外れスキルで異世界版リハビリの先生としてスローライフをしたいです。〜戦闘でも使えるとわかったのでチーム医療でざまぁすることになりました〜

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第一章 外れスキル

110.孤児院の問題

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 俺はエイマーの元へ向かい子ども達のスキルツリーを書いた紙を渡した。

「これは?」

「子ども達の詳しいスキル内容です」

「ここまで……」

 エイマーは渡された紙を見て驚いていた。

「情報が書いていないものに関してはまだスキルが発動していない子になります。詳しく書いてある子はスキルが発動しているため、その分野に関して早めに練習や仕事をすると良いと思います」

 ガレインがエイマーに言うのには理由があった。

――――――――――――――――――――

スキルツリー『Lv.1 武器の心得』
 戦士系スキルの基本の心得。武器の扱いが補正され、戦闘することでさらに扱いが熟達する。

Lv.1 武器の心得→槍の心→?

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

スキルツリー『Lv.1 槍の心得』
 戦士系スキルの槍の心得。槍の扱いが補正され、戦闘することでさらに扱いが熟達する。槍での戦闘時殺傷能力が高まる。

Lv.1 武器の心得→槍の心→?

――――――――――――――――――――

 上記スキルは【戦士】のものだ。スキル【戦士】は【剣士】と似ているが違いがあるらしい。

 それは武器が剣かそれ以外かということだ。二つのスキルの差は武器が合っていればそれほど変わらないものの問題があった。

 それは自身に合った武器がわからないということだ。

 スキル自体はちゃんとした武器でなければ発動されない。

 しかし、そんなに資金もなく戦闘場面にならないと自身に合った武器がわからないため、【戦士】は【剣士】の下位スキルと言われているらしい。

 各々のスキルを伸ばすことを考えれば早めに伝えたほうが良いとガレインが判断したため伝えることにしたのだ。

「こんなことまでしてもらってありがとう」

「それでこっちの方が問題の外れスキルなんですけど……」

 次に渡したのは医療系スキルの対象となっている十人だった。

「やはり外れスキルだったんですね」

「そうですね。そもそも僕達と同じ医療系スキルなので知識が必要なんです」

「医療系スキル?」

「外れスキルに多いのが多分この医療系スキルだと思うんです。回復魔法に似ているけど、知識や技術が無いと発動されないタイプなんですよね」

 ラルフとガレインは俺に知識を与えられスキルが発動した。

 一方ウルとラルは技術を与えられスキルが発動するようになった。

「ならあの子達はずっと外れスキルのままで――」

「だから僕が教えられる範囲で少しずつやっていこうと思います」

「いいの? 冒険者としての活動もあるわよね?」

「だからその日程を決めようかと思います」

「わかったわ。いつも頼ってばかりでごめんなさいね。お金も足りてないから冒険者の依頼として出せれば良かったんだけどね……」

 エイマーの発言にガレインの眉がピクリと動いた。そういえば、ガレインに聞こうと思っていたのを忘れていた。

「エイマーさん少しいいですか?」

「なんでしょうか?」

「孤児院の運営って国から補助されてますよね?」

「はい」

「今運営費っていくら貰えてるんですか?」

「月に金貨20枚です」

「20枚ですか! それはエイマーさん達の給料も含めてですか?」

 物価から考えるとおよそ日本円で20万円程度の計算となっている。

 Eランク冒険者の日給で5,000円程度のため、ほぼ人数の食料が賄えれるかどうかの範囲だ。

「そうなります」

 エイマーの話を聞きガレインは拳を強く握っていた。

「そうなんですね。大変だと思いますが頑張ってください」

「ガレくんもありがとね」

「じゃあ、まずは来週の炊き出しの日に手伝いも含め勉強を教えに来ますね」

「わかったわ。子ども達にも伝えておくわ」

 三人は孤児院を後にした。帰っている際もガレインは何かを考えており様子がおかしかった。

「ガレインどうしたんだ?」

「多分貴族達に孤児院のお金が着服されている」

「どういうことだ?」

「基本的に孤児院などの運営費は国が最悪な状態にならない限りは一人当たりのお金で支給されている。だから余程戦争で財政危機になっていたりしない限りは一定量入ってくるはずなんだが、さすがに金貨20枚は少なすぎる」

「ってことは――」

「誰かが着服しないとお金が減ることはない。しかも、孤児院の運営費は財務官が管理している……財務官は貴族達の仕事なんだ」

 最後の方は歯切れ悪くガレインもどこか悔しそうだ。

「それはどうにかならないんか?」

「一応私から父に駆け寄ろうと思うが、貴族達は何かしら隠蔽しているはずだ。しかも、外れスキルと言われている私の意見に貴族が聞くことはないと思うし、どうせ嘘だと父も言い返されるだけだと……」

 ここでもまた外れスキルという認識が邪魔をしていた。

「そうか、まあここは孤児院のスタッフと子供達に頑張って耐えて貰うしかないな」

「ああ、私ら貴族がすまない」

「いやいや、俺はそんなに関係ないよ? 俺は外れスキルと言われているあの子達の力になりたいだけだからね。ガレインは自分が出来ることを少しずつ解決できれば良いと思うよ」

「そうだぞ! 俺ももう少しスキルの使い方を研究してみる」

 貴族の務めではあるものの成人していないガレインは貴族の中での発言権は王族でもない。それでも平民の気持ちを考えられるだけで立派な王族だ。

「来週また孤児院に行く予定だからガレインもできたら来いよ」

「うん、また来週だね」

 そう言ってガレインは憩い宿屋の前にいる馬車に乗って貴族街に帰って行った。

「大丈夫そうかな?」

「んー、ガレインもあの感じだと考え込みそうだね」

「だよな……」

「まぁ、俺らも冒険者として明日からも頑張ろう」

「おう!」

 俺達にできることは今できることを少しずつこなすだけだ。お互いの拳を打ち合わせ憩いの宿屋に帰った。
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