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第三章 新しい仲間達
111.NPC、訓練が必要
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「今日はいい天気だな!」
「ああ」
「朝から元気ないぞー?」
「お前のテンションが高いんだよ!」
俺はユーマの尻を軽く蹴る。
「うっ……」
本当に軽く蹴っただけだ。
昨日カンチョーしたら相当痛がっていたからな。
「今日はよろしくお願いします」
「ふふふ、朝から良い絵が撮れた」
遅れてアルとラブもやってきた。
翌日、俺達は朝早くから町の入り口に集まっていた。
昨日話し合っていたユーマ達の戦闘経験訓練及び魔石の回収を行うためだ。
買い出しは店主達がするため、営業開始とともに帰ってこれば問題ないらしい。
「時間的には5時間近くはあるか」
「ひょっとして5時間もやるのか?」
どこか三人とも顔が引き攣っていた。
さっきまでのテンションの高さはどこに消えたのだろうか。
「嫌ならやめるぞ?」
「いや、やらせてもらいます! なぁ?」
「うっ……うん」
「そうね……」
アルとラブに関してはどこか雲行きが怪しい。
このままだと訓練にはならなさそうだけど、危ないと思ったら俺が倒せば問題ない。
門番に挨拶を済ませ、外に出て少し歩くとユーマ達は武器を構えた。
「よし、行くぞー!」
――ピヨーン! ピヨピヨ!
鳥のような鳴き声が周囲に響く。
「相変わらず力が抜ける笛の音だよな」
「なんでこれで魔物が集まってくるんだろうね」
「獲物だって勘違いしているんじゃないか?」
早速言ったそばから魔物が集まってきた。
『キキキ……キシャアアアアアアア!』
「ちゃちく、きちゃがきたよ?」
「あっ、忘れてたな」
先頭にはキシャが走っており、その後ろに魔物の大群が押し寄せてきた。
いつもは嬉しそうに笑っているキシャだが、泣き叫んでいる。
「たのちちょうだね」
「鬼ごっこしてるみたいだもんな。参加する?」
「んー、どうちようね?」
「いやいや、そこは止めろよ!」
ヴァイルと鬼ごっこをしようとしたら、ユーマに止められた。
バカなユーマに止められて、少し複雑な気持ちになるが一発叩いておけば良いだろう。
それともチョップにするか迷うところだな。
「痛っ!? 急に何するんだよ!」
「気合いを入れろよ」
「おっ、おう! バフもサンキュー」
さすがに訓練前に意識を刈り取ったら意味ないから、軽く張り手をしておいた。
ついでに聖職者の力で痛みを和らげたが、ステータスに補正がついたようだ。
「じゃあ、頑張れよ」
俺は近づいてくるキシャに飛び乗ろうと足に力を入れる。
「ちょっと待った!」
「ちょっと待って!」
だが、アルとラブに止められてしまった。
「どうしたんだ?」
「私達じゃ一匹も倒せないからね?」
「そのためにヴァイトに頼んだよ」
「あっ……そうなのか?」
何も気づいてないユーマに二人はため息を吐いていた。
「バカから何も聞いてないのね」
今日のことについて話し合う時には、二人は宿屋を探すためにその場にいなかった。
二人はユーマがちゃんと俺に話したと思ったのだろう。
完全に役割ミスをしたな。
「私達のレベルじゃ訓練にもならないのよ。即死よ! 即死!」
「いくらヴァイトが準備してくれた装備でも元が弱いからね」
ユーマ達は俺が実験で作った武器や防具を纏っている。
それでも勝てないなら相当訓練が必要なんだろう。
『キシヤアアアアァァァァー!』
気づいた時にはキシャが泣きながら擦り寄ってきた。
近寄りすぎて押しつぶされそうだ。
「ちょっと、近い近い! これじゃあ、戦えないだろ!」
『キシャ……キシャアアアアアアア!』
まるで大型犬のように擦り寄ってくる。
大型ムカデでも、この周囲の魔物は怖かったのだろう。
町に入るときも体を擬態させていたしな。
俺はそのままキシャの頭によじ登り弓を構える。
「手足を吹っ飛ばすぐらいでいいか?」
ユーマ達は頷いていた。
正直どこまで弱らせたら、訓練になるのかはわからない。
とりあえず魔物の足に向かって矢を放つ。
――シュ!
ちなみに今回はちゃんと普通の矢を使っている。
あまりに強く放つと吹き飛びかねないし、槍の形をした矢はどうしても周囲をめちゃくちゃにする。
――ドガーン!
矢は魔物に触れるとそのまま破裂した。
俺達は唖然としてしまった。
何が起こったのか俺もわからない。
普段ならあれぐらいの力であれば、手足が吹っ飛ぶぐらいだ。
それにこの辺の魔物は強いとさっき聞いたから大丈夫だと思った。
だが、全くそうではなかったようだ。
「もう一回やってみるな」
――シュ!
もう一度魔物に向かって矢を放つ。
勢いよく矢は魔物に向かっていく。
ただ、よく見ると普段よりも矢のスピードが速くなっている気がする。
――ドガーン!
どうやら俺が矢を放つと魔物を殺してしまうらしい。
原因を探るために、HUDシステムを開きステータスを確認する。
「あー、AGIが影響しているのか……」
普段よりも弓を射るのが速いと思ったら、AGIを上げたことでコントロールできず、速さが矢に載っていたのだろう。
ユーマだけじゃなくて俺も訓練が必要だな。
少しのステータスの変化が戦闘ではかなり変わることを再び認識させられた。
「ああ」
「朝から元気ないぞー?」
「お前のテンションが高いんだよ!」
俺はユーマの尻を軽く蹴る。
「うっ……」
本当に軽く蹴っただけだ。
昨日カンチョーしたら相当痛がっていたからな。
「今日はよろしくお願いします」
「ふふふ、朝から良い絵が撮れた」
遅れてアルとラブもやってきた。
翌日、俺達は朝早くから町の入り口に集まっていた。
昨日話し合っていたユーマ達の戦闘経験訓練及び魔石の回収を行うためだ。
買い出しは店主達がするため、営業開始とともに帰ってこれば問題ないらしい。
「時間的には5時間近くはあるか」
「ひょっとして5時間もやるのか?」
どこか三人とも顔が引き攣っていた。
さっきまでのテンションの高さはどこに消えたのだろうか。
「嫌ならやめるぞ?」
「いや、やらせてもらいます! なぁ?」
「うっ……うん」
「そうね……」
アルとラブに関してはどこか雲行きが怪しい。
このままだと訓練にはならなさそうだけど、危ないと思ったら俺が倒せば問題ない。
門番に挨拶を済ませ、外に出て少し歩くとユーマ達は武器を構えた。
「よし、行くぞー!」
――ピヨーン! ピヨピヨ!
鳥のような鳴き声が周囲に響く。
「相変わらず力が抜ける笛の音だよな」
「なんでこれで魔物が集まってくるんだろうね」
「獲物だって勘違いしているんじゃないか?」
早速言ったそばから魔物が集まってきた。
『キキキ……キシャアアアアアアア!』
「ちゃちく、きちゃがきたよ?」
「あっ、忘れてたな」
先頭にはキシャが走っており、その後ろに魔物の大群が押し寄せてきた。
いつもは嬉しそうに笑っているキシャだが、泣き叫んでいる。
「たのちちょうだね」
「鬼ごっこしてるみたいだもんな。参加する?」
「んー、どうちようね?」
「いやいや、そこは止めろよ!」
ヴァイルと鬼ごっこをしようとしたら、ユーマに止められた。
バカなユーマに止められて、少し複雑な気持ちになるが一発叩いておけば良いだろう。
それともチョップにするか迷うところだな。
「痛っ!? 急に何するんだよ!」
「気合いを入れろよ」
「おっ、おう! バフもサンキュー」
さすがに訓練前に意識を刈り取ったら意味ないから、軽く張り手をしておいた。
ついでに聖職者の力で痛みを和らげたが、ステータスに補正がついたようだ。
「じゃあ、頑張れよ」
俺は近づいてくるキシャに飛び乗ろうと足に力を入れる。
「ちょっと待った!」
「ちょっと待って!」
だが、アルとラブに止められてしまった。
「どうしたんだ?」
「私達じゃ一匹も倒せないからね?」
「そのためにヴァイトに頼んだよ」
「あっ……そうなのか?」
何も気づいてないユーマに二人はため息を吐いていた。
「バカから何も聞いてないのね」
今日のことについて話し合う時には、二人は宿屋を探すためにその場にいなかった。
二人はユーマがちゃんと俺に話したと思ったのだろう。
完全に役割ミスをしたな。
「私達のレベルじゃ訓練にもならないのよ。即死よ! 即死!」
「いくらヴァイトが準備してくれた装備でも元が弱いからね」
ユーマ達は俺が実験で作った武器や防具を纏っている。
それでも勝てないなら相当訓練が必要なんだろう。
『キシヤアアアアァァァァー!』
気づいた時にはキシャが泣きながら擦り寄ってきた。
近寄りすぎて押しつぶされそうだ。
「ちょっと、近い近い! これじゃあ、戦えないだろ!」
『キシャ……キシャアアアアアアア!』
まるで大型犬のように擦り寄ってくる。
大型ムカデでも、この周囲の魔物は怖かったのだろう。
町に入るときも体を擬態させていたしな。
俺はそのままキシャの頭によじ登り弓を構える。
「手足を吹っ飛ばすぐらいでいいか?」
ユーマ達は頷いていた。
正直どこまで弱らせたら、訓練になるのかはわからない。
とりあえず魔物の足に向かって矢を放つ。
――シュ!
ちなみに今回はちゃんと普通の矢を使っている。
あまりに強く放つと吹き飛びかねないし、槍の形をした矢はどうしても周囲をめちゃくちゃにする。
――ドガーン!
矢は魔物に触れるとそのまま破裂した。
俺達は唖然としてしまった。
何が起こったのか俺もわからない。
普段ならあれぐらいの力であれば、手足が吹っ飛ぶぐらいだ。
それにこの辺の魔物は強いとさっき聞いたから大丈夫だと思った。
だが、全くそうではなかったようだ。
「もう一回やってみるな」
――シュ!
もう一度魔物に向かって矢を放つ。
勢いよく矢は魔物に向かっていく。
ただ、よく見ると普段よりも矢のスピードが速くなっている気がする。
――ドガーン!
どうやら俺が矢を放つと魔物を殺してしまうらしい。
原因を探るために、HUDシステムを開きステータスを確認する。
「あー、AGIが影響しているのか……」
普段よりも弓を射るのが速いと思ったら、AGIを上げたことでコントロールできず、速さが矢に載っていたのだろう。
ユーマだけじゃなくて俺も訓練が必要だな。
少しのステータスの変化が戦闘ではかなり変わることを再び認識させられた。
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