【一巻3月中旬発売】NPCに転生したら、あらゆる仕事が天職でした~前世は病弱だったから、このVRMMO世界でやりたかったこと全部やる~

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第四章

138.NPC、友情の印を渡す ※一部ダンマス視点

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「「「ウギャアアアアアアア」」」

 何度も聖職者スキルを発動させるが、中々幽霊はあの世にいかないようだ。

「うへへ、もういっかああああああい!」

 むしろあの世に行くどころか喜んでいる気がする。

 いや、すでにあの世に行っているから幽霊なのか。

「もう光はやめてくれ……」
「オレ様死んじまう……」

 一方、ゴブリンとコボルトの方があの世に行きそうになっていた。

 ヴァイル達はちゃんと目を閉じているのに、それに気づかないってあいつら頭が弱いのだろう。

「もう終わり? 激しいのやらないの?」

 ただ、幼女が俺にべったりとして離れようとしない。

 どこに好かれる要素があったのだろうか。

「さすがだ……」
「あのマスターを手懐けているとは……」

 なぜかゴブリンとコボルトからも期待の眼差しを向けられている。

 まだ躾が足りないのだろうか。

「もっとやってほしいのか?」

「はいっ!」
「「やだぁ!」」

 まさか別の答えが返ってくるとは思わなかった。

 露骨に悲しそうな表情をされたら、躾はできないだろう。

 可哀想に見えた俺はスキルを使うのをやめた。

「そういえば、矢を投げたのはお前か?」

「はいっ! 私がやりました!」

 幼女は嬉しそうに答えていた。

 やはりこいつは幽霊で間違いないようだ。

 ただ、遠いところでポルターガイストができるほど有能な幽霊なんだろう。

「お祓いもできないならここにいる意味ないな。帰るぞ」

 俺はヴァイルに声をかけようとするが、再び服を誰かに引っ張られているような気がした。

「もう帰るの?」

 帰ってほしくないのか、幼女が必死に引っ張っていた。

 たしか力を誇示しないと友達ができないって言っていたか。

「ふふふ」

 俺も負けた時と引っ張り返すと、楽しそうに笑っていた。

「そんなに友達が欲しかったのか?」

「うん!」

 幼女は嬉しそうに俺を見つめている。

 ただ、幽霊と友達になりたいとも思わないからな。

 それにスカート丈が短いセーラー服に鞭を持った友達なんて誰にも紹介できない。

 俺も危ないやつだとは思われたくない。

「まずその見た目からどうにかしてくれ」

「男の娘がセーラー服着てたらダメなの?」

 ん?

 今明らかに変な言葉を聞いた気がするぞ。

「もう一度言ってもらってもいいか?」

「男のがセーラー服を着てたら――」

「ダメだな!」

 まさか幼女じゃなくて、少年だとは誰も思わないだろう。

 余計にヴァイルに関わらせたらダメな気がする。

「だってこっちの方が友達ができるって聞いたもん!」

 その格好でできた友達って完全に危ないやつだろう。

 そんなことを教えたのはきっと変態だ。

「着替えたら友達になってやる」

「本当!? なら次までに着替えておくよ!」

 これでヴァイルに対して悪影響は少ないはずだ。

 スライムと楽しそうに遊んでいるところを見ると、ここでお別れも可哀想だからな。

 弟のために幽霊であっても関係は良好な方が良い。

 それにここの魔物は理性があって、しっかり話ができる。

 魔物が知ってて、俺の知らない職業もありそうだ。

「じゃあ、俺達は帰るぞ」

「えー! 友達になったらずっと一緒にいるって聞いたよ? マブタチってやつでしょ?」

 やっぱりこいつは浄化しないといけないのだろうか。

 ずっと俺を放そうとしない。

 このままだと帰るのが遅くなって、チェリーに怒られるかもしれない。

「マブタチは心で繋がってるんだ」

「繋がってる……」

 とりあえず適当に説明することにした。

 マブタチってそもそもなんだ?

 まぶたってそんなに種類があるのだろうか。

「じゃあ、何か証拠をちょうだい!」

「証拠……」

 俺はポケットに何かないか取り出す。

 今持っているのは魔物を呼ぶ笛だけだ。

 あとは戦いに使う装備しかないからな。

「友情の印! 友達ならまた来てくれるもんね!」

 どうやら笛が欲しかったらしい。

 必要になったらまた取りに行けばいいか。

「ヴァイル、町に行くぞ」

「うん! しゅらいむまたねー!」

 俺はヴァイルとともに三兄弟のいる町に向かうことにした。


 ♢

 私にやっと友達ができた。

 友達が欲しくてすでに300年は経っているだろう。

 その間にできたのは友達ごっこに付き合ってくれる部下達だけだ。

「マスター嬉しそうだな」
「あれでオレ様達の仕事が減るな」

 いつも一緒にいる部下から見ても、私が嬉しそうにしていることがわかるようだ。

 それだけこのダンジョンに人が来て、友達ができるのを待っていた。

――友情の印

 それは親友、いやマブダチと認めた物に預けるアイテムだ。

 それがあるだけで、どれだけ会えなくても繋がっている気がする。

 あいつも繋がっていると言っていたからな。

 私は嬉しくなって笛を咥える。

――ピヨーン! ピヨピヨ!

「ふふふ、変わった音がするね」

 思ったよりも変わった音色が笛から聞こえてきた。

 まるで私達の友情を祝福しているようだ。

――ピヨーン! ピヨピヨ!

 何度も吹いても同じ音色がする。

「なんかダンジョンが騒がしくないか?」
「侵入者でも来たのか?」

 ごぶたんとこぼたんはダンジョン内にあるカメラを通して、モニターに映るダンジョンの様子を見ていた。

「マスター、侵入者です!」
「大量の魔物が押し寄せてきています!」

 これは私達の友情を邪魔しようとしているのだろう。

 魔物も倒せばダンジョンの経験値になる。

 みんなの訓練もダンジョンの中でできるからお得だ。

 あの人が来るまでにダンジョンを立派にしておかないとね。

「そういえば名前を聞いてなかったな……」

 私はあの人が再び訪れるまで、何度も友情の印である笛を吹き続けた。

――ピヨーン! ピヨピヨ!
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