外れスキルで異世界版リハビリの先生としてスローライフをしたいです。〜戦闘でも使えるとわかったのでチーム医療でざまぁすることになりました〜

k-ing ★書籍発売中

文字の大きさ
上 下
203 / 281
第一章 外れスキル

203.ブローチの交換

しおりを挟む
 俺達は冒険者ギルドに向かうと既に冒険者達が集まっていた。

「なんか大変そうだな!」

 声を掛けてきたのはリモンだった。マルクスとカレンが結婚してからも、たまに顔を合わせていたが、冒険者ギルドで見るのは久しぶりだった。

「今どんな感じですか?」

 そんなリモンに俺は現在の冒険者ギルドの動きを確認した。

「ん? もうケントは知っているのか?」

 リモンはまだ何も聞いていないようだった。

 そんな俺の様子を見てリモンが冒険者ギルドに集まった理由を説明し出した。

「冒険者ギルド側から急遽招集があったんだ。前回はこの間の依頼の時だけどこの人数は異常だよな」

 冒険者ギルドには仮冒険者も含めて軽く百人は超えている。

 きっと現在王都にいる冒険者達が集められたのだろう。

 その中にはフェーズの元パーティーメンバーのネロやドランもいた。ネロは俺に気づき手を振っていた。

「おい、ケントとラルフちょっと来い」

 中央にいたハワードが声をかけて来た。

 ハワードが声をかけて来たことで、ギルド内が騒然としていた。

「おい、なぜ S級冒険者がケントと知り合いなんだ?」

「俺もなんでこんなことになって――」

 正直目立つことは辞めてほしい。俺はリモンの後ろに隠れようとしたが無駄だった。

「おーい! ケントオォー!」

 どんどん俺を呼ぶ声が大きくなるのだ。俺は逃げれないと思いハワードに近づいた。

「もう少し声を小さく――」

「騎士団と魔法士団には伝えたか」

「あっ……はい。あとこれを渡されました」

 俺はマルヴェインから渡されたブローチをハワードに見せた。

「ははは、してやられたな」

 ハワードはマルヴェインから渡されたブローチを受け取った。

「これってなんかの意味があるんですか?」

 俺はハワードが言っていたことが気になり確認した。

「基本的に王族のブローチを相手に渡すということは、全面的に協力するという意味になる」

「あっ、そういえばすぐに冒険者ギルドに向かうと言っていました」

「そうか。面白くなってきたな!」

 王族が持っているブローチは命同様に大事な物と言われている。

 それを預けるということは、預ける人物を信用するという意味があるらしい。

 そして、戦場においてお互いのブローチを渡すということは背中を預けるという意味になる。

 ん?

 ってことは俺は大事な物を任された伝書鳩みたいな役割をしていたらしい。





 しばらくすると冒険者ギルドに王族の三人が訪れた。

 マルヴェイン達はすぐに受付嬢の元へ向かい、カタリーナに来たことを伝えて貰うように頼んでいた。

「お前……何を考えてるんだ」

 ハワードがマルヴェインの方へ向かうと彼は笑っていた。

「ははは、これでお互い同等になりますね」

 本当であればハワードがマルヴェインの指揮下に入って行動するつもりだったらしい。

 ハワードの後ろにいた俺の存在に気付きマルヴェインが声をかけてきた。

「ケント、冒険者ギルドまで伝令ありがとう」

「大丈夫ですよー。どうせ俺は伝書鳩ですからね! 異世界食堂に来てもパスタのおかわりができないように伝えておく――」

「いやー、ケントすまない!」
「俺もそんなつもりはなかったぞ!」

 ハワードとマルヴェインは頭を下げて謝ってきた。

「おい、やっぱケントって何者なんだ?」

「ひょっとしてどこかの有名な王族なんじゃ――」

 仕返しをするつもりがなぜか王族二人に謝られることになるとは……。異世界食堂ってそんなに影響があるのだろうか。

「おい、お前らはこんなところで何をやっているのじゃ!」

 そこへ入って来たのは冒険者ギルドのギルドマスターであるカタリーナだった。

「ケントがパスタのおか――」

「やっと揃ったのに何をやっておるのじゃ。 すぐに会議を行うからついてくるのじゃ」

 カタリーナを先頭にハワード、マルヴェイン、セヴィオンが奥の部屋に向かって行った。

「はぁー、中々濃い人達だね」

「あんな状況下で仕返ししようとするケントもすごいよ」

 ガレインから見たら俺も同格なんだろうか。別に俺は普通の人間のはずだ。

「あっ! ついでにケント、ラルフ、ガレインもついてくるのじゃ」

 急に振り返ったカタリーナに俺達三人も呼ばれた。なぜか会議についていく羽目となった。
しおりを挟む
感想 120

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

実家から追放されたが、狐耳の嫁がいるのでどうでも良い

竹桜
ファンタジー
 主人公は職業料理人が原因でアナリア侯爵家を追い出されてしまった。  追い出された後、3番目に大きい都市で働いていると主人公のことを番だという銀狐族の少女に出会った。  その少女と同棲した主人公はある日、頭を強く打ち、自身の前世を思い出した。  料理人の職を失い、軍隊に入ったら、軍団長まで登り詰めた記憶を。  それから主人公は軍団長という職業を得て、緑色の霧で体が構成された兵士達を呼び出すことが出来るようになった。  これは銀狐族の少女を守るために戦う男の物語だ。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...