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第三章 新しい仲間達
115.NPC、弟の成長に喜ぶ
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「なあなあ、あいつら全く言うことを聞かないんだけどどうしたらいい?」
「冒険者ですか?」
「ああ」
相談される相手を手に入れた俺は今日も働きながら、相談されていた。
毎日疲れた顔をしてやってくる男は、どうやら冒険者ギルドのギルドマスターをしているらしい。
血気盛んな冒険者に無理をするなと言っても、聞く耳も持たないことに悩んでいるようだ。
冒険者って痛い目に遭わないと気付かないことが多いから仕方ない。
「上司の命令は絶対だ! って言ってみたらどうですか? 言っていることも間違いではないから大丈夫じゃないか?」
「んー、一回それでやってみるか……。また何かあったら顔を出す」
そう言って、食べ終わった皿をユーマに渡して帰って行く。
悩みが解決したのか、笑顔で帰っていくお客さんの顔を見ると俺も嬉しくなる。
「ヴァイトってブラック企業のパワハラ上司みたいだな」
隣で聞いていたユーマは俺の知らない言葉を並べていく。
ブラック企業のパワハラ上司?
きっと悪役のようなかっこいい上司のことを言っているのだろう。
悪役って仲間思いだもんな。
「さぁ、お前の仕事もたくさんあるぞー」
俺は食べ終わって山になっている皿を指さして微笑む。
今まで暇そうにしていたから、仕事が増えてよかったな。
「やっぱりブラック企業のパワハラ上司だああああああ!」
ユーマの声がお客さんのいない店内に響く。
あれからお客さんが増えて、冒険者ギルド関係や商業街からも人が増えてきた。
そのほとんどが仕事の合間に短時間で食事を済ませたい人が多い。
食事ぐらいゆっくりすれば良いのに、中々そうもいかないようだ。
時間を有効活用するのって大事だからなんとも言えないな。
「ちょっと日課をこなしてきます」
「それならお弁当を持っていけ!」
グスタフはすぐに何かを作ると、俺に渡してきた。
まだ、お昼ご飯も食べていなかったからな。
俺は体が鈍らないように休憩時間にトレーニングをしている。
トレーニングって言ってもデイリークエストに似たようなものだ。
職業レベルが上がらなくなってから、デイリークエストは出現しなくなった。
ただ、いつか出現したときに体が忘れないように日課として続けている。
いつものようにヴァイルを肩車して、町の屋根を跳び越えていく。
背の高い建物が多い影響か、前よりも移動しづらい。
きっとそれも良いトレーニングになっている気がする。
「ちゃちく、あしょこにいく!」
「よし、任せておけ!」
ヴァイルが行きたいところを目指して、俺は建物に移っていく。
「ひひひ、ちゃかいね!」
高いところが好きなのか下を見て喜んでいる。
しばらくは屋根の上で風を感じるのも良さそうだ。
俺は鞄からお弁当箱を取り出して、ヴァイルと遅めのお昼休憩をすることにした。
人に見つからないように動くのも斥候として必要な技術だ。
いつか高い建物に侵入するときに、高いところが怖かったら話にならないからな。
「ちゃちく、きょうはなに?」
「オムライス弁当かな」
「やったあー!」
ヴァイルは屋根の上で喜んでいた。
高いところは嫌いではないが、こんなに無邪気にいられるなら斥候としての才能があるようだ。
「にいちゃん、ぼくもあそこにいきたいなー」
「さすがに無理だよ!」
下から声がすると思ったら、町の人に見られていたようだ。
ヴァイルとそこまで見た目が変わらない子と少し大きな少年が興味津々に見ていた。
「ちゃちく、どうちたの?」
「あー、なんかここに登りたそうな子がいてさ」
「いっちょにあしょぶ?」
「ヴァイルが良いなら連れてくるぞ?」
「うん! いっちょにあしょぶ」
ヴァイルには歳が近い友達がいない。
いるのは俺達か精霊のオジサンぐらいだ。
ヴァイルには良い経験になるかもしれないな。
俺は建物から降りると二人に声をかける。
「上に登るか?」
「「うわぁ!?」」
ちゃんと前から声をかけたのに、驚かせてしまったようだ。
「いいの?」
「いいんですか?」
それでも興味の方が勝っていた。
どうやら本当に建物の上に登ってみたかったらしい。
俺は二人を抱えると、足に力を入れて大きく跳び上がる。
「「うわー!」」
二人は初めて建物の上に登り、楽しそうに目を輝かせている。
「にいちゃん、すごいね!」
「ああ、遠くまで見えるね」
滅多に町を見渡すことがないため、彼らにとっては新鮮な光景だろう。
それに子どもだからか高いところも怖くなさそうだ。
そんな二人を横目に俺とヴァイルはオムライスを食べようとしたら、お腹が鳴る音が聞こえてきた。
二人ともよだれを垂らしてこっちを見ている。
「にいちゃん、おなかへった」
「よせ、今日は何も食べるものがないだろ」
「うん……」
必死によだれを拭いてはいるが、お弁当が気になるのだろう。
確かに二人とも服がボロボロだし、痩せこけているように見えた。
まるで生まれ変わったばかりの俺を見ているようだ。
「俺のお弁当食べるか?」
「いや、迷惑をかけるのは――」
「たべる!」
小さな少年はお兄ちゃんを推し退けるように近づいてきた。
お弁当を渡すと、ガツガツと勢いよく口の中にオムライスを入れていく。
「うっ……おいしいよ……」
目からはポロポロと涙が出てきていた。
よほどお腹が空いていたのだろう。
グスタフが作るオムライスは、いつ食べても美味しいからな。
「ちゃちく、オラのもあげりゅよ!」
ヴァイルは食べかけのお弁当をお兄ちゃんに渡そうと手を伸ばした。
「いや、僕より小さい子からもらうには――」
「いいの! オラはおにゃかいっぱい!」
お腹を出してポンポンと叩いていた。
まだ一口しか食べていないから、お腹は空いているはずだ。
それでも他の人を気にすることができるようになった姿に俺は涙しそうになる。
ヴァイルもいつのまにか大きくなったんだね。
その後も泣きながらお弁当を食べる二人を俺とヴァイルは見つめていた。
「冒険者ですか?」
「ああ」
相談される相手を手に入れた俺は今日も働きながら、相談されていた。
毎日疲れた顔をしてやってくる男は、どうやら冒険者ギルドのギルドマスターをしているらしい。
血気盛んな冒険者に無理をするなと言っても、聞く耳も持たないことに悩んでいるようだ。
冒険者って痛い目に遭わないと気付かないことが多いから仕方ない。
「上司の命令は絶対だ! って言ってみたらどうですか? 言っていることも間違いではないから大丈夫じゃないか?」
「んー、一回それでやってみるか……。また何かあったら顔を出す」
そう言って、食べ終わった皿をユーマに渡して帰って行く。
悩みが解決したのか、笑顔で帰っていくお客さんの顔を見ると俺も嬉しくなる。
「ヴァイトってブラック企業のパワハラ上司みたいだな」
隣で聞いていたユーマは俺の知らない言葉を並べていく。
ブラック企業のパワハラ上司?
きっと悪役のようなかっこいい上司のことを言っているのだろう。
悪役って仲間思いだもんな。
「さぁ、お前の仕事もたくさんあるぞー」
俺は食べ終わって山になっている皿を指さして微笑む。
今まで暇そうにしていたから、仕事が増えてよかったな。
「やっぱりブラック企業のパワハラ上司だああああああ!」
ユーマの声がお客さんのいない店内に響く。
あれからお客さんが増えて、冒険者ギルド関係や商業街からも人が増えてきた。
そのほとんどが仕事の合間に短時間で食事を済ませたい人が多い。
食事ぐらいゆっくりすれば良いのに、中々そうもいかないようだ。
時間を有効活用するのって大事だからなんとも言えないな。
「ちょっと日課をこなしてきます」
「それならお弁当を持っていけ!」
グスタフはすぐに何かを作ると、俺に渡してきた。
まだ、お昼ご飯も食べていなかったからな。
俺は体が鈍らないように休憩時間にトレーニングをしている。
トレーニングって言ってもデイリークエストに似たようなものだ。
職業レベルが上がらなくなってから、デイリークエストは出現しなくなった。
ただ、いつか出現したときに体が忘れないように日課として続けている。
いつものようにヴァイルを肩車して、町の屋根を跳び越えていく。
背の高い建物が多い影響か、前よりも移動しづらい。
きっとそれも良いトレーニングになっている気がする。
「ちゃちく、あしょこにいく!」
「よし、任せておけ!」
ヴァイルが行きたいところを目指して、俺は建物に移っていく。
「ひひひ、ちゃかいね!」
高いところが好きなのか下を見て喜んでいる。
しばらくは屋根の上で風を感じるのも良さそうだ。
俺は鞄からお弁当箱を取り出して、ヴァイルと遅めのお昼休憩をすることにした。
人に見つからないように動くのも斥候として必要な技術だ。
いつか高い建物に侵入するときに、高いところが怖かったら話にならないからな。
「ちゃちく、きょうはなに?」
「オムライス弁当かな」
「やったあー!」
ヴァイルは屋根の上で喜んでいた。
高いところは嫌いではないが、こんなに無邪気にいられるなら斥候としての才能があるようだ。
「にいちゃん、ぼくもあそこにいきたいなー」
「さすがに無理だよ!」
下から声がすると思ったら、町の人に見られていたようだ。
ヴァイルとそこまで見た目が変わらない子と少し大きな少年が興味津々に見ていた。
「ちゃちく、どうちたの?」
「あー、なんかここに登りたそうな子がいてさ」
「いっちょにあしょぶ?」
「ヴァイルが良いなら連れてくるぞ?」
「うん! いっちょにあしょぶ」
ヴァイルには歳が近い友達がいない。
いるのは俺達か精霊のオジサンぐらいだ。
ヴァイルには良い経験になるかもしれないな。
俺は建物から降りると二人に声をかける。
「上に登るか?」
「「うわぁ!?」」
ちゃんと前から声をかけたのに、驚かせてしまったようだ。
「いいの?」
「いいんですか?」
それでも興味の方が勝っていた。
どうやら本当に建物の上に登ってみたかったらしい。
俺は二人を抱えると、足に力を入れて大きく跳び上がる。
「「うわー!」」
二人は初めて建物の上に登り、楽しそうに目を輝かせている。
「にいちゃん、すごいね!」
「ああ、遠くまで見えるね」
滅多に町を見渡すことがないため、彼らにとっては新鮮な光景だろう。
それに子どもだからか高いところも怖くなさそうだ。
そんな二人を横目に俺とヴァイルはオムライスを食べようとしたら、お腹が鳴る音が聞こえてきた。
二人ともよだれを垂らしてこっちを見ている。
「にいちゃん、おなかへった」
「よせ、今日は何も食べるものがないだろ」
「うん……」
必死によだれを拭いてはいるが、お弁当が気になるのだろう。
確かに二人とも服がボロボロだし、痩せこけているように見えた。
まるで生まれ変わったばかりの俺を見ているようだ。
「俺のお弁当食べるか?」
「いや、迷惑をかけるのは――」
「たべる!」
小さな少年はお兄ちゃんを推し退けるように近づいてきた。
お弁当を渡すと、ガツガツと勢いよく口の中にオムライスを入れていく。
「うっ……おいしいよ……」
目からはポロポロと涙が出てきていた。
よほどお腹が空いていたのだろう。
グスタフが作るオムライスは、いつ食べても美味しいからな。
「ちゃちく、オラのもあげりゅよ!」
ヴァイルは食べかけのお弁当をお兄ちゃんに渡そうと手を伸ばした。
「いや、僕より小さい子からもらうには――」
「いいの! オラはおにゃかいっぱい!」
お腹を出してポンポンと叩いていた。
まだ一口しか食べていないから、お腹は空いているはずだ。
それでも他の人を気にすることができるようになった姿に俺は涙しそうになる。
ヴァイルもいつのまにか大きくなったんだね。
その後も泣きながらお弁当を食べる二人を俺とヴァイルは見つめていた。
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