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第一章 外れスキル
115.訪問事業
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俺はカタリーナに強制進化の首輪を預かると同時にある交渉をすることにした。
「この首輪を預かるにあたって、お願いを一つ聞いて貰ってもいいですか?」
「やはりわしの体を狙って――」
「――それは遠慮します」
「うっ……」
「頼みなんですが――」
「少しはわしの相手をしてくれてもいいじゃないか」
「長くなりそうなので遠慮しておきます」
それでも俺はカタリーナを無視して話を進めた。
「実は孤児院の子ども達、特に外れスキルの子達がスキル発動が出来るようになったのでスキルでお金を稼げる仕組みを作ろうかと……」
「また、急な話をぶっこんできたのじゃ」
「えっ?」
「そういうのは少しずつにして欲しいのじゃ……」
カタリーナはそう言いながらも、孤児院の子ども達がスキルを使えるという話を聞いて嬉しそうだ。
「それでその子達はどんなスキルなのじゃ?」
「僕は医療スキルと呼んでます」
「医療スキル?」
「回復魔法だけどある一定の条件の元発動する特殊な回復魔法です」
「どういうことじゃ?」
俺は詳しく説明するためカタリーナの後ろに回った。
「やはり私の体でモテ遊……痛だだだだ!」
カタリーナの肩を軽く徒手でマッサージし筋硬結を圧迫した。
初めは痛そうだったが、次第に筋肉が解れると痛みが無くなりカタリーナは心地好さそうな顔をしている。
「これが医療スキルです」
「体が軽くなったのじゃ。確かに特殊な回復魔法じゃな」
カタリーナの仕事は基本デスクワークのことが多い。どこのギルドマスターも本当に裏で隠れてコソコソと仕事をしている。
「まぁ、魔法じゃなくて実力なんですけど」
「……どういうことじゃ?」
カタリーナは若干混乱していた。
「僕のスキル【理学療法】はこういうことで発動してます。枠組みでは魔法ではあるんですが、基本的には自身の技術や能力に補助効果が重なるだけで限界はあります」
「じゃあ、魔法だとどうなるのじゃ?」
「一応傷は治すことはできます」
俺の話を聞きカタリーナはナイフを取り出すと自分の手を深めに切りつけた。目の前では幼女が手から血を流して俺をみている。
「ちょ、何してるんですか」
「いや、実力を見ようと思ったのじゃ」
思ったより深く切りつけていたため、手からは多量に血が溢れ出ている。
すぐにかざして魔法を発動させた。次第に傷口がくっついていき、しばらくすると完全に塞がった。
「僕は傷口を塞ぐことは出来ても、完全に元の状態に治すことはできないんです。ただ傷口がかさぶたになるだけです。あとは病気は対象外になので教会や治療院へ行かないといけないんです」
俺の中のイメージでは血小板を活性化させているイメージだ。実際見てても血液がモリモリと動いている感じがしている。
「確かに特殊な回復魔法じゃな」
「基本的には生活の補助や体が弱っている人を復帰させたりすることが出来るスキルだと思ってもらえばいいのかな」
「そうか。でも、冒険者ギルドで作る必要性はどこにあるのじゃ? 回復魔法なら聖教ギルド、新しい商売であれば商業ギルドの方が良いと思うのじゃが……」
「迷っていたらガレインが冒険者ギルドの方が良いって――」
「ガレイン!?」
「あっ……」
「ガレインってあの第三王子のガレインか! ひょっとして外れスキルが発動出来たのか」
カタリーナは俺の肩を掴むと、その手は幼女とは思えないほど力が強かった。
「痛たたた!」
「どうなのじゃ!?」
さらに力を強めて俺の肩からミシミシと骨が鳴る音が聞こえていた。ひょっとしたらあの筋肉モリモリのパッションカラーの服を着ていたマリリンよりも力強いかも……。
「力が強いってば! ガレインもスキルが使えているって!」
俺の話を聞いたカタリーナはすぐに力が抜け笑っていた。
「そうか、良かったのじゃ」
以前から王はガレインが外れスキルだったことに心を痛めていた。
自身の行いが悪かったのか。平民との子のため能力の格差で外れスキルが生まれたのか。様々な資料や話しを聞いて解決策を探していた。
それでもどうにもならずステータスを知ってから六年も経過した。
その姿をカタリーナは身近で見ていたらしい。
「あいつは……王はガレインがスキルを使えることを知っているのか?」
「この前聞いた時は伝えてないと言ってたよ。ガレインは自身のスキルが貴族達に広まって派閥の種になることを防ごうとしているらしい」
なぜガレインがスキルのことを伝えていないのか。そしてなぜ聖教ギルドや商業ギルドではなく冒険者ギルドを選択をしたのかを説明をした。
「そうか、ガレインも考えておるのじゃな。確かに聖教ギルドでは不便だろうし、商業ギルドでは第三王子でも聖教ギルドの圧がかかるだろう。どちらも自然と貴族達の争いの種としては避けられないじゃろうな。その分冒険者ギルドのように独立組織であれば文句は言われにくいか……」
「冒険者になったとしても個人依頼ができるランクまで上げられる可能性も低いってなると、新しい組織として作ってお金を稼げる方法を作らないと孤児院の子ども達は外れスキルのままなんです」
カタリーナは少し考え込むと机から用紙を取り出しインクとペンを持ってきた。
そのインクはどこか光っており俺は不思議に感じた。
「ここにどういう仕事内容か。何の依頼を回して欲しいのか。最後に代表者と組織の名前も書くのじゃ」
紙には細かく書かれていたがカタリーナが一から説明した。
――――――――――――――――――――
冒険者ギルド契約書
王都冒険者ギルドは、貴方達の以下の活動に依頼を斡旋し補助することを誓う。
1.生活の補助および治療行為に関わる依頼
2.病気または怪我の診断
3.外れスキル持ちの雇用や解決策の相談
以上の内容および依頼を組織として斡旋する。
組織『医療法人 異世界病院』
代表者『冒険者ケント』
――――――――――――――――――――
「では、手を置くのじゃ」
カタリーナに言われた通りに手を置くと、自然と魔力が吸われ文字が空中に浮かび上がった。
「えっ……」
再び文字は紙に戻ると契約書は端から燃えて綺麗に消えた。
「これで契約終了なのじゃ」
「これで終わり?」
思ったよりも凝った演出だと思ったが登録は呆気なかった。
「依頼を優先的に回してもらうように契約しただけじゃ。何か依頼があればケントの元に話がいくだろうから、あとはそっちで依頼の割り振りを任せるのじゃ」
「わかった。また何かあれば聞いても大丈夫ですか?」
「いつでもいいのじゃ。基本は冒険者として活動しているのと変わらないのじゃ。あっ、もし依頼を受ける人は冒険者登録が必要になるからまたみんなで登録に来るのじゃぞ」
運営に必要なことを確認し俺は部屋を後にした。俺は"医療法人異世界病院"の代表者になった。
「この首輪を預かるにあたって、お願いを一つ聞いて貰ってもいいですか?」
「やはりわしの体を狙って――」
「――それは遠慮します」
「うっ……」
「頼みなんですが――」
「少しはわしの相手をしてくれてもいいじゃないか」
「長くなりそうなので遠慮しておきます」
それでも俺はカタリーナを無視して話を進めた。
「実は孤児院の子ども達、特に外れスキルの子達がスキル発動が出来るようになったのでスキルでお金を稼げる仕組みを作ろうかと……」
「また、急な話をぶっこんできたのじゃ」
「えっ?」
「そういうのは少しずつにして欲しいのじゃ……」
カタリーナはそう言いながらも、孤児院の子ども達がスキルを使えるという話を聞いて嬉しそうだ。
「それでその子達はどんなスキルなのじゃ?」
「僕は医療スキルと呼んでます」
「医療スキル?」
「回復魔法だけどある一定の条件の元発動する特殊な回復魔法です」
「どういうことじゃ?」
俺は詳しく説明するためカタリーナの後ろに回った。
「やはり私の体でモテ遊……痛だだだだ!」
カタリーナの肩を軽く徒手でマッサージし筋硬結を圧迫した。
初めは痛そうだったが、次第に筋肉が解れると痛みが無くなりカタリーナは心地好さそうな顔をしている。
「これが医療スキルです」
「体が軽くなったのじゃ。確かに特殊な回復魔法じゃな」
カタリーナの仕事は基本デスクワークのことが多い。どこのギルドマスターも本当に裏で隠れてコソコソと仕事をしている。
「まぁ、魔法じゃなくて実力なんですけど」
「……どういうことじゃ?」
カタリーナは若干混乱していた。
「僕のスキル【理学療法】はこういうことで発動してます。枠組みでは魔法ではあるんですが、基本的には自身の技術や能力に補助効果が重なるだけで限界はあります」
「じゃあ、魔法だとどうなるのじゃ?」
「一応傷は治すことはできます」
俺の話を聞きカタリーナはナイフを取り出すと自分の手を深めに切りつけた。目の前では幼女が手から血を流して俺をみている。
「ちょ、何してるんですか」
「いや、実力を見ようと思ったのじゃ」
思ったより深く切りつけていたため、手からは多量に血が溢れ出ている。
すぐにかざして魔法を発動させた。次第に傷口がくっついていき、しばらくすると完全に塞がった。
「僕は傷口を塞ぐことは出来ても、完全に元の状態に治すことはできないんです。ただ傷口がかさぶたになるだけです。あとは病気は対象外になので教会や治療院へ行かないといけないんです」
俺の中のイメージでは血小板を活性化させているイメージだ。実際見てても血液がモリモリと動いている感じがしている。
「確かに特殊な回復魔法じゃな」
「基本的には生活の補助や体が弱っている人を復帰させたりすることが出来るスキルだと思ってもらえばいいのかな」
「そうか。でも、冒険者ギルドで作る必要性はどこにあるのじゃ? 回復魔法なら聖教ギルド、新しい商売であれば商業ギルドの方が良いと思うのじゃが……」
「迷っていたらガレインが冒険者ギルドの方が良いって――」
「ガレイン!?」
「あっ……」
「ガレインってあの第三王子のガレインか! ひょっとして外れスキルが発動出来たのか」
カタリーナは俺の肩を掴むと、その手は幼女とは思えないほど力が強かった。
「痛たたた!」
「どうなのじゃ!?」
さらに力を強めて俺の肩からミシミシと骨が鳴る音が聞こえていた。ひょっとしたらあの筋肉モリモリのパッションカラーの服を着ていたマリリンよりも力強いかも……。
「力が強いってば! ガレインもスキルが使えているって!」
俺の話を聞いたカタリーナはすぐに力が抜け笑っていた。
「そうか、良かったのじゃ」
以前から王はガレインが外れスキルだったことに心を痛めていた。
自身の行いが悪かったのか。平民との子のため能力の格差で外れスキルが生まれたのか。様々な資料や話しを聞いて解決策を探していた。
それでもどうにもならずステータスを知ってから六年も経過した。
その姿をカタリーナは身近で見ていたらしい。
「あいつは……王はガレインがスキルを使えることを知っているのか?」
「この前聞いた時は伝えてないと言ってたよ。ガレインは自身のスキルが貴族達に広まって派閥の種になることを防ごうとしているらしい」
なぜガレインがスキルのことを伝えていないのか。そしてなぜ聖教ギルドや商業ギルドではなく冒険者ギルドを選択をしたのかを説明をした。
「そうか、ガレインも考えておるのじゃな。確かに聖教ギルドでは不便だろうし、商業ギルドでは第三王子でも聖教ギルドの圧がかかるだろう。どちらも自然と貴族達の争いの種としては避けられないじゃろうな。その分冒険者ギルドのように独立組織であれば文句は言われにくいか……」
「冒険者になったとしても個人依頼ができるランクまで上げられる可能性も低いってなると、新しい組織として作ってお金を稼げる方法を作らないと孤児院の子ども達は外れスキルのままなんです」
カタリーナは少し考え込むと机から用紙を取り出しインクとペンを持ってきた。
そのインクはどこか光っており俺は不思議に感じた。
「ここにどういう仕事内容か。何の依頼を回して欲しいのか。最後に代表者と組織の名前も書くのじゃ」
紙には細かく書かれていたがカタリーナが一から説明した。
――――――――――――――――――――
冒険者ギルド契約書
王都冒険者ギルドは、貴方達の以下の活動に依頼を斡旋し補助することを誓う。
1.生活の補助および治療行為に関わる依頼
2.病気または怪我の診断
3.外れスキル持ちの雇用や解決策の相談
以上の内容および依頼を組織として斡旋する。
組織『医療法人 異世界病院』
代表者『冒険者ケント』
――――――――――――――――――――
「では、手を置くのじゃ」
カタリーナに言われた通りに手を置くと、自然と魔力が吸われ文字が空中に浮かび上がった。
「えっ……」
再び文字は紙に戻ると契約書は端から燃えて綺麗に消えた。
「これで契約終了なのじゃ」
「これで終わり?」
思ったよりも凝った演出だと思ったが登録は呆気なかった。
「依頼を優先的に回してもらうように契約しただけじゃ。何か依頼があればケントの元に話がいくだろうから、あとはそっちで依頼の割り振りを任せるのじゃ」
「わかった。また何かあれば聞いても大丈夫ですか?」
「いつでもいいのじゃ。基本は冒険者として活動しているのと変わらないのじゃ。あっ、もし依頼を受ける人は冒険者登録が必要になるからまたみんなで登録に来るのじゃぞ」
運営に必要なことを確認し俺は部屋を後にした。俺は"医療法人異世界病院"の代表者になった。
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