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第三章 新しい仲間達
106.NPC、提案する
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荷物を持ってすぐにグスタフを追いかけた。
「なっ!? お前足速いな」
「これが普通ですよ?」
そんなに急いで帰りたいのだろうか。
少し持ちにくいが、荷物を片手にまとめてグスタフの腰に手を回す。
「ん? なんだ?」
「行きますよ!」
「うおおおい!」
俺はそのまま肩にグスタフを担ぐと、店に向かって走っていく。
ユーマやチェリーを抱えて町の中を移動することは度々ある。
肩に担いで移動するのって思ったよりも走りにくいが、今日は荷物を持っているから尚更走りにくい。
「おっ、おい! みんなが見ているだろ」
「よくあることなんで大丈夫です!」
視線を気にしていたら急いで帰ることはできないからな。
それにどこにいても目立つから仕方ない。
気にすることなく、走り続けるとすぐに店の前に到着した。
「グスタフさん着きましたよ」
「ああ、次はちゃんと言ってくれよ」
走ったのは俺のはずなのに、どこか疲れた顔をしている。
また何かやらかしてしまったのだろうか。
「それだと店の良さが伝わらないじゃないか!」
「そもそも客を入れるにはこれしかないだろ」
店の中に入ると、中から言い合いの声が聞こえてきた。
「おい、ハンとサトウは何を言い合っているんだ?」
店内では中華と和食の店主が言い合いをしていた。
胸ぐらを掴んでいるため、言い合いというよりは喧嘩に近いだろう。
「ハンが呼び込みをする人を決めたほうがいいって言い出すんだ!」
「それぐらいしないと客が集まらないじゃないか!」
中華の店主ハン、和食の店主サトウが客をどうやって集めるかで言い合いをしていたらしい。
たしかに味は良いのにお客さんが全くいない。
お昼に店に入った時も客はほとんどいなかったし、呼び込みも店主達自ら行っていた。
「じゃあ、誰か雇うのか?」
「3人も雇う金はない!」
そもそも店主しかいない店で、ウェイターや呼び込みがいないのが問題な気がする。
建物が同じのため、感覚はフードコートに近くても店舗自体は分かれている。
そこで呼び込みをする日と営業する日を分けたらどうかという意見があった。
1日1店舗にすれば、ウェイターと呼び込みでどうにかなると考えたのだろう。
たしかにそれなら客は集まりそうだ。
ただ、この店の良さって中華、和食、洋食が全て一緒に食べられるのが良いところだ。
「ワシもその意見には反対だな。そもそもあまり知らない料理を勧めるのは料理人としてはできないな」
「ああ、俺も同じ意見だ」
各々、料理人としてのプライドが邪魔をするのだろう。
良いものを提供したいってのはみんな同じだからね。
「ならどうすればいいんだよ! このままじゃ廃業するしかなくなるだろ」
廃業って店をやめるということだろうか。
美味しいものを食べられなくなるのは俺も困る。
「ちゃちく!」
「どうした?」
「ちゃちくがちたら?」
どれも好きな俺なら役割として問題ない気がする。
ヴァイルの提案に店主達はお互いに視線を合わせて詰め寄ってきた。
「さすがヴァイルだな!」
俺はヴァイルの頭を優しく撫でる。
気持ちいいのか耳がピクピクと動いていた。
我が弟は頭の回転も速くて、解決策もしっかりしている。
「なぁ、よかったら手伝ってくれないか?」
「呼び込みだけでもいいからさ!」
「運ぶのは自分達でなんとかする」
店主達はその場で頭を下げてお願いしてきた。
それだけ困っているのだろう。
ただ、この人達は俺のことがよくわかっていないからな。
「呼び込みだけじゃなくてウェイターもできますよ? 住んでいるところが食事処――」
「「「お願いします」」」
土下座をする勢いで床に手をついていた。
さすがにそこまでやられたら俺も困ってしまう。
「ヴァイルはどうだ?」
ここで働くってなったら、しばらくは帰れなくなるだろう。
ヴァイルがバビットやチェリーに会えなくても寂しくなければ問題ない。
そういえば、精霊のオジサンを置いてきたことに今になって気づいた。
「ちゃちくがいいならやりゅよ?」
どうやらヴァイルも手伝うことには問題ないようだ。
「ただし、条件があります」
「なんだ? ワシができるなら言ってみろ!」
俺はニヤリと笑った。
せっかくならこっちから提案を持ちかけてみよう。
「3食住み込み付きで、なるべく知り合いを紹介してください」
「それぐらいなら構わないぞ」
「さっきもそれを頼まれていたからな」
これで大体の意見が通ったことになる。
「あと一つだけ提案を受け入れてくれたらやりますよ」
「ああ、受け入れるぞ」
「これでどうにかなるかもしれないからな」
あと一つは俺のやりたいことをやらせてもらおう。
店舗同士で仕切られている壁に近づくと、腰を下ろして構える。
「おい、まさか――」
――ドゴーン!
「せっかくならフードコートにしましょう!」
ポロポロと壁は崩れ落ち、隣の店舗が見えている。
あまりにも突然の行動に店主達は唖然としていた。
「ちゃちく、しゅごいね!」
せっかく色々食べられるなら、尚更フードコートにした方が良いと思った。
【好感度クエスト】
内容 店の経営を立て直す
条件 職業ウェイター、事務員、販売員持ち
報酬 NPCの好感度増加
どうやらHUDシステムも反応しクエストという扱いになったらしい。
「なっ!? お前足速いな」
「これが普通ですよ?」
そんなに急いで帰りたいのだろうか。
少し持ちにくいが、荷物を片手にまとめてグスタフの腰に手を回す。
「ん? なんだ?」
「行きますよ!」
「うおおおい!」
俺はそのまま肩にグスタフを担ぐと、店に向かって走っていく。
ユーマやチェリーを抱えて町の中を移動することは度々ある。
肩に担いで移動するのって思ったよりも走りにくいが、今日は荷物を持っているから尚更走りにくい。
「おっ、おい! みんなが見ているだろ」
「よくあることなんで大丈夫です!」
視線を気にしていたら急いで帰ることはできないからな。
それにどこにいても目立つから仕方ない。
気にすることなく、走り続けるとすぐに店の前に到着した。
「グスタフさん着きましたよ」
「ああ、次はちゃんと言ってくれよ」
走ったのは俺のはずなのに、どこか疲れた顔をしている。
また何かやらかしてしまったのだろうか。
「それだと店の良さが伝わらないじゃないか!」
「そもそも客を入れるにはこれしかないだろ」
店の中に入ると、中から言い合いの声が聞こえてきた。
「おい、ハンとサトウは何を言い合っているんだ?」
店内では中華と和食の店主が言い合いをしていた。
胸ぐらを掴んでいるため、言い合いというよりは喧嘩に近いだろう。
「ハンが呼び込みをする人を決めたほうがいいって言い出すんだ!」
「それぐらいしないと客が集まらないじゃないか!」
中華の店主ハン、和食の店主サトウが客をどうやって集めるかで言い合いをしていたらしい。
たしかに味は良いのにお客さんが全くいない。
お昼に店に入った時も客はほとんどいなかったし、呼び込みも店主達自ら行っていた。
「じゃあ、誰か雇うのか?」
「3人も雇う金はない!」
そもそも店主しかいない店で、ウェイターや呼び込みがいないのが問題な気がする。
建物が同じのため、感覚はフードコートに近くても店舗自体は分かれている。
そこで呼び込みをする日と営業する日を分けたらどうかという意見があった。
1日1店舗にすれば、ウェイターと呼び込みでどうにかなると考えたのだろう。
たしかにそれなら客は集まりそうだ。
ただ、この店の良さって中華、和食、洋食が全て一緒に食べられるのが良いところだ。
「ワシもその意見には反対だな。そもそもあまり知らない料理を勧めるのは料理人としてはできないな」
「ああ、俺も同じ意見だ」
各々、料理人としてのプライドが邪魔をするのだろう。
良いものを提供したいってのはみんな同じだからね。
「ならどうすればいいんだよ! このままじゃ廃業するしかなくなるだろ」
廃業って店をやめるということだろうか。
美味しいものを食べられなくなるのは俺も困る。
「ちゃちく!」
「どうした?」
「ちゃちくがちたら?」
どれも好きな俺なら役割として問題ない気がする。
ヴァイルの提案に店主達はお互いに視線を合わせて詰め寄ってきた。
「さすがヴァイルだな!」
俺はヴァイルの頭を優しく撫でる。
気持ちいいのか耳がピクピクと動いていた。
我が弟は頭の回転も速くて、解決策もしっかりしている。
「なぁ、よかったら手伝ってくれないか?」
「呼び込みだけでもいいからさ!」
「運ぶのは自分達でなんとかする」
店主達はその場で頭を下げてお願いしてきた。
それだけ困っているのだろう。
ただ、この人達は俺のことがよくわかっていないからな。
「呼び込みだけじゃなくてウェイターもできますよ? 住んでいるところが食事処――」
「「「お願いします」」」
土下座をする勢いで床に手をついていた。
さすがにそこまでやられたら俺も困ってしまう。
「ヴァイルはどうだ?」
ここで働くってなったら、しばらくは帰れなくなるだろう。
ヴァイルがバビットやチェリーに会えなくても寂しくなければ問題ない。
そういえば、精霊のオジサンを置いてきたことに今になって気づいた。
「ちゃちくがいいならやりゅよ?」
どうやらヴァイルも手伝うことには問題ないようだ。
「ただし、条件があります」
「なんだ? ワシができるなら言ってみろ!」
俺はニヤリと笑った。
せっかくならこっちから提案を持ちかけてみよう。
「3食住み込み付きで、なるべく知り合いを紹介してください」
「それぐらいなら構わないぞ」
「さっきもそれを頼まれていたからな」
これで大体の意見が通ったことになる。
「あと一つだけ提案を受け入れてくれたらやりますよ」
「ああ、受け入れるぞ」
「これでどうにかなるかもしれないからな」
あと一つは俺のやりたいことをやらせてもらおう。
店舗同士で仕切られている壁に近づくと、腰を下ろして構える。
「おい、まさか――」
――ドゴーン!
「せっかくならフードコートにしましょう!」
ポロポロと壁は崩れ落ち、隣の店舗が見えている。
あまりにも突然の行動に店主達は唖然としていた。
「ちゃちく、しゅごいね!」
せっかく色々食べられるなら、尚更フードコートにした方が良いと思った。
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内容 店の経営を立て直す
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