260 / 281
第一章 外れスキル
260.何のために? ※ガレイン視点
しおりを挟む
私はラルフからもらった紙に驚いて戸惑ってしまった。
「獣人のくせに私達になんという言葉遣いだ!」
「これだから獣人は……」
「ガレイン様もあの者に舐められてますよ」
いや、今回の件に関しては私達王族と貴族が解決しないといけない問題でもあった。
むしろ巻きこんだのは私達なのかもしれない。
「ガレイン何が書いてあったんだ?」
私の様子が気になってマルヴェイン兄さんは紙を覗き込んだ。
「なんだこれは?」
「ラルフはスキルで覗いたステータス情報をそのまま紙に書き移せるんです」
マルヴェインは私から紙を受け取ると、視線を徐々に下へ移動させた。
「ってことはこの紙に書かれている情報は……」
「事実だと思います」
「そうか」
そのまま紙はマルヴェインの手からセヴィオンに渡り、最終的には父上の元にまで渡った。
「これは本当なのか?」
父上も兄さん達と同じ反応だった。それだけここに書いてあることが信じられずに衝撃的だ。
「ラルフのスキルは基本事実です。実際にラルフの家族は彼らに殺されてます」
「本人の話もあるなら間違いはないだろうな」
マルヴェインも私と同じでラルフのスキルを信じていた。
「それが事実だったとしてもあの貴族の鏡と言われた好青年がこんなことをするのだろうか」
「国王様、私達にもそれを見せていただくことはできないでしょうか」
父上は何か考えた後に首を横に振った。
「これは君達は知らない方がいいだろう。ただ言えることは私達王族とお前達貴族が関わっているということだ」
「そうですか……」
「ただこの話には参加してもらおう、君達高位貴族の力が必要になるかもしれない」
確かに彼と接近するには他の公爵家の力を使った方が早いかも知れない。
すでに王族である私もあの場にいたとなれば王族には情報が入ることになる。
「私の右腕としてこれはどう考える?」
父上は右腕である宰相に渡すと彼は頷いていた。
「ラルフさんのスキルは確かに合っているでしょう。獣人で平民の彼が貴族である令嬢の失踪事件を知るはずもないですし、そもそもこの事件が起きた時はきっと彼は幼少期だったと思います」
「君も言うなら間違いないか……」
「それよりも問題なのは彼の種族だと思います」
「セヴィオンどういうことだ?」
「ここにいる人達は魔人という存在を知っていますか?」
セヴィオンの言葉に私も含めて一部の人しか頷くことができなかった。
「私が留学しているときに見た文献では、魔人は一国を破壊するほどの強力な魔力を持っていると言われています」
「ってことは――」
「はい、いずれ彼は動くと思います。それにもう正体がばれてしまっては、ケントくんを使うよりは別の方法で来ると思います」
「どういうことだ?」
「私の考えで話しますが、今までは動物や魔物に強制進化の首輪が装着されてきたのはその者自体を強化するために使われてきました。一番話を聞いているのはガレインだけど間違いはないよね?」
「合っています。実際にケントから聞いた話では、強制進化の首輪は魔素を吸収して装着した者の魔力の器を強制的に広げて上の種族に変える……進化させると言われています」
「ではケントに付けたのはなんでだと思う?」
「それは……上の種族に……」
動物であれば魔物に進化し、魔物であればさらに上位種に進化する。だが、人間が進化するのは何になるのだろうか。
「魔人ですか?」
話を聞いていた貴族は手を上げて答えた。
「それも一部考えたが、魔人はそもそも何から進化した存在なのかわかっていません。そして一番引っかかるのは――」
「ラルフの"魔力を欲していたから気をつけて"って言葉ですか?」
「その通り。私の予想ではケントの魔力を自身に吸収させるためではないかと思います」
セヴィオンの言っていることは私達でも納得することができた。ただ、今まで魔物達に装着させていたのはなんでだろうか。
魔力を吸収するならそもそも魔力の器が異なる魔物より人間に着ければよかったのだ。
「私達はケントに申し訳ないことをしたようだな」
「父上……」
「冒険者ギルドにいるカタリーナとハワードには、ケントに関しての扱いは冒険者ギルドに任せると伝えてくれ」
「わかりました」
宰相は紙に何かを書くと魔法で冒険者ギルドに向けて飛ばした。
謎は深まるばかりだがとりあえず私達はケントの無事を祈った。
「獣人のくせに私達になんという言葉遣いだ!」
「これだから獣人は……」
「ガレイン様もあの者に舐められてますよ」
いや、今回の件に関しては私達王族と貴族が解決しないといけない問題でもあった。
むしろ巻きこんだのは私達なのかもしれない。
「ガレイン何が書いてあったんだ?」
私の様子が気になってマルヴェイン兄さんは紙を覗き込んだ。
「なんだこれは?」
「ラルフはスキルで覗いたステータス情報をそのまま紙に書き移せるんです」
マルヴェインは私から紙を受け取ると、視線を徐々に下へ移動させた。
「ってことはこの紙に書かれている情報は……」
「事実だと思います」
「そうか」
そのまま紙はマルヴェインの手からセヴィオンに渡り、最終的には父上の元にまで渡った。
「これは本当なのか?」
父上も兄さん達と同じ反応だった。それだけここに書いてあることが信じられずに衝撃的だ。
「ラルフのスキルは基本事実です。実際にラルフの家族は彼らに殺されてます」
「本人の話もあるなら間違いはないだろうな」
マルヴェインも私と同じでラルフのスキルを信じていた。
「それが事実だったとしてもあの貴族の鏡と言われた好青年がこんなことをするのだろうか」
「国王様、私達にもそれを見せていただくことはできないでしょうか」
父上は何か考えた後に首を横に振った。
「これは君達は知らない方がいいだろう。ただ言えることは私達王族とお前達貴族が関わっているということだ」
「そうですか……」
「ただこの話には参加してもらおう、君達高位貴族の力が必要になるかもしれない」
確かに彼と接近するには他の公爵家の力を使った方が早いかも知れない。
すでに王族である私もあの場にいたとなれば王族には情報が入ることになる。
「私の右腕としてこれはどう考える?」
父上は右腕である宰相に渡すと彼は頷いていた。
「ラルフさんのスキルは確かに合っているでしょう。獣人で平民の彼が貴族である令嬢の失踪事件を知るはずもないですし、そもそもこの事件が起きた時はきっと彼は幼少期だったと思います」
「君も言うなら間違いないか……」
「それよりも問題なのは彼の種族だと思います」
「セヴィオンどういうことだ?」
「ここにいる人達は魔人という存在を知っていますか?」
セヴィオンの言葉に私も含めて一部の人しか頷くことができなかった。
「私が留学しているときに見た文献では、魔人は一国を破壊するほどの強力な魔力を持っていると言われています」
「ってことは――」
「はい、いずれ彼は動くと思います。それにもう正体がばれてしまっては、ケントくんを使うよりは別の方法で来ると思います」
「どういうことだ?」
「私の考えで話しますが、今までは動物や魔物に強制進化の首輪が装着されてきたのはその者自体を強化するために使われてきました。一番話を聞いているのはガレインだけど間違いはないよね?」
「合っています。実際にケントから聞いた話では、強制進化の首輪は魔素を吸収して装着した者の魔力の器を強制的に広げて上の種族に変える……進化させると言われています」
「ではケントに付けたのはなんでだと思う?」
「それは……上の種族に……」
動物であれば魔物に進化し、魔物であればさらに上位種に進化する。だが、人間が進化するのは何になるのだろうか。
「魔人ですか?」
話を聞いていた貴族は手を上げて答えた。
「それも一部考えたが、魔人はそもそも何から進化した存在なのかわかっていません。そして一番引っかかるのは――」
「ラルフの"魔力を欲していたから気をつけて"って言葉ですか?」
「その通り。私の予想ではケントの魔力を自身に吸収させるためではないかと思います」
セヴィオンの言っていることは私達でも納得することができた。ただ、今まで魔物達に装着させていたのはなんでだろうか。
魔力を吸収するならそもそも魔力の器が異なる魔物より人間に着ければよかったのだ。
「私達はケントに申し訳ないことをしたようだな」
「父上……」
「冒険者ギルドにいるカタリーナとハワードには、ケントに関しての扱いは冒険者ギルドに任せると伝えてくれ」
「わかりました」
宰相は紙に何かを書くと魔法で冒険者ギルドに向けて飛ばした。
謎は深まるばかりだがとりあえず私達はケントの無事を祈った。
11
お気に入りに追加
1,374
あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

実家から追放されたが、狐耳の嫁がいるのでどうでも良い
竹桜
ファンタジー
主人公は職業料理人が原因でアナリア侯爵家を追い出されてしまった。
追い出された後、3番目に大きい都市で働いていると主人公のことを番だという銀狐族の少女に出会った。
その少女と同棲した主人公はある日、頭を強く打ち、自身の前世を思い出した。
料理人の職を失い、軍隊に入ったら、軍団長まで登り詰めた記憶を。
それから主人公は軍団長という職業を得て、緑色の霧で体が構成された兵士達を呼び出すことが出来るようになった。
これは銀狐族の少女を守るために戦う男の物語だ。


【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる