【書籍化決定】超リアルなVRMMOのNPCに転生して年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれていました

k-ing ★書籍発売中

文字の大きさ
上 下
87 / 150
第二章 精霊イベント

87.NPC、実験をする

しおりを挟む
「ぎゃああああ!」

「大丈夫ですか?」

「キュン!」

 町の中で男性勇者の近くにいる虫を追い払って助けていく。

 これで何人目だろうか。

 虫に囲まれていたのは女性勇者だけではなかった。

 男性勇者や冒険者達も虫に囲まれていた。

「ヴァイト様……ぜひ、俺のパートナーに……」

 パートナーって親友のことを言うよな?

 よく心のパートナーってアニメとかで聞いたことがあるしな。

「パートナー? いや、俺にはユーマがいるから大丈夫かな?」

「ギュン!」

 なぜか男性勇者はとろけたような顔をしていた。

 揃いも揃って聖職者スキルを発動させても効果がない。

「ギュフフフ! ジュルリ」

 その近くには唸り声をあげている女性勇者達が見ている。

 女性だから虫を追い払えずに見守っているのだろうか。

 それに男性勇者も苦しそうだ。

 そういう時は、だいたい――。

「胸が痛いなら――」

「股間が……」

「うん、それは早く教会に行った方が良い! 虫に大事なところを噛まれたんだな!」

 男のシンボルは少し衝撃があっただけでも、泣き叫ぶほどだ。

 そこが虫に噛まれたってなると大事になる。

 最悪排泄もできなくなるからな!

 虫に襲われると胸や股間が痛くなるという症状に襲われるほど、この世界の虫は凶悪のようだ。

 隣町のバッタ達に俺も股間を噛まれなくてよかったと改めて思う。

「いや、ヴァイト様にかまれ――」

「教会はあっちだからな!」

 俺はちゃんと教会の場所を伝えて、次の人を助けに行く。


「きゃああああ!」

 なぜか棒読みのような叫び声が聞こえてきた。

 すぐに声がする方に向かう。

 ただ、その先にいる魔力が俺の知っている人物と同じような気がした。

「やっぱりお前か」

「おお、本当にヴァイトが飛んできた!」

 そこにはユーマとニヤニヤしたラブがいた。

「さすがにヴァイトの邪魔はやめた方がいいよ?」

 ひょっとして俺を呼ぶために叫んだのだろうか。

 俺は紐を取り出してユーマに近づく。

「いや、ちょうど俺もヴァイトに用が……って何してるんだ?」

「ん? ちょっと実験してみようかと思ってね?」

 ユーマが逃げないように紐で縛り付ける。

「あああ、拘束プレイよ! これはみんな喜ぶわ!」

「ラブもやめなよ……。さすがに視聴率を上げるためだとしても二人とも可哀想――」

「ならアルが代わりに行ってくる? 別に三人で取り合いしても――」

「遠慮しておきます」

 アルとラブは何か言い合いをしていた。

「おい、ヴァイト……何をするつもりだ?」

「えっ? だから実験だって!」

 学生の時に授業で実験ができなかったからな。

 アルコールランプに火をつけて、俺も色々とやってみたかった。

 俺はあるものを取り出し、ユーマにかける。

「このにおいはレモン?」

「今町の中でこの香水を使っている人が多いんだ」

「ああ、確かに変わった匂いがしているもんな。これと叫び声が何か関係しているのか?」

「んー、待ってみたらわかるかも」

 しばらくそのままユーマを観察していると、虫達が勢いよく集まってきた。

「ななな、ヴァイト! 早く外してくれ!」

「嫌だね! 俺の時間を奪った罰だよ」

「鬼畜! 悪魔!」

 ユーマの体を虫達が這いずっていく。

 その姿を見てアルやラブも震えている。

 ひょっとして一緒に実験をしたいのだろうか。

「二人もやってみる?」

「ムリムリムリムリ!」

 壊れたおもちゃのように首を大きく横に振っていた。

「ヴァイト助けてくれー! 俺とお前は親友だろ?」

 それを言われたらどこか悪いことをしている気分になる。

 確かに俺とユーマは親友だからな。

 ただ、実験の目的が果たせてないのだ。

「なぁ、胸か股間が痛くない?」

「はぉん? どっちも痛くねーよ! むしろ痒いし気持ち悪い!」

「ほぉー、そうなんか」

 俺は解体師スキルと聖職者スキルを発動する。

 これで実験の結果がわかったからな。

 胸と股間が痛くなることはないってことだ。

 なぜ痛くなるのかは俺にはわからない。

 紐を外すとユーマは虫を追い払った。

「おい、実験をするならちゃんと説明してからやれよ!」

「やるのは良いんだね?」

「ヴァイトが何かするにはちゃんとした理由があるだろ?」

「あー、そうだな」

「それに大体こういう時って……」

 ユーマはHUDシステムを確認していた。

 大体俺と遊んだ時にはあることが起こる。

「やっぱりステータスが上がってた」

 ステータスが上がったことで、ユーマは嬉しそうに笑っていた。

「ねぇ、ラブ? あの関係って普通なの? ユーマっていつからドMになったの?」

「いいのよ! あれも一種の愛なのよ」

「んー、勉強ばかりしてる僕にはまだわからないな」

 俺の実験は色んな意味でうまくいったらしい。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

処理中です...