84 / 150
第二章 精霊イベント
84.NPC、調香師になる
しおりを挟む
「これが臭い消しか!?」
目をキラキラに輝かせてオジサンは手作りの臭い消しを見ている。
「あとはスプレーみたいにできたら――」
スプレー容器がこの世界にあるわけもなく、代用するには小さな穴をいくつか開けた容器を使うしかないだろう。
どうするか考えていると、隣からオジサンの楽しそうな声が聞こえてきた。
「ジャーンプ!」
「えっ……」
見た時には臭い消しに入って、体を洗っているオジサンがいた。
「これでワッシもモテモテだぞ!」
まだ臭いを消せればモテると思ってるのだろうか。
ヴァイルの臭いは勘違いだと分かったのに、モテない現実を受け止めたくないオジサンを感じる。
それに吹きかける程度だと思っていたが、あんなに中身がレモン水の中に入っても大丈夫なんだろうか。
だって、傷口が少しでもあれば……。
「イッテエエエエエ!」
酸が傷口に染みて、痛みで臭い消しどころではないだろう。
オジサンはすぐに飛び出してきた。
いつも朝活に行くときにベッドから出ないから、紐を引っ張って引きずっていた。
そんな状態で擦り傷ができない方がおかしい。
「オジシャンいいにおいしゅるね!」
「ああ、レモンが香ってくるね!」
ただ、痛みと引き換えにレモンの良いにおいがオジサンから漂ってくる。
特に毛並みも変わっていないため、レモンの香りがするただのオジサンだ。
いや、大マーモットか。
それに臭い消しができたことで新しい職業体験ができるようになった。
――調香師(生産職)
生産街の工房でも見たことないため、この町では俺だけだろう。
作り慣れたらチェリーにも教えて、調香師を増やすのも良さそうだ。
回復魔法をかけると、痛みも落ち着いたのか再び臭い消しのレモン水に入っていた。
「俺達先に寝るからな」
「ワッシはもう少し体を綺麗にしておくぞ!」
もはやレモン水の水浴びだ。
初めて出会った時も綺麗好きだったしな。
本人が良いなら気にせず、俺とヴァイルは寝ることにした。
翌朝、レモンのにおいで目を覚ました。
「邪魔だな」
俺の顔の上で寝ていたオジサンを持ち上げる。
爽やかな香りがするオジサンで目を覚ますって中々滅多にない光景だろう。
俺はいつものように紐に結びつけて、朝活の準備に向かう。
朝はいつも通りに冒険者ギルドでデイリークエストを受けていく。
「あら、ヴァイトくん今日は爽やかなにおいがするわね」
「俺ですか?」
声をかけてきたのは鑑定士の女性だ。
爽やかな香りってオジサンのことだろうか。
「ひょっとしてこいつのことですか?」
俺はまだ寝ているオジサンを持ち上げて、においを嗅がせる。
顔を近づけてオジサンのにおいを嗅いでいるのか、クンクンとしている。
「あっ、オジサンから良い香りがしているのね」
これで俺からにおいがしているわけではないことが伝わっただろう。
「私も嗅いでみたいです」
気づいた時には、冒険者ギルドにいる女性達が集まっていた。
今頃オジサンが起きていたら喜んでいたのにな。
まだいびきをかきながら眠っている。
「レモンのにおいをつけたらモテるのか」
「後でヴァイトに聞いてみるか」
ただ、それを見ていた冒険者ギルドにいる男達は見逃していなかった。
訓練場に行くと、ゾロゾロと男達が寄ってきた。
「なぁ、ヴァイト?」
「なんですか?」
「よかったら俺にもレモンのにおいがするやつを譲ってくれないか?」
声をかけてきたのはジェイドだ。
彼もにおいが気になるのだろうか。
エリックと違って、動き回るから汗もかきやすいのだろう。
「明日までで良いなら作りますよ?」
「おお、そうか! それならたくさん用意してもらえると助かる」
ジェイドの後ろには年上の冒険者達がいた。
きっとジェイドを使って俺に話しかけてきたのだろう。
関わりがないと中々話しかけづらいからな。
俺も勇者に声をかけるのは、人見知りだから怖くてできない。
初対面だから何をされるかわからないだろうし。
「よかったらにおいを嗅いでみますか?」
「良いのか?」
年上の冒険者達はレモンの匂いでも、どんなにおいがするのか気になっていたのだろう。
オジサンを囲んでクンクンとしている。
オジサンがオジサンに囲まれる。
なんとも言えない光景だ。
「はぁー、よく寝た……なんだこれええええええ!」
そんな中、オジサンは目を覚ました。
起きた瞬間にオジサンに囲まれて、においを嗅がれていたら、さすがにびっくりするか。
「ああ、お前が良いにおいするからさ」
「ワッシは女にモテモテになりたかったぞおおおお!」
急いで俺の元に逃げてきたと思ったら、足を何度も蹴ってくる。
相変わらず痛くないが、さっきまで女性達に囲まれていたことを言わないことにした。
「ワッシのモテモテ計画がああああああ!」
その後もしばらくはオジサンは一人……いや、一匹で騒いでいた。
目をキラキラに輝かせてオジサンは手作りの臭い消しを見ている。
「あとはスプレーみたいにできたら――」
スプレー容器がこの世界にあるわけもなく、代用するには小さな穴をいくつか開けた容器を使うしかないだろう。
どうするか考えていると、隣からオジサンの楽しそうな声が聞こえてきた。
「ジャーンプ!」
「えっ……」
見た時には臭い消しに入って、体を洗っているオジサンがいた。
「これでワッシもモテモテだぞ!」
まだ臭いを消せればモテると思ってるのだろうか。
ヴァイルの臭いは勘違いだと分かったのに、モテない現実を受け止めたくないオジサンを感じる。
それに吹きかける程度だと思っていたが、あんなに中身がレモン水の中に入っても大丈夫なんだろうか。
だって、傷口が少しでもあれば……。
「イッテエエエエエ!」
酸が傷口に染みて、痛みで臭い消しどころではないだろう。
オジサンはすぐに飛び出してきた。
いつも朝活に行くときにベッドから出ないから、紐を引っ張って引きずっていた。
そんな状態で擦り傷ができない方がおかしい。
「オジシャンいいにおいしゅるね!」
「ああ、レモンが香ってくるね!」
ただ、痛みと引き換えにレモンの良いにおいがオジサンから漂ってくる。
特に毛並みも変わっていないため、レモンの香りがするただのオジサンだ。
いや、大マーモットか。
それに臭い消しができたことで新しい職業体験ができるようになった。
――調香師(生産職)
生産街の工房でも見たことないため、この町では俺だけだろう。
作り慣れたらチェリーにも教えて、調香師を増やすのも良さそうだ。
回復魔法をかけると、痛みも落ち着いたのか再び臭い消しのレモン水に入っていた。
「俺達先に寝るからな」
「ワッシはもう少し体を綺麗にしておくぞ!」
もはやレモン水の水浴びだ。
初めて出会った時も綺麗好きだったしな。
本人が良いなら気にせず、俺とヴァイルは寝ることにした。
翌朝、レモンのにおいで目を覚ました。
「邪魔だな」
俺の顔の上で寝ていたオジサンを持ち上げる。
爽やかな香りがするオジサンで目を覚ますって中々滅多にない光景だろう。
俺はいつものように紐に結びつけて、朝活の準備に向かう。
朝はいつも通りに冒険者ギルドでデイリークエストを受けていく。
「あら、ヴァイトくん今日は爽やかなにおいがするわね」
「俺ですか?」
声をかけてきたのは鑑定士の女性だ。
爽やかな香りってオジサンのことだろうか。
「ひょっとしてこいつのことですか?」
俺はまだ寝ているオジサンを持ち上げて、においを嗅がせる。
顔を近づけてオジサンのにおいを嗅いでいるのか、クンクンとしている。
「あっ、オジサンから良い香りがしているのね」
これで俺からにおいがしているわけではないことが伝わっただろう。
「私も嗅いでみたいです」
気づいた時には、冒険者ギルドにいる女性達が集まっていた。
今頃オジサンが起きていたら喜んでいたのにな。
まだいびきをかきながら眠っている。
「レモンのにおいをつけたらモテるのか」
「後でヴァイトに聞いてみるか」
ただ、それを見ていた冒険者ギルドにいる男達は見逃していなかった。
訓練場に行くと、ゾロゾロと男達が寄ってきた。
「なぁ、ヴァイト?」
「なんですか?」
「よかったら俺にもレモンのにおいがするやつを譲ってくれないか?」
声をかけてきたのはジェイドだ。
彼もにおいが気になるのだろうか。
エリックと違って、動き回るから汗もかきやすいのだろう。
「明日までで良いなら作りますよ?」
「おお、そうか! それならたくさん用意してもらえると助かる」
ジェイドの後ろには年上の冒険者達がいた。
きっとジェイドを使って俺に話しかけてきたのだろう。
関わりがないと中々話しかけづらいからな。
俺も勇者に声をかけるのは、人見知りだから怖くてできない。
初対面だから何をされるかわからないだろうし。
「よかったらにおいを嗅いでみますか?」
「良いのか?」
年上の冒険者達はレモンの匂いでも、どんなにおいがするのか気になっていたのだろう。
オジサンを囲んでクンクンとしている。
オジサンがオジサンに囲まれる。
なんとも言えない光景だ。
「はぁー、よく寝た……なんだこれええええええ!」
そんな中、オジサンは目を覚ました。
起きた瞬間にオジサンに囲まれて、においを嗅がれていたら、さすがにびっくりするか。
「ああ、お前が良いにおいするからさ」
「ワッシは女にモテモテになりたかったぞおおおお!」
急いで俺の元に逃げてきたと思ったら、足を何度も蹴ってくる。
相変わらず痛くないが、さっきまで女性達に囲まれていたことを言わないことにした。
「ワッシのモテモテ計画がああああああ!」
その後もしばらくはオジサンは一人……いや、一匹で騒いでいた。
77
お気に入りに追加
1,333
あなたにおすすめの小説
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

女神の代わりに異世界漫遊 ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~
大福にゃここ
ファンタジー
目の前に、女神を名乗る女性が立っていた。
麗しい彼女の願いは「自分の代わりに世界を見て欲しい」それだけ。
使命も何もなく、ただ、その世界で楽しく生きていくだけでいいらしい。
厳しい異世界で生き抜く為のスキルも色々と貰い、食いしん坊だけど優しくて可愛い従魔も一緒!
忙しくて自由のない女神の代わりに、異世界を楽しんでこよう♪
13話目くらいから話が動きますので、気長にお付き合いください!
最初はとっつきにくいかもしれませんが、どうか続きを読んでみてくださいね^^
※お気に入り登録や感想がとても励みになっています。 ありがとうございます!
(なかなかお返事書けなくてごめんなさい)
※小説家になろう様にも投稿しています

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる