7 / 156
第一区画
7.物語の始まり
しおりを挟む
俺はさっきまでの出来事を鮮明に覚えてる夢だと思っていた。気づいたら庭に立っていたし、外の光景も何一つ変わっていなかった。
しかし、実際は体の痛みと鏡に映った姿が現実だと物語っている。
「とりあえず風呂にでも……ってか今何時だ!」
向こうに行っていた時間はおよそ3時間程度だ。しかし、体感としてはもっと長い時間あの場にいた気がした。
急いで家の中に入りテレビをつける。俺の睡眠時間が削られるから時間の確認は大事だ。
「あれ? 時間が経ってない?」
時間は隣のおばさんからおかずをもらって、庭に出た数分しか経っていなかった。日にちが変わったのか確認するが、スマホをいくら見ても日にちは同じで時間もテレビと変わらない。
「やっぱ夢なのか……?」
さらに俺の頭を混乱させる。夢なのか現実なのか全くわからない。
とりあえず体についた血を落とすために浴室に行き、シャワーを浴びることにした。
仕事の休みぐらい頭を使わずにゆっくり休むつもりだったのが、こんな目に遭うとは思いもしなかった。
今頃爆睡していた予定が全く変わってしまった。
浴室に着いた俺は、お湯を出すために蛇口を捻る。
「痛っ!?」
シャワーで血を流すと、ゴブリンとの接戦でできた傷が痛む。俺だけが違う時間軸の世界に行っていたかもしれないと思うしかなかった。
シャワーを浴び終え俺は再び玄関に戻った。扉を開けて庭に向かうと穴はまだ存在していた。俺はあの中から出てきたのだろう。
混乱していた頭も少しずつ理解するしかなかった。
俺は玄関から戻ると何かに躓きそのまま倒れた。
「いてぇーな!」
体を起こし足先に目をやると、そこには昔から置いてある犬の置物があった。我が家の番犬として活用している。
「あれ? こんなとこに袋なんかあったけ?」
その隣には麻の袋が置いてあった。そういえば戻ってきた時に右手に掴まれていた麻の袋。
庭の異世界に行っていた時の袋マークにはあまり良い印象を受けなかった。俺は麻の袋をリビングに持っていき恐る恐る中身を確認する。
ゴブリンの体の一部が入っていたら、処分の方法に困ってしまう。だが、中に入っていたのは俺達がよく目にしているものだった。
「お金?」
麻の袋からお金を取り出すと、そこには沢山の一万円札が入っていた。一枚ずつ取り出して数えるとそこには42万円も入っていた。
あまりにも急に大金が目の前にあると驚き、声が出せなくなってしまう。しかも、俺が必死に働いて稼げる一月分の給料の約1.5倍ほどを数分で稼ぐことができたのだ。
死ぬ気で仕事をしても、ほとんどがサービス残業でタダ働きのことを考えれば、今の給料じゃ全然見合わない。それが数時間命をかけたら簡単に手に入ってしまう。
それでもあの場所が現実で、何度も行けるならとんでもないホワイト企業で働いていることになる。
「これって効率の良い副業じゃないのか?」
俺はブログやアフィリエイト、せどりと言われる転売ヤーにも挑戦したが、どれも時間が足りなくて結局続けることができなかった。
他のブロガーは1週間に3本近く書いているのに、俺は月に1、2本書くのが精一杯だった。それでは稼げないと始めたせどりも梱包や商品の仕入れに時間がかかってしまう。何か始めるのにも時間が必要だと知ってしまった。
だからこそ、この給料で拘束時間を考えると同期が転職するのも無理はない。だが、今の俺には転職する体力も時間もなかった。とりあえず休みの日に心身を休ませないと倒れてしまう。
全ての原因はあの糞部長のせいだ。
「しかもどこから発生してるかわからない金だから確定申告はいるのか?」
源泉徴収などもなく存在するはずのないお金だったが、とりあえずスマホの中にいくら稼いだのかメモすることにした。
拾ったお金にしても税金は取られるし、警察に届けても100%は戻ってこない。一時所得扱いになって、そこから所得税と住民税が取られてしまう。
それならちゃんと自分で稼いだことにした方がいいのかもしれない。
俺はそのままスマホを閉じれば良かったが、いつもの癖で投資信託を買っているアプリを開いていた。
「入金力を上げないとずっと家畜奴隷だな」
俺はふと机の上に置いてある大金を目にする。お金を手に取ると、スマホ画面と交互に見比べた。
簡単に入金金額を増やすことができるものを発見したのだ。
これを続ければいつかは働かずにニートになれるかもしれない。
これで家畜のように働かなくて済むのだ。命懸けで働くのも寝る時間もなく死ぬ気で働くのもそんなに変わりはない。
「とりあえず、銀行に預けに行こう」
俺は庭の異世界で稼いだお金を投資するために投資資金として銀行に入れることにした。これで夢のニート生活に一歩近づけるのだ。
まずは銀行にお金を預け入れるために家を出た。いつもは寝ているばかりの休みの日なのに、今日はウキウキとスキップをするぐらいテンションが上がっていた。
ここから庭の異世界で稼いでニートを目指す男の物語が始まった。
しかし、実際は体の痛みと鏡に映った姿が現実だと物語っている。
「とりあえず風呂にでも……ってか今何時だ!」
向こうに行っていた時間はおよそ3時間程度だ。しかし、体感としてはもっと長い時間あの場にいた気がした。
急いで家の中に入りテレビをつける。俺の睡眠時間が削られるから時間の確認は大事だ。
「あれ? 時間が経ってない?」
時間は隣のおばさんからおかずをもらって、庭に出た数分しか経っていなかった。日にちが変わったのか確認するが、スマホをいくら見ても日にちは同じで時間もテレビと変わらない。
「やっぱ夢なのか……?」
さらに俺の頭を混乱させる。夢なのか現実なのか全くわからない。
とりあえず体についた血を落とすために浴室に行き、シャワーを浴びることにした。
仕事の休みぐらい頭を使わずにゆっくり休むつもりだったのが、こんな目に遭うとは思いもしなかった。
今頃爆睡していた予定が全く変わってしまった。
浴室に着いた俺は、お湯を出すために蛇口を捻る。
「痛っ!?」
シャワーで血を流すと、ゴブリンとの接戦でできた傷が痛む。俺だけが違う時間軸の世界に行っていたかもしれないと思うしかなかった。
シャワーを浴び終え俺は再び玄関に戻った。扉を開けて庭に向かうと穴はまだ存在していた。俺はあの中から出てきたのだろう。
混乱していた頭も少しずつ理解するしかなかった。
俺は玄関から戻ると何かに躓きそのまま倒れた。
「いてぇーな!」
体を起こし足先に目をやると、そこには昔から置いてある犬の置物があった。我が家の番犬として活用している。
「あれ? こんなとこに袋なんかあったけ?」
その隣には麻の袋が置いてあった。そういえば戻ってきた時に右手に掴まれていた麻の袋。
庭の異世界に行っていた時の袋マークにはあまり良い印象を受けなかった。俺は麻の袋をリビングに持っていき恐る恐る中身を確認する。
ゴブリンの体の一部が入っていたら、処分の方法に困ってしまう。だが、中に入っていたのは俺達がよく目にしているものだった。
「お金?」
麻の袋からお金を取り出すと、そこには沢山の一万円札が入っていた。一枚ずつ取り出して数えるとそこには42万円も入っていた。
あまりにも急に大金が目の前にあると驚き、声が出せなくなってしまう。しかも、俺が必死に働いて稼げる一月分の給料の約1.5倍ほどを数分で稼ぐことができたのだ。
死ぬ気で仕事をしても、ほとんどがサービス残業でタダ働きのことを考えれば、今の給料じゃ全然見合わない。それが数時間命をかけたら簡単に手に入ってしまう。
それでもあの場所が現実で、何度も行けるならとんでもないホワイト企業で働いていることになる。
「これって効率の良い副業じゃないのか?」
俺はブログやアフィリエイト、せどりと言われる転売ヤーにも挑戦したが、どれも時間が足りなくて結局続けることができなかった。
他のブロガーは1週間に3本近く書いているのに、俺は月に1、2本書くのが精一杯だった。それでは稼げないと始めたせどりも梱包や商品の仕入れに時間がかかってしまう。何か始めるのにも時間が必要だと知ってしまった。
だからこそ、この給料で拘束時間を考えると同期が転職するのも無理はない。だが、今の俺には転職する体力も時間もなかった。とりあえず休みの日に心身を休ませないと倒れてしまう。
全ての原因はあの糞部長のせいだ。
「しかもどこから発生してるかわからない金だから確定申告はいるのか?」
源泉徴収などもなく存在するはずのないお金だったが、とりあえずスマホの中にいくら稼いだのかメモすることにした。
拾ったお金にしても税金は取られるし、警察に届けても100%は戻ってこない。一時所得扱いになって、そこから所得税と住民税が取られてしまう。
それならちゃんと自分で稼いだことにした方がいいのかもしれない。
俺はそのままスマホを閉じれば良かったが、いつもの癖で投資信託を買っているアプリを開いていた。
「入金力を上げないとずっと家畜奴隷だな」
俺はふと机の上に置いてある大金を目にする。お金を手に取ると、スマホ画面と交互に見比べた。
簡単に入金金額を増やすことができるものを発見したのだ。
これを続ければいつかは働かずにニートになれるかもしれない。
これで家畜のように働かなくて済むのだ。命懸けで働くのも寝る時間もなく死ぬ気で働くのもそんなに変わりはない。
「とりあえず、銀行に預けに行こう」
俺は庭の異世界で稼いだお金を投資するために投資資金として銀行に入れることにした。これで夢のニート生活に一歩近づけるのだ。
まずは銀行にお金を預け入れるために家を出た。いつもは寝ているばかりの休みの日なのに、今日はウキウキとスキップをするぐらいテンションが上がっていた。
ここから庭の異世界で稼いでニートを目指す男の物語が始まった。
42
お気に入りに追加
1,186
あなたにおすすめの小説
動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!
海夏世もみじ
ファンタジー
旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました
動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。
そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。
しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!
戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう
なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。
だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。
バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。
※他サイトでも掲載しています

現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

神様の願いを叶えて世界最強!! ~職業無職を極めて天下無双する~
波 七海
ファンタジー
※毎週土曜日更新です。よろしくお願い致します。
アウステリア王国の平民の子、レヴィンは、12才の誕生日を迎えたその日に前世の記憶を思い出した。
自分が本当は、藤堂貴正と言う名前で24歳だったという事に……。
天界で上司に結果を出す事を求められている、自称神様に出会った貴正は、異世界に革新を起こし、より進化・深化させてほしいとお願いされる事となる。
その対価はなんと、貴正の願いを叶えてくれる事!?
初めての異世界で、足掻きながらも自分の信じる道を進もうとする貴正。
最強の職業、無職(ニート)となり、混乱する世界を駆け抜ける!!
果たして、彼を待っているものは天国か、地獄か、はたまた……!?
目指すは、神様の願いを叶えて世界最強! 立身出世!

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる