外れスキルで異世界版リハビリの先生としてスローライフをしたいです。〜戦闘でも使えるとわかったのでチーム医療でざまぁすることになりました〜

k-ing ★書籍発売中

文字の大きさ
上 下
47 / 281
第一章 外れスキル

47.初依頼

しおりを挟む
 次の日、ラルフとともに冒険者ギルドに来ている。マルクスは昨日の段階で先に依頼を受け早朝には自宅を出ていた。

「おはようございます」

「二人ともおはよう! 今日の依頼を集めて来たわ」

 数枚見てもどれも募集人数は二人になっているのが特徴だ。

――――――――――――――――――――

【F.商店販売の協力者募集】
募集人数:2人
報酬:銀貨5枚
内容:ある程度の知識が有る者や覚えが早い者を優先する。我々の商会が経営している商店の手伝いをして欲しい。
時間:夕方まで

――――――――――――――――――――

 基本的にエッセン町と比べて、私的な依頼より商会などからの依頼が9割を占めている。

 そのため、ケントのスキルが活かせるマッサージはなく、仲が良い二人でできる依頼を中心にプラナスは紹介していた。

 その中でプラナスは商会の依頼を勧めてきたのだ。

「多分ラルフくんにとってはキツイと思うわ。だけどここで認められれば少なからず影響が広まると思うの。それぐらい大きい商会だから頑張ってみなさい」

 言われた場所に向かうと温かく迎えてくれた。ただ、ステータスボートを見せるとラルフに対しての態度は変わった。

「ダメだ! 小僧はともかく獣人のお前は帰れ。俺のところの商品を奪われたり、客から文句が来ては困る」

 商会長の言うことは間違えではなかった。ラルフは改めて自身が犯した罪を間近に感じた。

「すみません、僕からもお願いします」

 せっかくの機会を失う訳にもいかないため、商店の店主に頭を下げた。

「一生懸命働きます。迷惑もかけません。 何か迷惑を掛けたらすぐに辞めさせても構わないのでよろしくお願いします」

 俺の姿を見たからなのかラルフも商会長に頭を下げた。店主はどこか困ったような表情で頭をかいている。

「そこの獣人は何かあったらすぐに冒険者ギルドに伝えるからな」

 店主は何度も頼み込むとついに依頼を受けることが出来た。

 働くのは日用品を中心に扱っていたお店だ。

 前世の記憶がある俺は基本的な敬語や商品の説明に問題はなかったが、問題なのはラルフだ。

 元々敬語を話したことがないため、簡単な敬語は使えるが言葉使いは曖昧だった。

 そもそも冒険者で敬語が使える人が少ないことから、そういう意味でも商会の依頼を勧めたのだろう。

 必死に説明を聞いているラルフの姿を見て、店主もラルフを裏方ではなく店に出すことにした。


「いらっしゃいませ。本日は何しに来ましたか?」

  男性が店内で何かを探していたため、ラルフは声をかけた。

「ああ、調理に使うフライパンを探しに来てな」

「フライパンはこちらにあります。付いてきてください」

 ラルフの接客に俺と店主はヒヤヒヤしながら見守っている。

「こちらのフライパンは熱が伝わりやすい素材で出来ています。素早く炒める時に使いやすいと思います」

 商品の説明になると接客は問題なく、店長の説明を一言一句間違えずに伝えていた。

 客はフライパンをレジに持ってくると何か店主に話していた。ラルフもそれを見ており内心はドキドキとしていただろう。

「ありがとうございます! また来てな!」

「ははは、やっぱり君面白いね」

 どうやらラルフに文句を言っていたわけではなかったらしい。

 その後も無事に営業時間を終えた。

「今日は助かったぞ。ラルフが何か仕出かすか分からなかったが商品説明はしっかり出来ていたな」
 
「ありがとうございます!」

 やはり今まで勉強する機会がなかったからなのか、ラルフの吸収スピードは早かった。

「これが依頼達成報告書とついでに明日の依頼も商会長に頼んで依頼を出しておくから、良かったらまた来てくれよ」

 店主に渡された依頼報告書を持ち、冒険者ギルドに戻ると再びプラナスに声をかけた。

 プラナスは依頼報告書を受け取ると笑顔だった。俺も見た時は嬉しいと思った。

 渡された依頼報告書にはこのように書かれていた。

――――――――――――――――――――

【F.商店販売の協力者募集】
募集人数:2人
報酬:銀貨5枚
内容:ある程度の知識が有る者や覚えが早い者を優先する。我々の商会が経営している商店の手伝いをして欲しい。
時間:夕方まで

店主コアトが二人の依頼達成を報告する。尚、この二人は今後も依頼を受けてもらうよう声をかけて頂けると助かる。

――――――――――――――――――――

 俺とラルフとの初めての依頼は無事に終えることができた。
しおりを挟む
感想 120

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

実家から追放されたが、狐耳の嫁がいるのでどうでも良い

竹桜
ファンタジー
 主人公は職業料理人が原因でアナリア侯爵家を追い出されてしまった。  追い出された後、3番目に大きい都市で働いていると主人公のことを番だという銀狐族の少女に出会った。  その少女と同棲した主人公はある日、頭を強く打ち、自身の前世を思い出した。  料理人の職を失い、軍隊に入ったら、軍団長まで登り詰めた記憶を。  それから主人公は軍団長という職業を得て、緑色の霧で体が構成された兵士達を呼び出すことが出来るようになった。  これは銀狐族の少女を守るために戦う男の物語だ。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

偏屈な辺境伯爵のメイドに転生しましたが、前世が秋葉原ナンバーワンメイドなので問題ありません

八星 こはく
恋愛
【愛されスキルで溺愛されてみせる!伯爵×ぽんこつメイドの身分差ラブ!】 「私の可愛さで、絶対ご主人様に溺愛させてみせるんだから!」 メイドカフェ激戦区・秋葉原で人気ナンバー1を誇っていた天才メイド・長谷川 咲 しかし、ある日目が覚めると、異世界で別人になっていた! しかも、貧乏な平民の少女・アリスに生まれ変わった咲は、『使用人も怯えて逃げ出す』と噂の伯爵・ランスロットへの奉公が決まっていたのだ。 使用人としてのスキルなんて咲にはない。 でも、メイドカフェで鍛え上げた『愛され力』ならある。 そう決意し、ランスロットへ仕え始めるのだった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...