上 下
86 / 150
第二章 精霊イベント

86.NPC、人を助ける

しおりを挟む
「これって本当に臭い消しなのかな?」

 俺はジェイドからもらった臭い消しを鑑定スキルで見ていた。

「ヴァイトくんどうしたの?」

「いや、みんながつけていた臭い消しが気になって鑑定していたんですけど……」

「私にも貸してみて!」

 鑑定士スキル持ちなら、ある程度どんなものかはわかる。

 それに調香師としてのスキルも持っているため、結構詳細に見えている。

「んー、私には使ってある原料しか見えないけど、いくつかの花とレモン……わずかにハチミツかな?」

「やっぱりそうですよね。ただ、そんな食べ物みたいものを塗る人って……」

「後ろにたくさんいるわよ」

 俺の後ろには虫がたくさん付いた冒険者達がいた。

 中には体が痒くなったり、赤く腫れた人達も存在している。

「なぁ、俺達にもちゃんとした臭い消しもらえないか? なんかこれおかしいんだよ」

 きっとジェイドに渡していたのを見ていたのだろう。

「それって誰からもらったんですか?」

「ん? 俺らは勇者から貰ったぞ?」

「ああ、俺も勇者だ」

 どうやら今回の犯人は勇者が関係しているらしい。

 正確にいえば、また・・勇者かってため息が出るくらいだ。

 きっと俺が勇者と遊んでいるから、ヴァイトから預かったって言われて信じてしまったのだろう。

 って言っても仲が良い勇者ってユーマ達ぐらいだ。

 俺は解体師スキルで冒険者を綺麗にして、聖職者スキルで治療をする。

「なんかヴァイトくんって万能ね」

社畜バイトニストのおかげですよ! 一緒にどうですか?」

「あっ……いやー、冒険者ギルドの仕事で精一杯だからやめておくわ」

 そう言って冒険者ギルドの女性は去って行った。

「主人も振られたな」

「ああ、ナンパにあれはないな」

 オジサンとジェイドは何かコソコソと言っていた。

 そんなに遊んで欲しいなら、あとで遊んであげよう。

 それまでは仲良く待っていてもらわないとね。

 持っていた紐をお互いに結びつける。

「おいおい、ワッシはすでに一本付いているぞ?」

「知ってるよ? 今日は二人で過ごしてね?」

 外れないようにキツくオジサンとジェイドを結びつける。

「胸と胸をくっつけて、あと少しで唇が触れるラッキーチャンスだね!」

「うっ……獣臭いな!?」

「ななな、ワッシはフローラルな獣臭だ! この加齢臭め!」

「なんだと!?」

 ワイワイとお互い仲良くやっていけそうだな。

 それよりもまずは別の人が作った臭い消しについて調査が必要だ。

 だって、俺の鑑定では少し怖い文字が書かれていたからな。

【鑑定結果】
アイテム名:魅惑の香水
効果:強いレモンの匂いで半日間、虫や虫系魔物を引き寄せる


 まずは勇者であるユーマ達を探すことにした。

 あいつらなら勇者の情報を知っているはずだ。

 何でも人族の勇者の中でトップランカーって言われているらしい。

 また勇者語が出てきたが、トップランって足が速いことを言うんだよね?

 毎日鬼ごっこで足腰鍛えているから、それぐらい有名にならないと俺も困る。

 ただ、車並みに速いかと言われたら、まだまだあいつも遅いからな。

「いやああああああ!」

 町中を歩いていると突然叫び声が聞こえてきた。

 いや、ところどころで女性勇者が叫んでいる。

 よく俺を見て唸り声のような叫び声だったから気にしていなかったが、いつもの叫び声とはまた違う。

 すぐに声がする方に向かうと、女性勇者が虫に囲まれていた。

「大丈夫ですか?」

 すぐに解体師スキルを発動させて、虫を追い払う。

 俺はジーッと女性勇者をみつめる。

「はっ……はい」

 段々と赤くなる顔に手を触れる。

 あれ?

 聖職者スキルを発動させているが、全く赤みが引かないぞ?

「痛いところはないですか?」

「むっ……胸が痛いです」

 どうやら虫に刺されたわけでもなく、特に問題はなさそうだ。

「胸の痛みなら教会で治療してもらえるので、そっちへお願いします」

 それだけ伝えて俺は他のところで叫んでいる女性勇者を探しに行った。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~

雪月 夜狐
ファンタジー
異世界の冒険がしたい、だけど激しい戦闘や壮大な戦いはちょっと…。 そんな人にぴったりの、のんびりVRMMOファンタジーがここに誕生! 主人公アキは、仕事の合間に癒しを求めて「エターナル・ラプソディ」の世界にフルダイブ。 ネコマタというレアな種族でキャラクリし、素材集めや生産活動を楽しむことに。 仲間や街の住人たちとゆるやかに交流し、未知の素材や魔物と出会いながら、 自分らしい冒険の道を見つけていく。 ゆるふわな異世界で心のままに過ごすアキの姿は、日常の疲れを忘れさせてくれるはず。 癒しと発見が詰まった旅路、どうぞお楽しみに! 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/270920526】

魔物の装蹄師はモフモフに囲まれて暮らしたい ~捨てられた狼を育てたら最強のフェンリルに。それでも俺は甘やかします~

うみ
ファンタジー
 馬の装蹄師だった俺は火災事故から馬を救おうとして、命を落とした。  錬金術屋の息子として異世界に転生した俺は、「装蹄師」のスキルを授かる。  スキルを使えば、いつでもどこでも装蹄を作ることができたのだが……使い勝手が悪くお金も稼げないため、冒険者になった。  冒険者となった俺は、カメレオンに似たペットリザードと共に実家へ素材を納品しつつ、夢への資金をためていた。  俺の夢とは街の郊外に牧場を作り、動物や人に懐くモンスターに囲まれて暮らすこと。  ついに資金が集まる目途が立ち意気揚々と街へ向かっていた時、金髪のテイマーに蹴飛ばされ罵られた狼に似たモンスター「ワイルドウルフ」と出会う。  居ても立ってもいられなくなった俺は、金髪のテイマーからワイルドウルフを守り彼を新たな相棒に加える。  爪の欠けていたワイルドウルフのために装蹄師スキルで爪を作ったところ……途端にワイルドウルフが覚醒したんだ!  一週間の修行をするだけで、Eランクのワイルドウルフは最強のフェンリルにまで成長していたのだった。  でも、どれだけ獣魔が強くなろうが俺の夢は変わらない。  そう、モフモフたちに囲まれて暮らす牧場を作るんだ!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』 倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。 ……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。 しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。 意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...