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第三章 新しい仲間達
117.NPC、人に教える
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店に戻るとさっそく店主達に相談してみた。
思ったよりも悩むことなく、快く受け入れてくれた。
人手不足なのを痛感しているのだろう。
いつまでも俺達がこの場所にいられるわけでもないしね。
仕事に慣れるまではお試し期間だが、しっかり働けるようになったら賃金も出してもらえるらしい。
「夜の準備までに何を教えようか」
何を手伝ってもらおうかと考えてはいるが、二人がどこまでできるのかわからない。
ルーに関してはヴァイルと一緒にお水配りがちょうど良いが、問題はベンになる。
「なんでもやります!」
本人のやる気はすごいあるが、俺が教えると潰しかねないからな。
以前チェリーに教えたときには、次に何かを教える機会があったら相手に合わせるようにと言われた。
人によって覚える速度もできる速さも違うからな。
配慮できる人こそブラック企業のパワハラ上司ってやつだろう。
「文字は書けたり読めたりできるか?」
俺の言葉にベンは困ったような顔をしていた。
文字の読み書きは教えてもらわないと覚えられないから仕方ない。
きっと計算とかもできないだろう。
「魔石に魔力を――」
「すみません」
どうやらベンにできるのはユーマと同じ皿洗いになりそうだ。
ユーマは嬉しそうに手招きをしていた。
ひょっとしたら、自分の仕事が減ると思っていないか?
積極的にあいつの洗い場に持って行こう。
「いや、これからは俺が教えてあげるから気にしなくていいぞ。だって俺はブラック企業のパワハラ上司だからな」
少しずつ教えればベンも仕事を覚えるだろう。
それに早く覚えたら、それだけ生活が楽になるのを保証されている。
「なんか変な勘違いしているけど、ユーマ変なこと言った?」
「なんで俺のせいにするんだよ!」
「だってあんたしかいないでしょ!」
近くでユーマ達も何を教えようか考えているのだろう。
みんなベンやルーのことを考えている。
頼れる人がいる時は頼った方が良いからな。
「まずは……直接やってみた方がはやいか」
俺はヴァイルを呼んでお客さん役をしてもらうことにした。
「ご注文はなににしますか?」
「んー、おちゅちちぇっと!」
「お寿司セットですね」
注文を聞いたら紙にメモして、そのまま支払いに誘導する。
「確かにお預かりしました。お寿司セット一人前入りました」
お金の支払いが終わったら、キッチンにいる店主に声をかければ注文は終わりだ。
「魔石が光ったら取りにきてくださいね」
そして魔石を渡して、対になった魔石とメモを順番に並べていく。
「お寿司セットできたぞ!」
あとは順番通りに魔石に魔力を流して、魔石と交換して終わりだ。
作業に2から3人いれば、営業はどうにかなるだろう。
「あとは奥で皿洗いぐらいだな」
一通り説明している時もベンは真剣な顔で聞いていた。
きっと彼ならすぐに覚えることができるだろう。
そしたら少し生活が楽になるかもしれない。
おせっかいだとは知っているが、こういうのも悪くないな。
「じゃあ、店を開けるぞ」
「新人達も元気にあいさつしろよ!」
「「はーい!」」
ヴァイルとルーは大きく手を挙げていた。
この中で一番楽しんでいるのはヴァイルとルーなのかもしれないな。
お店を開店するといつものようにお客さん達が入ってくる。
夜の営業は仕事帰りに寄れるように、仕事終わりの時間帯と同じ時間で開店する。
「いらっちゃいまちぇー」
「えっと……ちゅーもんはあっちです」
「おっ、今日は二人いるのか?」
「おともだちのるーだよ!」
ヴァイルはしっかりとルーの紹介をしていた。
弟の成長に再び泣きそうになる。
「可愛いお友達ができたのね」
ヴァイルとルーはお客さんの手を取りカウンターに案内する。
案内された夫婦も笑顔で楽しんでいる。
一部ではヴァイルの可愛さに通うお客さんもいるぐらいだからな。
「お仕事頑張ってね!」
「ありあと!」
「やったね!」
ヴァイルとルーは小さなお菓子をもらっていた。
二人は大事そうにポケットに入れて、次のお客さんの元へ向かう。
年齢層が大人からお年寄りまでいるから、子どもや孫を見に来ている気分なんだろう。
「ご注文何にしますか?」
「和食おすすめにしようかな」
「私は洋食おすすめにするわ」
「和食、洋食一つずつおすすめ入ります」
ベンに説明した通りに次々と注文が入っていく。
片付けるものがない今もベンは俺の隣でその光景をずっと見ていた。
本当に熱心な子だからこそ、俺も協力したいと思うのだろう。
――ピロン!
突然、HUDシステムが反応した。
【転職クエスト】
職業 教職者
10回指導して知識を与える 0/10
合成 保育士+聖職者 どちらも50レベル必要
報酬 教職者に転職
今まで教えてもらうことを前提にHUDシステムが反応していた。
ただ、今回は自発的に転職クエストが出てきた。
心の変化に反応したのだろうか。
ひょっとしたら何かきっかけがあれば転職ができるのかもしれない。
俺はせっかくだからと、教職者の転職クエストを引き受けることにした。
職業の恩恵があるかもしれないからな。
これもベンのためになるなら――。
「おい、お前達! 何勝手に働いているんだ!」
突然、扉が開くとボロボロの皮の鎧に包まれた男が店内に入ってきた。
少し汗臭さが気になるが、働き終えたばかりだろう。
「兄ちゃん!」
近くにいたルーの手に取ると、そのままこっちに向かってくる。
どうやら二人と兄のようだ。
「弟達が迷惑をかけた。ベン帰るぞ!」
ベンの手を掴んで店の外に出ようとする。
「いやだ! ぼくもはたらくもん」
「兄さん、放して!」
だが、二人とも必死に抵抗しようとする。
いつのまにかお客さんの注目はこっちに集まっていた。
「俺が働くからお前達は安全な家にいろ!」
怒鳴り声に店内の空気が張り詰める。
営業中にあいつらは何をやっているのだろうか。
俺はすぐに来たばかりの兄の服を掴む。
「なんだ!?」
「従業員に迷惑をかけるやつは帰れ!」
俺はそのまま外に放り投げた。
ブラック企業のパワハラ上司は従業員を守るのも仕事だからな。
思ったよりも悩むことなく、快く受け入れてくれた。
人手不足なのを痛感しているのだろう。
いつまでも俺達がこの場所にいられるわけでもないしね。
仕事に慣れるまではお試し期間だが、しっかり働けるようになったら賃金も出してもらえるらしい。
「夜の準備までに何を教えようか」
何を手伝ってもらおうかと考えてはいるが、二人がどこまでできるのかわからない。
ルーに関してはヴァイルと一緒にお水配りがちょうど良いが、問題はベンになる。
「なんでもやります!」
本人のやる気はすごいあるが、俺が教えると潰しかねないからな。
以前チェリーに教えたときには、次に何かを教える機会があったら相手に合わせるようにと言われた。
人によって覚える速度もできる速さも違うからな。
配慮できる人こそブラック企業のパワハラ上司ってやつだろう。
「文字は書けたり読めたりできるか?」
俺の言葉にベンは困ったような顔をしていた。
文字の読み書きは教えてもらわないと覚えられないから仕方ない。
きっと計算とかもできないだろう。
「魔石に魔力を――」
「すみません」
どうやらベンにできるのはユーマと同じ皿洗いになりそうだ。
ユーマは嬉しそうに手招きをしていた。
ひょっとしたら、自分の仕事が減ると思っていないか?
積極的にあいつの洗い場に持って行こう。
「いや、これからは俺が教えてあげるから気にしなくていいぞ。だって俺はブラック企業のパワハラ上司だからな」
少しずつ教えればベンも仕事を覚えるだろう。
それに早く覚えたら、それだけ生活が楽になるのを保証されている。
「なんか変な勘違いしているけど、ユーマ変なこと言った?」
「なんで俺のせいにするんだよ!」
「だってあんたしかいないでしょ!」
近くでユーマ達も何を教えようか考えているのだろう。
みんなベンやルーのことを考えている。
頼れる人がいる時は頼った方が良いからな。
「まずは……直接やってみた方がはやいか」
俺はヴァイルを呼んでお客さん役をしてもらうことにした。
「ご注文はなににしますか?」
「んー、おちゅちちぇっと!」
「お寿司セットですね」
注文を聞いたら紙にメモして、そのまま支払いに誘導する。
「確かにお預かりしました。お寿司セット一人前入りました」
お金の支払いが終わったら、キッチンにいる店主に声をかければ注文は終わりだ。
「魔石が光ったら取りにきてくださいね」
そして魔石を渡して、対になった魔石とメモを順番に並べていく。
「お寿司セットできたぞ!」
あとは順番通りに魔石に魔力を流して、魔石と交換して終わりだ。
作業に2から3人いれば、営業はどうにかなるだろう。
「あとは奥で皿洗いぐらいだな」
一通り説明している時もベンは真剣な顔で聞いていた。
きっと彼ならすぐに覚えることができるだろう。
そしたら少し生活が楽になるかもしれない。
おせっかいだとは知っているが、こういうのも悪くないな。
「じゃあ、店を開けるぞ」
「新人達も元気にあいさつしろよ!」
「「はーい!」」
ヴァイルとルーは大きく手を挙げていた。
この中で一番楽しんでいるのはヴァイルとルーなのかもしれないな。
お店を開店するといつものようにお客さん達が入ってくる。
夜の営業は仕事帰りに寄れるように、仕事終わりの時間帯と同じ時間で開店する。
「いらっちゃいまちぇー」
「えっと……ちゅーもんはあっちです」
「おっ、今日は二人いるのか?」
「おともだちのるーだよ!」
ヴァイルはしっかりとルーの紹介をしていた。
弟の成長に再び泣きそうになる。
「可愛いお友達ができたのね」
ヴァイルとルーはお客さんの手を取りカウンターに案内する。
案内された夫婦も笑顔で楽しんでいる。
一部ではヴァイルの可愛さに通うお客さんもいるぐらいだからな。
「お仕事頑張ってね!」
「ありあと!」
「やったね!」
ヴァイルとルーは小さなお菓子をもらっていた。
二人は大事そうにポケットに入れて、次のお客さんの元へ向かう。
年齢層が大人からお年寄りまでいるから、子どもや孫を見に来ている気分なんだろう。
「ご注文何にしますか?」
「和食おすすめにしようかな」
「私は洋食おすすめにするわ」
「和食、洋食一つずつおすすめ入ります」
ベンに説明した通りに次々と注文が入っていく。
片付けるものがない今もベンは俺の隣でその光景をずっと見ていた。
本当に熱心な子だからこそ、俺も協力したいと思うのだろう。
――ピロン!
突然、HUDシステムが反応した。
【転職クエスト】
職業 教職者
10回指導して知識を与える 0/10
合成 保育士+聖職者 どちらも50レベル必要
報酬 教職者に転職
今まで教えてもらうことを前提にHUDシステムが反応していた。
ただ、今回は自発的に転職クエストが出てきた。
心の変化に反応したのだろうか。
ひょっとしたら何かきっかけがあれば転職ができるのかもしれない。
俺はせっかくだからと、教職者の転職クエストを引き受けることにした。
職業の恩恵があるかもしれないからな。
これもベンのためになるなら――。
「おい、お前達! 何勝手に働いているんだ!」
突然、扉が開くとボロボロの皮の鎧に包まれた男が店内に入ってきた。
少し汗臭さが気になるが、働き終えたばかりだろう。
「兄ちゃん!」
近くにいたルーの手に取ると、そのままこっちに向かってくる。
どうやら二人と兄のようだ。
「弟達が迷惑をかけた。ベン帰るぞ!」
ベンの手を掴んで店の外に出ようとする。
「いやだ! ぼくもはたらくもん」
「兄さん、放して!」
だが、二人とも必死に抵抗しようとする。
いつのまにかお客さんの注目はこっちに集まっていた。
「俺が働くからお前達は安全な家にいろ!」
怒鳴り声に店内の空気が張り詰める。
営業中にあいつらは何をやっているのだろうか。
俺はすぐに来たばかりの兄の服を掴む。
「なんだ!?」
「従業員に迷惑をかけるやつは帰れ!」
俺はそのまま外に放り投げた。
ブラック企業のパワハラ上司は従業員を守るのも仕事だからな。
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