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第一区画
50. 失敗からの経験
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俺達はスライムに攻撃されることもなく下水道から無事に這い上がってきた。
「ゴホゴホ!」
下水道から上がってきても咳きは止まらず、何も処理されていない下水道に体が異変を起こしている。
ステータスに何も書かれていないが、そのままあの環境にいたら状態異常とかが表記されるだろう。
「大丈夫か?」
「なんとか……」
さっきまで立っていた桃乃もいつのまにかぐったりとしている。それだけ長期間の下水道での戦闘は無理だろう。
俺は自動回復の影響か桃乃よりは体調不良も落ち着くのが早かった。
そんな中、遠くからコボルト達が走ってきていた。
「ガウガウ!」
コボルトがすぐに寄って来れる距離だと、入り口のマンホールからそこまで遠くへ歩いてないはずだ。
下水道の中では真っ直ぐ歩いていたつもりだったが、中は複雑に入り組んでいたのだろう。
「とりあえずこれを飲もう」
アイテムから回復ポーションを取り出すと桃乃に渡す。何かわからないものを手渡された桃乃は戸惑っていた。
前回の時にETFの配当報酬で手に入れた回復ポーションだ。
俺は蓋を外して口の中に入れた。味は思ったよりも苦くなくて爽快感が強い。
アイテムとして回収ができないため、俺が飲んだ後に安全な物かどうか判断していた。
流石な後輩に毒を盛るわけがない。桃乃は怪しみながらも回復ポーションに口をつける。
「ミントに近いスッキリ感がありますね」
すぐに呼吸は落ち着き、体も楽になっていたのか咳を出なくなった。
「これって万能な薬ですね」
実際に飲むことで俺も同じようなことを思った。この薬があったらどんな疲れや病気も治せるような気がする。
「仕事中に飲めたらいいな」
「その辺のコーヒーやエナジードリンクより飲みやすいですね」
この考えは社畜会社員の俺達だからこそ出る感想なんだろう。
そんな話をしているとコボルト達が近づいてきた。
ただ、一定の距離を置いてそれ以上は近づこうとしない。
俺が近づこうとするたびに後ろへ下がっていく。いつもなら尻尾を振って喜んで寄って来るはずなのに……。
「おい、お前ら――」
「ガウ!」
コボルトは必死に両手で鼻を押さえている。全身を見ると、衣服に下水道にいた時についた汚れと悪臭がしていた。
「ああ、こいつら鼻が敏感だったか」
「見た目からして犬ですもんね」
犬は人間の嗅覚と比較して三千から一万倍と言われている。
犬型の魔物であるコボルトからしたら苦痛に感じるだろう。行きたいけど、近づけないという気持ちから困惑しているのか、コボルト達は俺の周りをうろうろとしながらチラチラと見ている。
それはそれで可愛いから見ていても飽きないだろう。
「そういえば、下水道の臭いってどこかで嗅いだことありませんか?」
桃乃はずっと何かを考えていたらしい。下水道にいる時もちょくちょく話していたが、俺は死体を見てからそれから出ている臭いだと思っていた。
「あれだけ魔物の死体があれば、あれから出てる臭いじゃないか?」
死体で下水道を塞いでいたぐらいだ。臭いが出るには充分だろう。さらにマンホールで蓋をしていれば臭いがこもるのは仕方ない。
「死体……臭い……マンホール……あっ!?」
桃乃は何かを思い出したようだ。頭の回転が早いだけある。
「死体ってガスを発生しますよね?」
俺は桃乃の言葉を聞いて怖くなった。もし、ガスであればその中にずっといたら、状態異常だけでは済まなかっただろう。ひょっとしたら死んでいた可能性もある。
以前動物などの生物が亡くなると、3日目ぐらいでメタンガスや硫化水素が発生し、体内に止まっていたが、10日以上過ぎれば体外へ排出されてしまう。その後、腐敗し数ヶ月後には白骨化すると聞いたことがある。
実際に死んだクジラにガスが溜まり、爆発した映像を見た時は衝撃的だった。
「もしガスなら……」
「私が魔法を使っていたら大変なことになりましたね」
俺は逃げる道を確保するのと下水道が崩れ落ちる心配をして、桃乃に魔法を使わないように指示していた。
もし、あのまま使っていたらどうなっていたかわからない。
「本当に運があって良かったな」
俺は今回の失敗を経験して、戦う環境もしっかり考える必要性があることに改めて気付かされた。
「でも、ガスが発生しているってことは私の魔法って使えますよね?」
下水道にいた魔物、特にスライムが入っていた死体はまだ白骨化もしておらず腐敗が進んでいる段階だった。
それを元に考えると体外からガスが噴出された後から腐敗する前後ということになる。
「桃乃の魔法をあの中に入れると爆発すると思う?」
「やってみてから考えても良いですね」
地下からスライムは襲ってくることはないため、地上にいれば安全なはずだ。
桃乃のアイデアはスライムを討伐するには良いアイデアだった。ただ、爆発したところには入れないためスライムの回収は難しいだろう。
俺達は話し合い、報酬が減ることよりもクエスト失敗でのペナルティを避けるため、まずはスライムを倒すことを優先することにした。
「ゴホゴホ!」
下水道から上がってきても咳きは止まらず、何も処理されていない下水道に体が異変を起こしている。
ステータスに何も書かれていないが、そのままあの環境にいたら状態異常とかが表記されるだろう。
「大丈夫か?」
「なんとか……」
さっきまで立っていた桃乃もいつのまにかぐったりとしている。それだけ長期間の下水道での戦闘は無理だろう。
俺は自動回復の影響か桃乃よりは体調不良も落ち着くのが早かった。
そんな中、遠くからコボルト達が走ってきていた。
「ガウガウ!」
コボルトがすぐに寄って来れる距離だと、入り口のマンホールからそこまで遠くへ歩いてないはずだ。
下水道の中では真っ直ぐ歩いていたつもりだったが、中は複雑に入り組んでいたのだろう。
「とりあえずこれを飲もう」
アイテムから回復ポーションを取り出すと桃乃に渡す。何かわからないものを手渡された桃乃は戸惑っていた。
前回の時にETFの配当報酬で手に入れた回復ポーションだ。
俺は蓋を外して口の中に入れた。味は思ったよりも苦くなくて爽快感が強い。
アイテムとして回収ができないため、俺が飲んだ後に安全な物かどうか判断していた。
流石な後輩に毒を盛るわけがない。桃乃は怪しみながらも回復ポーションに口をつける。
「ミントに近いスッキリ感がありますね」
すぐに呼吸は落ち着き、体も楽になっていたのか咳を出なくなった。
「これって万能な薬ですね」
実際に飲むことで俺も同じようなことを思った。この薬があったらどんな疲れや病気も治せるような気がする。
「仕事中に飲めたらいいな」
「その辺のコーヒーやエナジードリンクより飲みやすいですね」
この考えは社畜会社員の俺達だからこそ出る感想なんだろう。
そんな話をしているとコボルト達が近づいてきた。
ただ、一定の距離を置いてそれ以上は近づこうとしない。
俺が近づこうとするたびに後ろへ下がっていく。いつもなら尻尾を振って喜んで寄って来るはずなのに……。
「おい、お前ら――」
「ガウ!」
コボルトは必死に両手で鼻を押さえている。全身を見ると、衣服に下水道にいた時についた汚れと悪臭がしていた。
「ああ、こいつら鼻が敏感だったか」
「見た目からして犬ですもんね」
犬は人間の嗅覚と比較して三千から一万倍と言われている。
犬型の魔物であるコボルトからしたら苦痛に感じるだろう。行きたいけど、近づけないという気持ちから困惑しているのか、コボルト達は俺の周りをうろうろとしながらチラチラと見ている。
それはそれで可愛いから見ていても飽きないだろう。
「そういえば、下水道の臭いってどこかで嗅いだことありませんか?」
桃乃はずっと何かを考えていたらしい。下水道にいる時もちょくちょく話していたが、俺は死体を見てからそれから出ている臭いだと思っていた。
「あれだけ魔物の死体があれば、あれから出てる臭いじゃないか?」
死体で下水道を塞いでいたぐらいだ。臭いが出るには充分だろう。さらにマンホールで蓋をしていれば臭いがこもるのは仕方ない。
「死体……臭い……マンホール……あっ!?」
桃乃は何かを思い出したようだ。頭の回転が早いだけある。
「死体ってガスを発生しますよね?」
俺は桃乃の言葉を聞いて怖くなった。もし、ガスであればその中にずっといたら、状態異常だけでは済まなかっただろう。ひょっとしたら死んでいた可能性もある。
以前動物などの生物が亡くなると、3日目ぐらいでメタンガスや硫化水素が発生し、体内に止まっていたが、10日以上過ぎれば体外へ排出されてしまう。その後、腐敗し数ヶ月後には白骨化すると聞いたことがある。
実際に死んだクジラにガスが溜まり、爆発した映像を見た時は衝撃的だった。
「もしガスなら……」
「私が魔法を使っていたら大変なことになりましたね」
俺は逃げる道を確保するのと下水道が崩れ落ちる心配をして、桃乃に魔法を使わないように指示していた。
もし、あのまま使っていたらどうなっていたかわからない。
「本当に運があって良かったな」
俺は今回の失敗を経験して、戦う環境もしっかり考える必要性があることに改めて気付かされた。
「でも、ガスが発生しているってことは私の魔法って使えますよね?」
下水道にいた魔物、特にスライムが入っていた死体はまだ白骨化もしておらず腐敗が進んでいる段階だった。
それを元に考えると体外からガスが噴出された後から腐敗する前後ということになる。
「桃乃の魔法をあの中に入れると爆発すると思う?」
「やってみてから考えても良いですね」
地下からスライムは襲ってくることはないため、地上にいれば安全なはずだ。
桃乃のアイデアはスライムを討伐するには良いアイデアだった。ただ、爆発したところには入れないためスライムの回収は難しいだろう。
俺達は話し合い、報酬が減ることよりもクエスト失敗でのペナルティを避けるため、まずはスライムを倒すことを優先することにした。
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