【書籍化決定】超リアルなVRMMOのNPCに転生して年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれていました

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第三章 新しい仲間達

110.NPC、戯れ合う友達が欲しい

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「今から反省会を始める」

 営業が終わり店主やユーマ達を集めて反省会をすることにした。

「いやいや、反省することはないぞ? みんなはよくやってくれた」

「そうだ。疑ってすまなかった」

「あんなに忙しいのは久々だったからな」

 店主達は気にしなくても良いと言っているが、問題は山積みだ。

「まず俺達がいなくなったらどうしますか?」

「「「くっ……」」」

 やはり反応は一緒だった。

 きっと自分達で営業することを考えていないのだろう。

 客が増えても、料理の提供に時間がかかってしまえばそのうち客足は途絶える。

 表情からして店主達も理解はしているようだ。

「せめて料理を運ぶのを自分達でやってもらうとして、メニューを間違えないようにする方法は必要そうだね」

「なぁ!? 客に運ばせるとはどういうことだ!」

「そんなことをしたらこの店はおしまいだぞ」

 ウェイターという職業が当たり前にあるぐらいだから、フードコートのような感覚はありえないのだろう。

 俺が来る前はバビットも一人で営業をしていたと言っていたな。

「さすがにゴーレムに運ばせるのも無理があるからな……」

「ゴーレム?」

 あまり聞き馴染みのない言葉に俺達は顔を見合わせる。

「ああ、ゴーレムマスターっていう才能を持つやつは、自分で作った石像を操るんだ」

 新たな職業に俺の胸は高鳴る。

 クエストが発生しないということは、誰かの弟子入りをするか転職する必要があるのだろう。

 ただ、そのゴーレムマスターも珍しい人物のため、こんなところで雇うこともできないらしい。

 そもそも王都にある魔法騎士団とかに所属するような人物だとか……。

 いつかは王都にいってみたいものだ。

 目指せ、ゴーレムマスター(職業体験)!

「そもそも壁も無くなったんだから、誰もやったことないことをすれば良いじゃないか」

「お前は相変わらずその楽観的なところが――」

「今日の客は誰のおかげなんだ?」

 店主達は俺を見つめてくる。

「ああ、俺のことか」

 俺はまだゴーレムマスターについて考えていた。

 だって、石像を操るって子どもの夢じゃないか。

 一人で人形遊びができるんだからな。

「とりあえず何からやるかだな」

 やりたいようにやって良いなら、もっとフードコートに近づければ良い。

 ただ、フードコートってあまり行ったことがないからな……。

「せめて注文したものを取りにきてもらうようにするのはどうかしら? 少しずつお客さんの調教……慣れてもらうことは大事でしょうし」

「それなら俺達も楽だろうしね」

「ユーマは皿洗い決定だね」

 ラブの意見にユーマとアルも同意していた。

 ウェイターが必要なければ、それだけ働く人数は減る。

「ただ、どうやって呼び出しベルみたいなのを用意するんだ?」

「料理ができても、同じ料理を頼んでいたらみんな来ちゃうもんね」

 どうやら誰が何を頼んだのかわかるようにできたら問題はないらしい。

 俺はインベントリからある道具を取り出す。

「これって使えないか? 訓練のためにできた副産物で作った連絡用の道具なんだが」

「魔石が半分に割れてる……?」

 それはSTRのステータスを急に上げすぎた時に、コントロール練習をするために使った魔石だ。

 ただ、チョップで魔石を半分に割って、どれくらいの力調整で攻撃したら良いかを調べていた。

「この魔石に魔力を流すと……」

 俺は割れた片方の魔石に魔力を通す。

「一緒に光る仕組みがあるんだよな」

 俺の行動に店主達は驚いている。

 そのまま魔石を渡すと、俺以外の人も魔石を光らせることができた。

「魔石にこんな使い方があったのか」

「一般的ではないんですか?」

「ああ、今まで生きてきた中で聞いたことはないぞ」

「そもそも魔石を割れる人を知らないぞ?」

 なぜか俺に視線が集まってくる。

 俺は手を構えて振り下ろした。

――ブーン!

 空気を切る音が響く。

「いや? ユーマにチョップするために練習してたんだけどな」

「お前、俺を殺す気か……」

「カンチョーにしとくか?」

 友達にチョップとかカンチョーをするのって当たり前だよな?

 昔から親友同士で戯れ合うのを夢見ていた。

 前世の俺が戯れあったら、車椅子が倒れるか俺が落ちていた可能性があったからな。

 俺は期待した目でユーマを見つめるが、全く目を合わせようとしない。

 むしろ立ち上がって手で尻を隠している。

「ふふふ、ヴァイトが振られているわよ」

「ラブやめなよ……」

「これは反省会の議事録だから良いのよ」

「はぁー」

 相変わらずラブの周りにはカメラが飛んでいた。

「とりあえず魔石を集めるために、魔物を倒して……そういえばレベルアップがしたいと言っていたよな?」

 壁に尻をくっつけているユーマは頷いている。

 どうやら俺達の目的は一緒のようだな。

「せっかくなら魔石集めとレベルアップを一緒にするか」

「えっ……? ヴァイトが手伝ってくれるのか?」

 ユーマは壁から離れて近づいてきた。

 それだけ戦闘経験を増やしたいのだろう。

「ああ、俺が笛を吹いてお前達が倒すんだな」

「鬼畜だな……」
「鬼畜だね……」
「鬼畜ね……」

 ユーマ達は遠い目をしていた。

 そんなやつらには気合いを注入しないといけないな。

 素早くユーマの背後に回り、腰落として構える。

「おおお、おい! 待ってぇ……」

 俺はユーマに気合いを注入しておいた。

 これで明日も朝から魔物退治が捗るだろう。

「なぁ、グスタフ……」

「なんだ?」

「あいつらに頼んでよかったのか」

「ああ、ワシも今頃後悔しておるぞ」

 その後もアルとラブに気合い注入をしようかと聞いたら、すでにやる気があるからと断られてしまった。

 ああ、中々戯れ合う相手を探すのも大変なんだな。
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