【一巻3月中旬発売】NPCに転生したら、あらゆる仕事が天職でした~前世は病弱だったから、このVRMMO世界でやりたかったこと全部やる~

k-ing ★書籍発売中

文字の大きさ
上 下
139 / 151
第四章

139.NPC、町の噂に悩まされる

しおりを挟む
 洞窟を出た俺はすぐに町に向かっていく。

「ちゃちく、まもにょ!」

 突然出てきた魔物に弓矢を放とうとしたが、どこかへ向かって走っていった。

 あれは何かから逃げているのだろうか。

 それとも呼ばれているのかはわからない。

 ただ、倒さなくても良いなら楽だな。

 しばらくキシャを走らせると数日ぶりに帰ってきた。

 町は相変わらず賑やかで変わりない。

 変化があるとしたら、ユーマ達以外の勇者が数人いるようだ。

 そのほとんどが指導したやつらだな。

「ヴァイトさん、新しいお仕置きをお願いします」
「ぜひ、俺達を強くしてください!」
「早く上位職に転職したいんです」

「なんでもここにNPCカップリングがいるらしいよ」
「ヴァユマより?」
「もうとにかくイケメンらしいのよ」
「ぐふふ、ヴァイトのサンドウィッチね」

 俺に声をかける勇者もいれば、遠くからチラチラと見て女子会をする勇者もいる。

 ただ、どちらもギラギラした目で見ているから、すぐに気づいてしまう。

「ちゃちく、いちょがちいの!」

「やることがあるからすまないな」

「「「すみません!」」」

 頭をすぐに下げる勇者達。

 以前は勝手な行動ばかりして、町の人に迷惑をかけていたが、今はそんな素振りはない。

 ちゃんと教育した成果だろう。

「おみちぇにきてね!」

「お店ですか?」

 そういえば、勇者達にこの町で働いていることを教えていなかったな。

 知っているのはユーマ達だけだ。

「この先で友達と働いているから、ぜひ来てくれ」

「「「はい!」」」

 本当に同じやつらなのかと思うほど素直だな。

 一応近くにいる女性勇者にも手を振っておいた。

「ぎゅふふふふふ」
「じゅるるるるる」
「あそこでサンドウィッチ……」

 やっぱり勇者は変わっているやつが多いな。


 俺は店には顔を出さずに、そのまま商業ギルドに向かった。

 この町の冒険者ギルドには通っていたが、商業ギルドには一度来てから顔を出していない。

 商業ギルドに入ると、なぜか視線が集まってくる。

 俺がいない間に何があったのだろうか。

「おい、あいつって話題のやつじゃないか?」
「なんだっけ……」
「「鬼畜!」」

「ちゃちく!」

「おっ……おう」
「ちゃちくだな」

 耳の良いヴァイルは何かを伝えているようだ。

 きっとお店の宣伝でもしているのだろう。

 三兄弟のお店が好きだからな。

「ちゃちく! ちゃちく!」

 ヴァイルはその後もみんなに何か宣伝しているようだ。

 俺は優しく頭を撫でると、嬉しそうにもふもふの尻尾を振っていた。

 肩車をしているため、たまに視界の邪魔になっているが、可愛い弟の尻尾だから気にならない。

 むしろもふもふして癒される。

 受付を見つけた俺はキシャの装備が作れる工房がないか確認することにした。

「魔物に取り付ける椅子を作りたいんだが……」

「魔物に……取り付ける椅子?」

 受付をしてる商業ギルドの職員は首を傾げていた。

 俺は間違ったことを言っているつもりはない。

 ただ、ずっと説明しているのに、どうにも伝わらないようだ。

「工房を借りられたら――」

「工房ですか? それなら直接工房を持っている人と交渉が必要になりますね」

 どうやら商業ギルド管轄の工房はなく、直接借りる必要があるらしい。

 その辺はどこの町も同じようだ。

「あのー、工房を――」
「ああ、今は難しいな」

「工房を――」
「すまない。弟子達でいっぱいなんだ」

 誰かに声をかけようとしても、逃げられるか工房がいっぱいだと断られてしまう。
 
 きっとボギーやブギーのように、関係を深める必要があるのだろう。

「ちゃちく、おなかちゅいたよ?」

「まだお昼を食べていないもんな」

 朝から町に向かったが、時計を見るとすでにお昼を過ぎていた。

 ちょうどお店も暇になったころだろう。

 一度グスタフ達に相談することにした。

「おい、あいつがカミィー銀行を乗っ取ったやつだろ?」
「いや、俺はヤミィー金庫のボスだって聞いてるぜ?」
「はぁん? 俺は魔王だって聞いてるぜ?」
「「……」」

「どちらにしろ――」
「「「店を守らないといけないな!」」」

「ちゃちく、いいこいいこ!」

 なぜか商業ギルドを出てからも、俺はヴァイルに頭を撫でられていた。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

処理中です...