庭にできた異世界で丸儲け。破格なクエスト報酬で社畜奴隷からニートになる。〜投資額に応じたスキルを手に入れると現実世界でも無双していました〜

k-ing ★書籍発売中

文字の大きさ
上 下
48 / 156
第一区画

48. 最弱の敵スライム

しおりを挟む
 マンホールから地下に降りた俺と桃乃は奥に向かって歩いていた。明らかに体に違和感を覚えるほどの臭いに足は次第に止まっていく。

「めちゃくちゃ臭いな」

 外からの臭いでわかっていたことだが、中はかなりの悪臭だ。溜まっている水は魔物や人型の何かが一緒に流れている。

 どれも腐敗が進んでおり、全て死体・・と鑑定表示がされていた。想像していた下水とは全く違う様子だった。

 俺達は服を切り裂き、頭の後ろに縛ることで、簡易的なマスクを作った。これで少しは臭いを感じにくいはずだ。ただ、目や鼻の奥を突く痛みは残っている。

「スライムを探すか」

「はい」

 俺は桃乃とともに周囲を警戒しながらスライムを探し始めた。

 イメージでは有名なゲームのようなプニプニした存在か、アメーバのような得体の知れない形を想定している。

 きっと見た瞬間にスライムだとわかる容姿をしているだろう。できれば、プニプニして可愛い姿であればいいが、コボルトが行きたくないと全身で拒否するぐらいだから、きっと後者の形をしていてもおかしくない。

 下水道の中はわずかに通る道はあるが、基本的に水が流れる水路になっている。水が多ければほぼ歩くところがない構造だ。

 俺達はそんな下水道の縁を壁伝いに中を通っていく。奥に進むたびに、どんどんと悪臭が強くなってくる。

 あまりの悪臭に涙が勝手に溢れ出て視界が見にくくなるほどだ。

 ちなみに歩いて数分は経っているが、スライムには遭遇していない。

「本当に死体が多いな……」

 奥は行き止まりになっているのか、徐々に水のかさが増していた。

「多分、あそこで魔物が詰まっていると思いますよ」

 桃乃が指を差したところに目を向けると、魔物の死体が重なり水路を塞いでいた。

 流石にこのままでは奥深くには行けないと思い、恐る恐る近くにいた死体に手を触れる。

「やっぱり無理か」

「先輩どうしたんですか?」

「いやー、死体が邪魔だし回収できないかと思ってな」

「やっぱり自分達が倒したやつのみが対象ってことなんですね」

 誰が倒したかはっきりしていない死体を見つけたことがなかったため、回収できるか試しに触れてみた。やはり自ら討伐した魔物以外は回収できない仕組みになっている。

 俺達がそんな話をしていると、急に視界に変化が訪れた。今でもずっと探し求めていた下水路を歩いていた。

 魔物の死体になんとスライムと表示されていたのだ。

「桃乃下がれ!」

 俺は咄嗟に後ろに大きくバックステップする。だが、俺の動きに桃乃はついていけてないようだ。

 ステータスの差がこういう時に出るのだろう。

 俺は桃乃の手を取り、そのまま抱きかかえるように後ろに下がる。

「あわわわ」

 桃乃は驚いて口をカクカクとさせていた。個性的な驚き方に笑いそうになるが、今はそれどころではない。

 次第に落ち着いた桃乃は声をかけてきた。

「先輩どうしたんですか?」

「あれが何かわかるか?」

「魔物の死体ですよね?」

 どうやら桃乃にはスライムの存在が認識出来ていないようだ。

 俺が自動鑑定を持っていなければ、今頃スライムに不意を突かれていたかもしれない。

「いや、あそこにスライムがいる」

 俺は魔物の死体に指を差すが、それでも桃乃には見えていないのだろう。辺りをキョロキョロと見渡している。

「私が魔法で──」

「いや、ここでは使わないほうがいい」

 俺は桃乃が魔法を使うのを止めた。呪文を詠唱しそうだったがどうやら間に合った。

「えっ? なんでですか?」

 桃乃にはまだ環境の判断能力が低いようだ。

「とりあえず、地上に出れる場所を探してくれ」

 俺は目の前の死体をさらに警戒する。魔物の死体に"スライム"と表示されているが、どれがスライムなのか数もわからない。

「先輩出口がありました」

「よし、そこから出れるか確認してくれ」

 俺はその間も魔物の死体であるスライムへの警戒を緩めなかった。まだ向こうも俺達の存在に気づいていないようだ。

「マンホールが重すぎて……少しは浮きますが移動は難しいです」

 どうやら少しは動くようだ。それであれば特に問題はない。俺が思いっきり開けてしまえばいい。

「一回ここから離脱する」

「えっ?」

 俺は桃乃のところまで向かい、マンホールをおもいっきり押し上げるように突き上げた。

 これで逃げる場所の確保が完成だ。

「いつでも逃げられる準備だけしておいて」

 俺は桃乃に一言伝えると、再び魔物の死体に近づいた。

「おりゃー!」

 スライムと思われる魔物の死体にスコップを大きく叩きつけた。何かわからない魔物の死体だが、こちらから攻撃すれば反応を示すと思ったのだ。

 俺の予想は当たっていた。

 スコップが当たった衝撃で、死体の口や体の傷口からドロっとした何かが飛び出してきた。その謎の物体に自動鑑定が反応している。

「予想の斜め上を行きすぎるだろ」

 そこにはスライムと表示されている謎の物体がいた。直接姿を表したからなのか、さっきよりは認識しやすくなった。

「それにしても気持ち悪いにも限度があるだろ」

 スライムは死体に寄生・・する魔物だった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

寝て起きたら世界がおかしくなっていた

兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。

ダンジョンが出来た世界でお金儲けをする⁉︎

ガチ中のガチ
ファンタジー
ある日、現実世界にダンジョンが出来た。ダンジョンは世界各国に無造作にできた。もちろん日本にもできた。ダンジョンに入り、モンスターを倒すと16歳以上の人間には、特別な力『スキル』が、貰える。その『スキル』にも、戦うためのもの、又は、ものをつくるためのものがある。そんな中、主人公は『生産の神』というスキルを使って様々な方法で大儲けする。 カクヨム および 小説家になろう にも同時連載しております

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...