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第一章 外れスキル
135. テストと王国魔力蜜の価値
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次の日、俺は孤児院に来ていた。前回来た時はトラッセン街に行く前だったため、約一週間振りだ。
今回も俺の姿を見つけたのはミィだった。
「お兄ちゃんおかえり」
ミィは助走をつけると全力で向かって飛びついて来た。
「ぐふぅ!? ただいま」
俺はミィを受け止めるとそれに続きリハビリ三人組や他の子達も近づいて来た。
「いや、それは無理……無理だー!!!」
気づいたら年下の子達にもみくちゃにされていた。俺は何か悪いことをしたのだろうか。
「みんなちゃんと勉強していたか?」
俺の言葉を聞き、肩を震わせて走っていく子達がいた。リハビリ三人組だ。
如何にも勉強をしていなかったのが丸わかりな反応だ。きっと勉強がしたくなくて俺に憂さ晴らしをするために飛びついてきたのだろう。
「あいつらは勉強していたか?」
「んー、二人はフェーズおじさんのところで剣の練習をしていたって聞いてるよ」
どうやらスキル【言語療法】のリュク以外は遊んでいたようだ。フェーズには冒険者としての知識や剣を空いた時間に教えて欲しいとお願いしたのだが、俺が出した宿題よりもそっちに興味があったのだろう。
「よし、あとでお仕置きが必要だな」
俺はきっとヤンチャな三人組は勉強しないだろうと思っていた。だが、リュクだけは違った。
なんと言うのかリュクは言語聴覚士ぽい感じだ。
♢
俺は外れスキルの子ども達を部屋に集めた。そして勉強の時間と言いながらもテストを始めた。
内容は特に難しくもなく、前回渡した内容を暗記する程度だ。
ただ、あまり生活では触れない内容で文字が多いのが難点だが、ラルフが用意した画像をそのまま使っているため、勉強した子であれば問題ないはずだ。
「それでなんで二人だけこんなに出来ていないんだ?」
俺はマークとエルクを呼び出して説教をしていた。やはりこの二人だけは点数が取れなかったのだ。
「兄ちゃんおかわり」
その隣ではミィ達のようにテストした子や他の子達は俺が作ったホットケーキもどきを食べている。
しかも、魔力蜜をかけているため以前の食べたクッキーよりも甘いのだ。
「なんで俺達には食べさせてくれないんだ!」
「そうだ!」
二人は特に悪びれる様子もなく、食べさせてもらえないことに怒っていた。
「別に食べたければどうぞ。ただしこれからは何も手伝わないし、一生外れスキルと言われて生活してください」
ケトは外れスキルと判定されてから、奴隷として辛い思いを経験している。俺はその記憶があるからこそ、彼らが今後どうにか生きていける手段を身につけて欲しかった。
そもそも外れスキルという理由だけで捨てられたが、孤児院という拠り所があるからケトよりはマシだ。
俺の言葉に二人は言い返せなかった。
心のどこかでは外れスキルと言われたくないという気持ちがあるのだろう。
「あと二年で働き先を決めて各々手に職をつけていくことになる。そうすれば自然とスキルの必要性を再確認することになると思う」
俺の言葉に二人は頷いていた。ヤンチャではあるが元気なだけで真面目な部分もあるのは知っている。
「そうなった時には自身の実力の差を感じると思う。俺は上手いことスキルが発動出来たから良かったけど、一生スキルが使えず自分に合わない仕事をするつもり? 何年も努力したのに、スキルが使えるだけの人に負けちゃうよ?」
今後どうなるかは俺自身不安は拭えないが、できる範囲で生きる可能性を広げることが今の俺の役目だと思っている。
俺も少し言いすぎた気もするが、スキルで人生が左右されるこの世界ではそれだけスキルの発動が大事なのだ。
「これからはちゃんと勉強する?」
「ちゃんとする! そして、兄ちゃんを超える」
俺の熱意が伝わったのか、二人の顔からはどこか吹っ切れていた様子を感じた。
「じゃあ、二人には特別にこれをかけてあげよう」
俺が取り出したのは王国魔力蜜だ。実はトラッセン街から戻ってくるときも魔力蜜は使っても、王国魔力蜜は使ったことがなかった。
俺は二人のホットケーキもどきに王国魔力蜜をかけた。
王国魔力蜜は魔力蜜と違って、黄金に輝いている。蜜はトロッとしており、かけた瞬間からホットケーキもどきにすぐに染み込んでいく。
「なんかすごいな……」
俺のボソッと呟いた声は隣から聞こえる唾液を飲む音でかき消されていた。
「兄ちゃんまだ食べたらだめ?」
まだかまだかと待っている二人はうずうずとしていた。
「これからも頑張れよ」
俺は二人に渡すと掻き込むようにホットケーキもどきを食べていた。
「いただきます!」
俺自身も王国魔力蜜をかけたホットケーキを食べてみるとその味に驚愕した。
「トロッと流れる蜜に鼻から溢れ出る豊潤な大地が鼻から抜けていく」
もはや俺自身も何を言っているのか理解していない。
王国魔力蜜はハニービーの女王蜂に好かれないと食べれない品物だ。それこそドラゴンよりも貴重な物かも知れない。
そんな物を食べさせたら子どもはどうなるかは俺は忘れていた。
「兄ちゃんおかわり!」
みんなからおかわりコールが鳴り響いた。
「えー、これじゃなくてさっきの光るやつがいい」
「あれは高いからダメ!」
「ケントだけずるい……」
俺は王国魔力蜜の凄さになるべく人前では出さないようにしようと心に決めた。
今回も俺の姿を見つけたのはミィだった。
「お兄ちゃんおかえり」
ミィは助走をつけると全力で向かって飛びついて来た。
「ぐふぅ!? ただいま」
俺はミィを受け止めるとそれに続きリハビリ三人組や他の子達も近づいて来た。
「いや、それは無理……無理だー!!!」
気づいたら年下の子達にもみくちゃにされていた。俺は何か悪いことをしたのだろうか。
「みんなちゃんと勉強していたか?」
俺の言葉を聞き、肩を震わせて走っていく子達がいた。リハビリ三人組だ。
如何にも勉強をしていなかったのが丸わかりな反応だ。きっと勉強がしたくなくて俺に憂さ晴らしをするために飛びついてきたのだろう。
「あいつらは勉強していたか?」
「んー、二人はフェーズおじさんのところで剣の練習をしていたって聞いてるよ」
どうやらスキル【言語療法】のリュク以外は遊んでいたようだ。フェーズには冒険者としての知識や剣を空いた時間に教えて欲しいとお願いしたのだが、俺が出した宿題よりもそっちに興味があったのだろう。
「よし、あとでお仕置きが必要だな」
俺はきっとヤンチャな三人組は勉強しないだろうと思っていた。だが、リュクだけは違った。
なんと言うのかリュクは言語聴覚士ぽい感じだ。
♢
俺は外れスキルの子ども達を部屋に集めた。そして勉強の時間と言いながらもテストを始めた。
内容は特に難しくもなく、前回渡した内容を暗記する程度だ。
ただ、あまり生活では触れない内容で文字が多いのが難点だが、ラルフが用意した画像をそのまま使っているため、勉強した子であれば問題ないはずだ。
「それでなんで二人だけこんなに出来ていないんだ?」
俺はマークとエルクを呼び出して説教をしていた。やはりこの二人だけは点数が取れなかったのだ。
「兄ちゃんおかわり」
その隣ではミィ達のようにテストした子や他の子達は俺が作ったホットケーキもどきを食べている。
しかも、魔力蜜をかけているため以前の食べたクッキーよりも甘いのだ。
「なんで俺達には食べさせてくれないんだ!」
「そうだ!」
二人は特に悪びれる様子もなく、食べさせてもらえないことに怒っていた。
「別に食べたければどうぞ。ただしこれからは何も手伝わないし、一生外れスキルと言われて生活してください」
ケトは外れスキルと判定されてから、奴隷として辛い思いを経験している。俺はその記憶があるからこそ、彼らが今後どうにか生きていける手段を身につけて欲しかった。
そもそも外れスキルという理由だけで捨てられたが、孤児院という拠り所があるからケトよりはマシだ。
俺の言葉に二人は言い返せなかった。
心のどこかでは外れスキルと言われたくないという気持ちがあるのだろう。
「あと二年で働き先を決めて各々手に職をつけていくことになる。そうすれば自然とスキルの必要性を再確認することになると思う」
俺の言葉に二人は頷いていた。ヤンチャではあるが元気なだけで真面目な部分もあるのは知っている。
「そうなった時には自身の実力の差を感じると思う。俺は上手いことスキルが発動出来たから良かったけど、一生スキルが使えず自分に合わない仕事をするつもり? 何年も努力したのに、スキルが使えるだけの人に負けちゃうよ?」
今後どうなるかは俺自身不安は拭えないが、できる範囲で生きる可能性を広げることが今の俺の役目だと思っている。
俺も少し言いすぎた気もするが、スキルで人生が左右されるこの世界ではそれだけスキルの発動が大事なのだ。
「これからはちゃんと勉強する?」
「ちゃんとする! そして、兄ちゃんを超える」
俺の熱意が伝わったのか、二人の顔からはどこか吹っ切れていた様子を感じた。
「じゃあ、二人には特別にこれをかけてあげよう」
俺が取り出したのは王国魔力蜜だ。実はトラッセン街から戻ってくるときも魔力蜜は使っても、王国魔力蜜は使ったことがなかった。
俺は二人のホットケーキもどきに王国魔力蜜をかけた。
王国魔力蜜は魔力蜜と違って、黄金に輝いている。蜜はトロッとしており、かけた瞬間からホットケーキもどきにすぐに染み込んでいく。
「なんかすごいな……」
俺のボソッと呟いた声は隣から聞こえる唾液を飲む音でかき消されていた。
「兄ちゃんまだ食べたらだめ?」
まだかまだかと待っている二人はうずうずとしていた。
「これからも頑張れよ」
俺は二人に渡すと掻き込むようにホットケーキもどきを食べていた。
「いただきます!」
俺自身も王国魔力蜜をかけたホットケーキを食べてみるとその味に驚愕した。
「トロッと流れる蜜に鼻から溢れ出る豊潤な大地が鼻から抜けていく」
もはや俺自身も何を言っているのか理解していない。
王国魔力蜜はハニービーの女王蜂に好かれないと食べれない品物だ。それこそドラゴンよりも貴重な物かも知れない。
そんな物を食べさせたら子どもはどうなるかは俺は忘れていた。
「兄ちゃんおかわり!」
みんなからおかわりコールが鳴り響いた。
「えー、これじゃなくてさっきの光るやつがいい」
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俺は王国魔力蜜の凄さになるべく人前では出さないようにしようと心に決めた。
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