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第三章 新しい仲間達
107.NPC、素早さが足りない ※一部ユーマ視点
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「おっ、おい!」
「何をするんだ!」
「あっ、中途半端でしたね」
俺は反対側の壁も正拳突きで破壊していく。
これで邪魔な壁はなくなっただろう。
それにウェイターとして働くなら、ある程度動きやすい環境は必要だからな。
「もう俺達は終わりだ」
「こんなことになるなら頼まなければ……」
ハンとサトウはその場で崩れ落ちているが、グスタフだけは笑っていた。
「ヴァイト、お前本当に人間か? 素手で壁を壊すウェイターってどこにいるんだよ!」
「あっ、ここにいます」
グスタフは思ったよりも楽観的な性格をしているのだろう。
壁はボロボロと落ちて大きな店舗に生まれ変わっていた。
「おい、グスタフ本当に大丈夫なのか?」
きっとハンとサトウにとったら、俺は不安要素しかない。
まぁ、俺も上手くできるかはわからないが、なぜかできそうな気がする。
こういう時は自分を信じるしかないからな。
やることが決まれば俺は動くだけ。
店主達が話している間も準備を進めていく。
「ワシはヴァイトを信じているぞ。ワシらの料理を食べて泣いたやつなんか今までにいたか?」
「それは……」
「結局ワシらはこのままだと終わっていたかもしれない。それなら全く違うことをするのも楽しいだろう」
グスタフに感化され、次第にサトウとハンも納得していた。
「瓦礫を片付けたので営業の準備をしましょうか」
「「「はやっ!?」」」
三人が話し合っている間に俺は壁の瓦礫を撤去し片付け終えた。
あとでどこかに捨てに行けばいいし、武器の材料になるかもしれない。
それにウダウダしてても、時間は少しずつ進んでいってしまう。
時間は無限にあるわけではないからな。
何事もスピードが命だ。
素早くテーブルを動かして内装を変えていく。
掘りごたつは移動できないが、中華テーブルと普通のテーブルは動かすことができるからな。
人数に分けて用途を変えれば、誘導もしやすいだろう。
「じゃあ、呼び込みしてきますね」
「おっ……おう」
なぜか店主達はその場で固まっていた。
壁を破壊してから5分も経っていないが、思ったよりも時間がかかってしまった。
きっとそこに対して不満があったのだろう。
もう少し素早く動けるようにAGIにポイントを割り振らないといけない時がきた。
俺はHUDシステムでステータスをいじり、さらに早く動けるように調整して呼び込みに向かった。
「あいつは人間か?」
「その辺の冒険者よりも速い動きをしていたぞ」
「ははは、やっぱり頼んでよかっただろ? じゃあ、俺達も準備をするか」
店主達も気合いを入れ直して、夜の開店に向けて仕込みを始めた。
♢
「なあ、転職システムの情報が解禁されたけど早すぎないか?」
ヴァイトに新しい町に連れてきてもらったタイミングで、運営からお知らせが届いた。
それは転職システムの導入についてだ。
「みんなの職業レベルって30いくかどうかだよね?」
「俺もそうだよ」
「私も」
転職システムを使うには明らかにレベルが足りなかった。
他の種族に達成者が出たのかと思ったが、種族ランキングを見るとさほど変わりない。
むしろヴァイトの強制的なレベリングのおかげで、俺達の職業レベルは高い方になる。
「さすがにお姉ちゃんには聞けないからね」
さらに転職システムより問題だったのは、冒険者ギルドに来てからだった。
「依頼を受けるのに職業レベル40からの難易度しかないって町を間違えたのかな?」
冒険者ギルドにある依頼を見ると、冒険者ランクの他に全てが職業レベルが40は必要だった。
それだけ町の周囲には強い魔物で溢れているらしい。
「俺達には早かったってことだな」
「地道にレベリングするしかないわね」
「またヴァイトに頼むか?」
「またあれをやるの……」
「それが一番効率がいいもんね」
俺達三人はあの時のことを思い出して、遠い目をしていた。
できればあんなことはしたくないからな。
ただ、この町で活動するにはレベルが足りないから仕方ないだろう。
運営がこの道を進めなかった理由がやっとわかった気がする。
以前ヴァイトにレベリングを手伝ってもらえないかと頼み込んだら、修行をしてもらえることになった。
森の中に行くと変な笛を吹き、ヴァイトは木の上で様子を見ていた。
次第に周囲には魔物が集まってきて、倒したらまた笛を吹くの繰り返し。
気づいたら三時間も常に連戦だ。
それにどちらかが死にそうになれば、回復スキルで治してしまう。
何度も魔物を傷つけて回復させると、倒した時の経験値量も増えるという仕組みを知った。
最終的にはヴァイトが良いって言うまで、魔物に囲まれて地獄の耐久訓練となった。
鬼畜と呼ばれている理由を改めて思い出した。
ただ、終わった時には戦闘職の職業レベルは三時間で5レベルも上がっていた。
普通なら1~2レベル上がっていたら、良いぐらいだからな。
「じゃあ、まずはヴァイトを探すとするか」
「いつもはお店にいることが多いけど、ここにはバビットさんのお店は――」
「中華、和食、洋食、それぞれの魅力を存分に味わえる当店へようこそ。香り高い本格中華、心温まる和食、そして洗練された洋食」
どこかで聞いたことある声が響いていた。
「どんな気分の日でも、あなたの舌を満たす一皿がここにあります。職人が腕によりをかけて作り上げた逸品を、落ち着いた雰囲気の中で堪能してみてください。友人や家族との楽しいひとときにもぴったりですよ!」
探そうとしていた謎のNPCがなぜか店の呼び込みをしていた。
「何をするんだ!」
「あっ、中途半端でしたね」
俺は反対側の壁も正拳突きで破壊していく。
これで邪魔な壁はなくなっただろう。
それにウェイターとして働くなら、ある程度動きやすい環境は必要だからな。
「もう俺達は終わりだ」
「こんなことになるなら頼まなければ……」
ハンとサトウはその場で崩れ落ちているが、グスタフだけは笑っていた。
「ヴァイト、お前本当に人間か? 素手で壁を壊すウェイターってどこにいるんだよ!」
「あっ、ここにいます」
グスタフは思ったよりも楽観的な性格をしているのだろう。
壁はボロボロと落ちて大きな店舗に生まれ変わっていた。
「おい、グスタフ本当に大丈夫なのか?」
きっとハンとサトウにとったら、俺は不安要素しかない。
まぁ、俺も上手くできるかはわからないが、なぜかできそうな気がする。
こういう時は自分を信じるしかないからな。
やることが決まれば俺は動くだけ。
店主達が話している間も準備を進めていく。
「ワシはヴァイトを信じているぞ。ワシらの料理を食べて泣いたやつなんか今までにいたか?」
「それは……」
「結局ワシらはこのままだと終わっていたかもしれない。それなら全く違うことをするのも楽しいだろう」
グスタフに感化され、次第にサトウとハンも納得していた。
「瓦礫を片付けたので営業の準備をしましょうか」
「「「はやっ!?」」」
三人が話し合っている間に俺は壁の瓦礫を撤去し片付け終えた。
あとでどこかに捨てに行けばいいし、武器の材料になるかもしれない。
それにウダウダしてても、時間は少しずつ進んでいってしまう。
時間は無限にあるわけではないからな。
何事もスピードが命だ。
素早くテーブルを動かして内装を変えていく。
掘りごたつは移動できないが、中華テーブルと普通のテーブルは動かすことができるからな。
人数に分けて用途を変えれば、誘導もしやすいだろう。
「じゃあ、呼び込みしてきますね」
「おっ……おう」
なぜか店主達はその場で固まっていた。
壁を破壊してから5分も経っていないが、思ったよりも時間がかかってしまった。
きっとそこに対して不満があったのだろう。
もう少し素早く動けるようにAGIにポイントを割り振らないといけない時がきた。
俺はHUDシステムでステータスをいじり、さらに早く動けるように調整して呼び込みに向かった。
「あいつは人間か?」
「その辺の冒険者よりも速い動きをしていたぞ」
「ははは、やっぱり頼んでよかっただろ? じゃあ、俺達も準備をするか」
店主達も気合いを入れ直して、夜の開店に向けて仕込みを始めた。
♢
「なあ、転職システムの情報が解禁されたけど早すぎないか?」
ヴァイトに新しい町に連れてきてもらったタイミングで、運営からお知らせが届いた。
それは転職システムの導入についてだ。
「みんなの職業レベルって30いくかどうかだよね?」
「俺もそうだよ」
「私も」
転職システムを使うには明らかにレベルが足りなかった。
他の種族に達成者が出たのかと思ったが、種族ランキングを見るとさほど変わりない。
むしろヴァイトの強制的なレベリングのおかげで、俺達の職業レベルは高い方になる。
「さすがにお姉ちゃんには聞けないからね」
さらに転職システムより問題だったのは、冒険者ギルドに来てからだった。
「依頼を受けるのに職業レベル40からの難易度しかないって町を間違えたのかな?」
冒険者ギルドにある依頼を見ると、冒険者ランクの他に全てが職業レベルが40は必要だった。
それだけ町の周囲には強い魔物で溢れているらしい。
「俺達には早かったってことだな」
「地道にレベリングするしかないわね」
「またヴァイトに頼むか?」
「またあれをやるの……」
「それが一番効率がいいもんね」
俺達三人はあの時のことを思い出して、遠い目をしていた。
できればあんなことはしたくないからな。
ただ、この町で活動するにはレベルが足りないから仕方ないだろう。
運営がこの道を進めなかった理由がやっとわかった気がする。
以前ヴァイトにレベリングを手伝ってもらえないかと頼み込んだら、修行をしてもらえることになった。
森の中に行くと変な笛を吹き、ヴァイトは木の上で様子を見ていた。
次第に周囲には魔物が集まってきて、倒したらまた笛を吹くの繰り返し。
気づいたら三時間も常に連戦だ。
それにどちらかが死にそうになれば、回復スキルで治してしまう。
何度も魔物を傷つけて回復させると、倒した時の経験値量も増えるという仕組みを知った。
最終的にはヴァイトが良いって言うまで、魔物に囲まれて地獄の耐久訓練となった。
鬼畜と呼ばれている理由を改めて思い出した。
ただ、終わった時には戦闘職の職業レベルは三時間で5レベルも上がっていた。
普通なら1~2レベル上がっていたら、良いぐらいだからな。
「じゃあ、まずはヴァイトを探すとするか」
「いつもはお店にいることが多いけど、ここにはバビットさんのお店は――」
「中華、和食、洋食、それぞれの魅力を存分に味わえる当店へようこそ。香り高い本格中華、心温まる和食、そして洗練された洋食」
どこかで聞いたことある声が響いていた。
「どんな気分の日でも、あなたの舌を満たす一皿がここにあります。職人が腕によりをかけて作り上げた逸品を、落ち着いた雰囲気の中で堪能してみてください。友人や家族との楽しいひとときにもぴったりですよ!」
探そうとしていた謎のNPCがなぜか店の呼び込みをしていた。
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