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第一章 外れスキル
62.引退間近の冒険者 ※キーランド視点
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俺は中年のBランク冒険者だ。今じゃ俺の時代も終わり、新しい世代の人達が活躍してきている。
周りの同世代は冒険者を引退し、新たに始めた仕事で生計を立てている人ばかりだ。
最近は自分の武器である大剣が振りにくくなってきたのを感じ引退を考えていた。
昔から怪我はよくしていたが、大剣が使えなければ冒険者として一線を退くことになる。それは俺のスキルが【大剣士】だからだ。
普通の剣でもある程度の効果は出るが、スキルの影響か大剣の方が威力は強くなる特性がある。
そのため冒険者を続けるには大剣でなければいけない。
そんな中俺はある少年に出会った。
「今日もよろしくお願いします」
目の前にいる小柄で頼りなさそうな少年がケントだ。
「ああ、よろしく」
とにかく元気な少年なんだがそいつの知識の量に驚いた。
先日も昔から友人の冒険者に誘われるまま行った体操教室という変な団体に彼は講師でいた。
場所も治療院で行うと聞いて行ってみたが意外に元気な奴が多かった。俺の仲間達が久しぶりに揃うのも珍しく、いつのまにかみんな老けたのだと実感した。
そもそもケントと出会ったのは冒険者である鉄槌のマルクスが復帰したという知らせを聞いたからだ。
引退を考えていた俺がたまたま冒険者ギルドの訓練場に来るとそこには彼らがいた。
怖い笑みを浮かべた鉄槌のマルクスが少年にハンマーを振り回して追いかけていたのだ。
少年は笑顔で避けているのを見ると将来有望な冒険者になると思った。
しかし、そいつは外れスキル持ちの少年と聞いて世の中の理不尽さを感じた。
周りの冒険者に聞くと同じことを言っているやつも多かった。それだけ訓練場での姿を他の冒険者も見ているのだろう。
体操教室の人気は凄かった。まだトライン街に来て、そんなに日は経ってないが治療院では信頼されていた。
だから俺もケントのために頑張った。俺もマルクスみたいにちゃんと復帰して、歴代最年長の冒険者になってやろうと思っていたのだ。
ちゃんと毎日言われた数より多く、何倍の筋トレや片脚立ちもやった。
それなのに……。
何故か俺は怒られていた。
「なんでこんなに足が腫れてるんですか?」
「俺もお前のためにやろうと……」
「どうせ沢山やれば良いと思ったんですよね?」
俺の考えはケントにバレていたようだ。何か魔法でも使っているのだろうか。
いつも使う足湯のドラム缶を持ってくるとそこに足を入れるように言ってきた。
「ちょっと冷やしますが、数日らリハビリ禁止ですからね」
ドラム缶の中は冷たかった。今日はケントの機嫌が悪いからさらに冷たく感じる。
「はぁー、俺が何をしたって――」
「やり過ぎなんです。リハビリはやり過ぎても悪くなるんですよ」
「はぁん?」
「落ち着くまで足を休ませてくださいね」
「わかった」
俺は嫌われたらわけではなかったようだ。さっきからため息ばかり吐いているからリハビリがなくなると思った。
とりあえずまだ歴代最年長の冒険者は目指せそう。
「よし、これからも――」
俺は改めて気合を入れ直した。家に帰ったらまた筋トレでもやるつもりだ。
「絶対やめてくださいね!!」
やっぱりケントは心を読む魔法を使っていたんだな。
周りの同世代は冒険者を引退し、新たに始めた仕事で生計を立てている人ばかりだ。
最近は自分の武器である大剣が振りにくくなってきたのを感じ引退を考えていた。
昔から怪我はよくしていたが、大剣が使えなければ冒険者として一線を退くことになる。それは俺のスキルが【大剣士】だからだ。
普通の剣でもある程度の効果は出るが、スキルの影響か大剣の方が威力は強くなる特性がある。
そのため冒険者を続けるには大剣でなければいけない。
そんな中俺はある少年に出会った。
「今日もよろしくお願いします」
目の前にいる小柄で頼りなさそうな少年がケントだ。
「ああ、よろしく」
とにかく元気な少年なんだがそいつの知識の量に驚いた。
先日も昔から友人の冒険者に誘われるまま行った体操教室という変な団体に彼は講師でいた。
場所も治療院で行うと聞いて行ってみたが意外に元気な奴が多かった。俺の仲間達が久しぶりに揃うのも珍しく、いつのまにかみんな老けたのだと実感した。
そもそもケントと出会ったのは冒険者である鉄槌のマルクスが復帰したという知らせを聞いたからだ。
引退を考えていた俺がたまたま冒険者ギルドの訓練場に来るとそこには彼らがいた。
怖い笑みを浮かべた鉄槌のマルクスが少年にハンマーを振り回して追いかけていたのだ。
少年は笑顔で避けているのを見ると将来有望な冒険者になると思った。
しかし、そいつは外れスキル持ちの少年と聞いて世の中の理不尽さを感じた。
周りの冒険者に聞くと同じことを言っているやつも多かった。それだけ訓練場での姿を他の冒険者も見ているのだろう。
体操教室の人気は凄かった。まだトライン街に来て、そんなに日は経ってないが治療院では信頼されていた。
だから俺もケントのために頑張った。俺もマルクスみたいにちゃんと復帰して、歴代最年長の冒険者になってやろうと思っていたのだ。
ちゃんと毎日言われた数より多く、何倍の筋トレや片脚立ちもやった。
それなのに……。
何故か俺は怒られていた。
「なんでこんなに足が腫れてるんですか?」
「俺もお前のためにやろうと……」
「どうせ沢山やれば良いと思ったんですよね?」
俺の考えはケントにバレていたようだ。何か魔法でも使っているのだろうか。
いつも使う足湯のドラム缶を持ってくるとそこに足を入れるように言ってきた。
「ちょっと冷やしますが、数日らリハビリ禁止ですからね」
ドラム缶の中は冷たかった。今日はケントの機嫌が悪いからさらに冷たく感じる。
「はぁー、俺が何をしたって――」
「やり過ぎなんです。リハビリはやり過ぎても悪くなるんですよ」
「はぁん?」
「落ち着くまで足を休ませてくださいね」
「わかった」
俺は嫌われたらわけではなかったようだ。さっきからため息ばかり吐いているからリハビリがなくなると思った。
とりあえずまだ歴代最年長の冒険者は目指せそう。
「よし、これからも――」
俺は改めて気合を入れ直した。家に帰ったらまた筋トレでもやるつもりだ。
「絶対やめてくださいね!!」
やっぱりケントは心を読む魔法を使っていたんだな。
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