【書籍化決定】超リアルなVRMMOのNPCに転生して年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれていました

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第三章 新しい仲間達

108.NPC、呼び込みをする

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「おい、こんなところで何やってるんだ?」

「何って呼び込みしかないだろ?」

 早速呼び込みをしていると、町を歩いているユーマ達に遭遇した。

 あいつらも街を観光していたのだろう。

「何か食べていくか?」

「いや、今はお腹空いてないからな……」

「なら邪魔になるからあっちに行ってろ。あっ、美味しい食事はどうですかー?」

 俺は手でユーマを追い払うと、店の前を通る人に声をかけていく。

「あいつってチュートリアルの町にいるただのNPCだよな?」

「そうだと思うけど……」

「ならここで呼び込みをしているのはおかしくない?」

「リアルを追求したゲームだからそれぐらいあるでしょ? それよりも目的を忘れているわよ」

 まだ何かあるのかユーマ達はこっちをずっと見ている。

「なあ、少し時間がいいか?」

「時間はない」

 再び近づいてきたと思ったら、どうやら仕事の邪魔をしたいらしい。

 ドラマのワンシーンでアルバイト先に友達が揶揄いにきていたのを病室で見たことがあったな。

 きっと今はそんな感じなんだろう。

 ただ、来るのは今じゃないからな。

「邪魔するなら容赦はしないぞ?」

「なら呼び込みを手伝うから、俺達の頼みも聞いてくれよ!」

「「「えっ?」」」

 俺達の声が重なり合う。

 きっとアルやラブも聞いていないのだろう。

 相変わらずユーマは突っ走るからな。

「それで頼みってなんだ?」

「俺達のレベルアップを手伝ってくれ!」

 ユーマの言葉に俺は思わず唖然とした。

 前に戦い方を学びたいと頼んできたユーマ達に、魔物を呼ぶ笛を使って、ずっと魔物と連戦していたやつだよな?

 たまたま手に入ったアイテムで使い道がなかったが、こいつらは嬉しそうに笑っていた。

 その時はドMで戦闘狂のやつだと思ったが、やはり間違いではなかったようだ。

「時間はあるから手伝うしかないね」

「バカが勝手に決めるからいけないのよ」

 アルとラブも呆れた顔をしていた。

 やっぱりユーマの勝手な行動に振り回されているようだ。

「俺達も手伝うぜ!」

 これで呼び込み人数は三人となった。

 最終的には俺がウェイターとして店の中に入るから、呼び込みは別にいた方が良いからな。

「ちゃちく、ヴァイルもいりゅよ?」

 会話に入れなかったヴァイルも仲間に入れて欲しいようだ。

 ヴァイルは呼び込みじゃなくて、看板獣人だから持ち前の可愛さを振りまいてもらえれば問題ない。

 その後も四人で呼び込みをすると、少しずつお客さんは足を止めてくる人が増えてきた。

 ただ、聞きなれない料理だからか中々お店に入ってくれる人はいない。

 前世で馴染みがある料理でも、この世界では馴染みがないらしい。

「少しだけ休憩するか」

「わかりました!」

 結局、夕暮れになっても客が集まらずに休憩することになった。

 店内に入ると美味しそうな匂いが鼻の奥まで刺激する。

「なんか変わった店内だね?」

「まるでフード――」

「ああ、俺が壁をぶち壊したからな」

「「「へぇ!?」」」

 俺の言葉にユーマ達が驚いていた。

 別に壁ぐらい簡単に壊せるからな。

「ちゃちく、ごはん!」

 ヴァイルもお腹が減っているのか、俺のズボンを引っ張ってくる。

 ずっと座っているのもお腹が減るからな。

 俺達はすぐに椅子に座る。

「NPCが町を破壊することってあるのか?」

「んー、リアルなゲームだから……ね?」

「むしろリアルなゲームだと素手で破壊する方が非現実的よ」

 三人はその場で話して中々席にこない。

「ちゃちく、ごはん……」

 ヴァイルも我慢の限界なんだろう。

 可愛い弟を待たせるとは兄としては許せないな。

「早く来ないと頼みごとはなしに――」

「それはダメだ!」

 ユーマは椅子に座る。

 ただ、アルとラブはまだ何かを考えているようだ。

「二人とも早くこいよ!」

「いやー、せっかくだから外で食べるのはどうかな?」

「外にサンプルとかが置いてあるわけでもないから、宣伝効果にならないかしら?」

 いくら呼び込みをしても、商品を実際に見ないとお客さんが入ってこないのではないかと意見が出た。

 俺とヴァイルは美味しいものが食べられればどこで食べても変わらない。

 料理が置いてあるテーブルをそのままの状態で外に運ぶ。

「おい、やっぱりあいつ人をやめてないか?」

「人というか……確実にNPCはやめているね」

「私達とステータスが桁違いってことね……」

 俺達は外で宣伝しながら、賄いを食べることにした。
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