274 / 281
第一章 外れスキル
274.俺達の決断
しおりを挟む
「どういうことだ? 力が戻ったの?」
「今回だけはお前達の力になってやるからな! こいつにも言っておけよ」
「へっ?」
ラルフは驚いた表情で聞いてくるが、俺もなんて答えればいいのかはわからない。
「力は……どうやら使えるみたい」
試しに異次元医療鞄を発動すると使うことができた。
ただ、魔力の消費量が激しいのは首輪から伝わる継続的に魔力が吸収されているからだろう。
俺は自分の首を触りスキルを発動させた。
――カラン
取れた首輪は異次元医療鞄に入る前に俺の手から落ちた。
「おい、ケントに戻ったのか?」
そんな様子を見ていたラルフは戸惑っていた。
「それはひどいな。どっちも俺だよ」
「あっ、そうだったね。でもさっき力を貸すのは今回だけと言っていたぞ」
「ははは、俺は嫌われちゃったからな」
首輪が消えた女は小さく息をしていた。それでもあと少しで命が尽きるのは目に見えてわかっていた。
「今回はお前の力だけじゃ助からないからな俺の力と貸してやるよ」
俺は両手を女に近づけるとスキルを発動させた。
「魔力が二つある?」
俺の手からは片手ずつ違う魔力が流れていた。
一つはケトのスキル【理学療法】による治癒効果。
そして、もう一つは相澤健斗のスキル【魔力療法】による治癒効果だ。
「おおおお!」
しばらくすると女の呼吸は深くなった。
ラルフの目から見ても状態が良くなったのか、俺と女を交互に見ていた。
「やっぱり規格外は私じゃない気がするよ」
「こんな姿を見せられたらオラも頑張らないといけないって思うよ」
「いや、スキルを使えるのは今のうちだからね」
俺の中でもスキル【理学療法】が使えるのは今回だけのような気がした。
「お前ら今すぐ逃げろ!」
突然の声に俺達が視線を向けると、公爵が勢いよく近づいてきていた。
「私の邪魔をするのはお前らだったのか! 何度も何度も俺の魔力供給の邪魔をしやがって!」
きっと強制進化の首輪を使って魔力を吸収していたのだろう。
「今すぐ全力でケント達を守れ!」
公爵を追いかけるようにマルヴェインとセヴィオンは飛び込み、ハワードとカタリーナは呪文を唱えた。
それでも俺達は間に合わないと感じた。
亡き冒険者クロスのため、そして外れスキルの子ども達のために戦ってきた俺。
亡き家族のため、そしてスラム街の人達のために戦ってからラルフ。
この国の民のため、そして自分自身のために戦ってきたガレイン。
俺達はいつも一緒だった。
あの時の決断はこの時のためにしたのだ。
「いくぞ!」
「おう!」
俺達は武器を構えると公爵に向かって飛び込んだ。
「今回だけはお前達の力になってやるからな! こいつにも言っておけよ」
「へっ?」
ラルフは驚いた表情で聞いてくるが、俺もなんて答えればいいのかはわからない。
「力は……どうやら使えるみたい」
試しに異次元医療鞄を発動すると使うことができた。
ただ、魔力の消費量が激しいのは首輪から伝わる継続的に魔力が吸収されているからだろう。
俺は自分の首を触りスキルを発動させた。
――カラン
取れた首輪は異次元医療鞄に入る前に俺の手から落ちた。
「おい、ケントに戻ったのか?」
そんな様子を見ていたラルフは戸惑っていた。
「それはひどいな。どっちも俺だよ」
「あっ、そうだったね。でもさっき力を貸すのは今回だけと言っていたぞ」
「ははは、俺は嫌われちゃったからな」
首輪が消えた女は小さく息をしていた。それでもあと少しで命が尽きるのは目に見えてわかっていた。
「今回はお前の力だけじゃ助からないからな俺の力と貸してやるよ」
俺は両手を女に近づけるとスキルを発動させた。
「魔力が二つある?」
俺の手からは片手ずつ違う魔力が流れていた。
一つはケトのスキル【理学療法】による治癒効果。
そして、もう一つは相澤健斗のスキル【魔力療法】による治癒効果だ。
「おおおお!」
しばらくすると女の呼吸は深くなった。
ラルフの目から見ても状態が良くなったのか、俺と女を交互に見ていた。
「やっぱり規格外は私じゃない気がするよ」
「こんな姿を見せられたらオラも頑張らないといけないって思うよ」
「いや、スキルを使えるのは今のうちだからね」
俺の中でもスキル【理学療法】が使えるのは今回だけのような気がした。
「お前ら今すぐ逃げろ!」
突然の声に俺達が視線を向けると、公爵が勢いよく近づいてきていた。
「私の邪魔をするのはお前らだったのか! 何度も何度も俺の魔力供給の邪魔をしやがって!」
きっと強制進化の首輪を使って魔力を吸収していたのだろう。
「今すぐ全力でケント達を守れ!」
公爵を追いかけるようにマルヴェインとセヴィオンは飛び込み、ハワードとカタリーナは呪文を唱えた。
それでも俺達は間に合わないと感じた。
亡き冒険者クロスのため、そして外れスキルの子ども達のために戦ってきた俺。
亡き家族のため、そしてスラム街の人達のために戦ってからラルフ。
この国の民のため、そして自分自身のために戦ってきたガレイン。
俺達はいつも一緒だった。
あの時の決断はこの時のためにしたのだ。
「いくぞ!」
「おう!」
俺達は武器を構えると公爵に向かって飛び込んだ。
11
お気に入りに追加
1,374
あなたにおすすめの小説
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

実家から追放されたが、狐耳の嫁がいるのでどうでも良い
竹桜
ファンタジー
主人公は職業料理人が原因でアナリア侯爵家を追い出されてしまった。
追い出された後、3番目に大きい都市で働いていると主人公のことを番だという銀狐族の少女に出会った。
その少女と同棲した主人公はある日、頭を強く打ち、自身の前世を思い出した。
料理人の職を失い、軍隊に入ったら、軍団長まで登り詰めた記憶を。
それから主人公は軍団長という職業を得て、緑色の霧で体が構成された兵士達を呼び出すことが出来るようになった。
これは銀狐族の少女を守るために戦う男の物語だ。


これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
偏屈な辺境伯爵のメイドに転生しましたが、前世が秋葉原ナンバーワンメイドなので問題ありません
八星 こはく
恋愛
【愛されスキルで溺愛されてみせる!伯爵×ぽんこつメイドの身分差ラブ!】
「私の可愛さで、絶対ご主人様に溺愛させてみせるんだから!」
メイドカフェ激戦区・秋葉原で人気ナンバー1を誇っていた天才メイド・長谷川 咲
しかし、ある日目が覚めると、異世界で別人になっていた!
しかも、貧乏な平民の少女・アリスに生まれ変わった咲は、『使用人も怯えて逃げ出す』と噂の伯爵・ランスロットへの奉公が決まっていたのだ。
使用人としてのスキルなんて咲にはない。
でも、メイドカフェで鍛え上げた『愛され力』ならある。
そう決意し、ランスロットへ仕え始めるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる