうか。

 そんな話をしていると突然急に脳内に声が聞こえてきた。

【パパパパーン! 異世界ダンジョン"豊満な殺戮"をクリアしました!」

 どうやらダンジョンをクリアしたらしい。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう

なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。 だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。 バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。 ※他サイトでも掲載しています

寝て起きたら世界がおかしくなっていた

兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...