庭にできた異世界で丸儲け。破格なクエスト報酬で社畜奴隷からニートになる。〜投資額に応じたスキルを手に入れると現実世界でも無双していました〜

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15. ホブゴブリン

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 俺は工場の中に入ると何があるのか周囲を見渡した。そこには昔使っていたであろう、機械や鉄板材などがそのまま置いてある。

 そして、天井には大きなクレーンが取り付けてあった。昔使っていたのか全て錆びついていた。

「どうにかあれを使えればな」

 急いで忍び寄りまだ使えるのかと確認する。

 しかし、機械類は電気も通っていないため動くことはなかった。

 可能性を考えるとある程度の重さがある物を落とすぐらいしかなかった。

 そもそもあの重い鉄材をどうやって運ぶかだ。

 建物の縁に階段があり、2階に上がれる構造となっていた。俺は音をたてないようにゆっくりと階段を登り、上からゴブリン達の様子を観察する。

 しっかり数えるとホブゴブリンが3体に、ゴブリンは18体と計21体もゴブリン達が群れを作っていた。

 まずは2階の階段付近にいくつかの鉄パイプを動かした。多少音が鳴ってもゴブリン達は気づいていない。

 それだけ自分達の強さを過信しているのだろうか。

 そして奥から入り口に向かって鉄材を均等に並べて配置する。まずはホブゴブリンから狙いたいところだが、中心にいるため距離が遠いのと強さがわからず仕留められない可能性があった。

 俺は身を隠しながら一番近くにいるゴブリンに目掛けて小さな鉄材を投げつけた。

「ゴフッ!?」

 見事にゴブリンに命中して、そのまま崩れ落ちる。そこから少しずつ移動しながらゴブリン達に向けて鉄材をどんどん放り投げていく。

 集団の真ん中は無理でも、外れなら他のゴブリン達も気づかずに狙えたのだ。

 だが、次第に身の危険を感じたゴブリン達は中心に集まりホブゴブリン達を守っていた。さっきも思ったがゴブリン達は自分を盾にしたり、ある程度の知識はあるようだった。

「\:ojけそ:€<:3」

 何か声が聞こえると目の前を手のひらサイズの火の玉が通り過ぎる。大きな音を立てて壁に当たると小さく爆発した。

「やっぱり魔法があるんかよ!」

 初めて見た魔法に俺は驚きそのまま隠れた。ゴブリンが出てきた時点で別の世界だと思っていたが、本当に魔法が存在しているとは思わなかった。

 見つかったかもしれないと思いゆっくり移動するが、やはり2階を目掛けて火の玉が飛んできていた。

 正確な位置までは把握していないのか、ただ単に命中率が悪いのか、時折全然違う場所に魔法が当たっていた。

「ゴフゴブー!」

 突然ゴブリンの声がすると思ったら、数体が2階に上がってきた。

 近くに来る前に仕留めるつもりが魔法に気を取られてしまった。知能があるならそれが向こうの戦法だったのかもしれない。

 すぐに階段近くに移動し、鉄パイプを手に取るとそのままゴブリンに突撃した。ゴブリン達はパイプに串刺しとなり、そのまま2階から落ちて行く。

「グォー!」

 勢いよく動いたため、ついに俺の存在がバレてしまった。ホブゴブリンの雄叫びについ俺は怯んでしまう。

「あああ……どうしよう……」

 何故かわからない恐怖感に襲われていると、視界に映るステータス画面が点滅していた。

 そこには"恐怖・・"と追加で表示されていた。

「%・=3]63・ns」

 そんな中、容赦なくまた魔法が飛んできた。今度は氷の塊が飛んできて、壁に刺さっている。

 火属性魔法では爆発して被害が広がるのを最小限にしたのだろうか。氷は思ったよりも鋭利で、必死に隠れながら逃げ回るしかない。
 
「グファファ!」

 そんな姿を見てホブゴブリン達は嘲笑っている。繁殖行為の相手ではない俺に対しては遊びの対象にしか見えていないのだろう。

 俺は必死に逃げ回ると次第に頭も冷静になってきた。ステータスの恐怖の表示はなくなり、さっきよりも頭はスッキリして魔法の軌道が見やすくなった。

 次第に魔法の練習をしているのか、火属性魔法と氷属性魔法を交互に唱えている。

 そこである考えが浮かんだ。

――10分後

 俺は怯えている人のように演技しながら逃げ回った。

「はぁ……はぁ……」

 俺も体力の限界に来ていた。もう少し体力をつけてから来るべきだったと後悔している。流石に運動不足の体にはきつい。

 俺は疲れて止まりそうな足を必死に動かす。準備はもうそろそろ終わるのだ。

「%・=3]63・ns」

 ホブゴブリンから氷属性魔法が飛んできたと同時に、俺はその魔法を目的の場所に当てた。

――ゴゴゴゴオオオオ!

 魔法が当たった瞬間、大きな音とともに天井が崩れた。

 俺が狙ってたのは脆くなった鉄を火属性魔法と氷属性魔法を交互に当て、膨張と収縮を繰り返し亀裂を生じさせることだった。

 何かの漫画で同じように戦っているシーンがあったことを思い出したのだ。

 天井にあったクレーンはホブゴブリンを目掛けて落ちていく。真上にクレーンを落とすために、俺はわざと演技をしながら逃げ回っていた。

 大きな音とともに天井に固定されていたクレーンは中心にいたホブゴブリンの真上に落ちた。

「やった……倒したぞ!」

 俺はあまりの嬉しさに喜んだ。まだ、ゴブリン達を倒し切ったと判断していないのに……。

 俺は1階に行こうと階段を降りていく。すると何かが顔の前を通り過ぎていく。

「痛っ!?」

 頬を触ると一筋に血が流れていた。そして、目の前の壁には剣が刺さっている。誰かが投げた剣が頬を掠めたのだ。

 そもそも剣は投げる物ではないだろう。それでも剣を投げる力が奴らにはあるのだろう。

「グォー!」

 何かの雄叫びが聞こえ、俺は視線を移すとそこには必死に立ち上がろうとしているホブゴブリンがいた。

 他のゴブリン達はその場で倒れており、残っているのはあの一体だけだ。

 俺は急いで階段を降りホブゴブリンに近づいた。倒せるチャンスは武器も持っていない、今しかないのだ。

「%:|2gesf%:」

 何かを話していたが、何を言っているのか理解ができない。俺は持っていたスコップを大きく振り被った。

 しかし、ホブゴブリンの動きは素早く、攻撃を避けすぐに反撃の準備をしている。

「グオォォォォ!」

 俺は振りかぶった勢いで姿勢を崩した。

 それを待ってたかのように、ホブゴブリンの拳がお腹の前まで来ていた。

「やられてたまるかー!」

 必死に体を捻るとホブゴブリンの拳が空気を切っていた。どうやらホブゴブリンの攻撃が当たらずに済んだのだ。

 ホブゴブリンも驚きながらもニヤニヤと笑っている。

 やっと強いやつが出てきたから喜んでいるのだろうか。そう思うとこいつは脳筋なんだろう。

「2<sさて%・°2:<7」

「だから何言ってるかわからないんだよー!」

 俺は再びホブゴブリンに向かって走る。構えたスコップを大きく振り被った。

「グォー!」

 それに反応するようにホブゴブリンも拳を俺に向けて放った。お互いに最後の攻撃になると直感で感じていた。

 しかし、俺の攻撃は届かなかった。

「ふぇっ!?」

 俺は足元にあった瓦礫に引っかかったのだ。

 振り被ったスコップは前に突き出しそのまま倒れていた。

「グォ……」

「くそ、いってー!」

 体を上げる間もなくホブゴブリンが倒れて来た。

 俺はあまりの衝撃に声が漏れた。成人男性並みの大きさの人が上から覆い被さって来ているのだ。

 俺は急いで被さっているホブゴブリンを退かすと自身の手は血だらけになっている。どこから出ている血か確認するが、どうやら俺ではないようだ。

 ホブゴブリンの向きを変えると、腹部にはスコップが刺さっていた。

 瓦礫に躓いた瞬間にスコップが前方に飛び出て、ホブゴブリンの腹部に突き刺さったのだろう。

「勝ったぞ……うぉー!!」

 まさかホブゴブリンに勝つとは思ってもいなかった。一度入ったら出れない異世界に、死ぬ覚悟も決めていた。

 工場内には俺の喜びの声が響いていた。
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