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第二章 精霊イベント
83.NPC、臭い消しを作る
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「チェリー様!」
「ネーネ!」
「妹君ー!」
俺達はチェリーに頭を下げた。
それにしてもオジサンはどこか昔の人ぽく感じる。
俺のことも主人って呼ぶぐらいだからな。
「仕方ないわね!」
そう言ってチェリーは調べ始めた。
「えーっと、レモンを輪切りにして綺麗な水に浸すと、数時間から一日程度でできるって!」
「えっ、それだけか?」
「うん。それだけしか書いてないね」
思っていたよりも簡単にできるようだ。
ユーマを探していた時間が本当に無駄だったのを感じる。
今度あいつに会ったら、顔面落下で遊んでやろう。
ずっと逃げられてまだやれてないからな。
「ちゃちくがきちくになってるよ?」
「お兄ちゃんまたユーマさんのこと考えてるんだろうね」
「主人も恋に落ちたのか?」
「はぁ? それはないからな!」
オジサンもどこか勇者達に影響されているのだろう。
女性に好かれるには、好みを知るところから始まるからな。
俺は言われた通りに水を用意して、その間にヴァイルにレモンを切ってもらう。
「綺麗な水ってことは魔力水のほうが良いよな?」
魔力水はポーションを作る時に使う水だ。
普通の水に魔力を込めるだけだが、水と比べて純度が高くキラキラしているからな。
「ちゃちっくー?」
「どうした?」
「めがいちゃい!」
隣を見ると目をギュッと閉じているヴァイルがいた。
どうやらレモンを切っていた手で目を触ったのだろう。
俺が回復魔法をかけてあげると、目をパチパチとさせていた。
「ちゃちく、しゅごいね!」
「ああ、それぐらい任せなさい!」
俺の弟は今日も兄を頼ってくれる可愛い弟だ。
その隣ではオジサンが目にレモンの果汁を入れようとしていた。
「やめとけよ」
どれくらい痛いのか気になったのだろう。
「うぎゃあああああ! ちゃちくー、ワッシも目に――」
「うん、可愛く言っても無駄だぞ。自分で入れたのは見ていたからな」
「鬼畜ー!」
ジタバタと俺を蹴るが、何も悪くないからな。
少し遅かったが、事前に言ったはずだぞ。
「くくく、私が治してあげるよ」
そんな俺達を見てチェリーは笑っていた。
「じゃあ、夜の営業準備でもしようか」
「いつのまにかこんな時間になってたんだね」
臭い消しができるのを楽しみに待って、俺達は夜の営業準備をすることにした。
「ヴァイルー!」
「オジサンくしゃい!」
「へへへ、そんなこというなよ」
ヴァイルは相変わらずお客さん達のアイドルをしていた。
夜になると酒を飲む人も増えてくるため、酔っ払いの人達も出てくる。
「悪酔いはダメですよ」
「良いじゃないか……。俺もこんなに可愛い息子が欲し――」
俺は紐を取り出してにこりと笑う。
「やめておきます」
以前酔っ払ったお客さんに顔面落下をやってみたら、思ったよりも効果があった。
そのおかげで悪酔いをする人も減ってきた。
今もちょっとした出来心でヴァイルに近づこうとしたファンだろう。
「ちゃちく、ありあと!」
ほら、俺の弟はこんなに可愛いからな。
俺はすぐにヴァイルに抱きつく。
「そういえば今オジサンが臭いって言ってたけど……」
「うん! オジサンくしゃい!」
「ガーン!」
椅子に座って一緒に酒を飲んでいたはずの精霊オジサンが落ち込んでいる。
今は臭いって言葉に敏感だから気をつけないといけないな。
「ははは、お前臭いって!」
そんなオジサンにジェイドはさらに追い打ちをかける。
おいおい、もう耐えられなくて泣きそうな顔をしているぞ。
「それぐらいに――」
「ううん! オジサンがくしゃいの! こっちのオジサンはポカポカしゅる」
うん?
どういうことだ?
ヴァイルの指さしに合わせて言葉の意味を考える。
オジサンが臭くて、精霊オジサンはポカポカする?
「ひょっとして、オジサンは臭いけどうちのオジサンは臭くないってことか?」
「うん!」
俺達はヴァイルの言葉を勘違いしていた。
どうやら精霊のオジサンは臭くないようだ。
「うおおおおおお!」
「ぬおおおおおお!」
店の中には喜んで叫ぶオジサンと落ち込んで叫ぶオジサンが大量発生していた。
「ネーネ!」
「妹君ー!」
俺達はチェリーに頭を下げた。
それにしてもオジサンはどこか昔の人ぽく感じる。
俺のことも主人って呼ぶぐらいだからな。
「仕方ないわね!」
そう言ってチェリーは調べ始めた。
「えーっと、レモンを輪切りにして綺麗な水に浸すと、数時間から一日程度でできるって!」
「えっ、それだけか?」
「うん。それだけしか書いてないね」
思っていたよりも簡単にできるようだ。
ユーマを探していた時間が本当に無駄だったのを感じる。
今度あいつに会ったら、顔面落下で遊んでやろう。
ずっと逃げられてまだやれてないからな。
「ちゃちくがきちくになってるよ?」
「お兄ちゃんまたユーマさんのこと考えてるんだろうね」
「主人も恋に落ちたのか?」
「はぁ? それはないからな!」
オジサンもどこか勇者達に影響されているのだろう。
女性に好かれるには、好みを知るところから始まるからな。
俺は言われた通りに水を用意して、その間にヴァイルにレモンを切ってもらう。
「綺麗な水ってことは魔力水のほうが良いよな?」
魔力水はポーションを作る時に使う水だ。
普通の水に魔力を込めるだけだが、水と比べて純度が高くキラキラしているからな。
「ちゃちっくー?」
「どうした?」
「めがいちゃい!」
隣を見ると目をギュッと閉じているヴァイルがいた。
どうやらレモンを切っていた手で目を触ったのだろう。
俺が回復魔法をかけてあげると、目をパチパチとさせていた。
「ちゃちく、しゅごいね!」
「ああ、それぐらい任せなさい!」
俺の弟は今日も兄を頼ってくれる可愛い弟だ。
その隣ではオジサンが目にレモンの果汁を入れようとしていた。
「やめとけよ」
どれくらい痛いのか気になったのだろう。
「うぎゃあああああ! ちゃちくー、ワッシも目に――」
「うん、可愛く言っても無駄だぞ。自分で入れたのは見ていたからな」
「鬼畜ー!」
ジタバタと俺を蹴るが、何も悪くないからな。
少し遅かったが、事前に言ったはずだぞ。
「くくく、私が治してあげるよ」
そんな俺達を見てチェリーは笑っていた。
「じゃあ、夜の営業準備でもしようか」
「いつのまにかこんな時間になってたんだね」
臭い消しができるのを楽しみに待って、俺達は夜の営業準備をすることにした。
「ヴァイルー!」
「オジサンくしゃい!」
「へへへ、そんなこというなよ」
ヴァイルは相変わらずお客さん達のアイドルをしていた。
夜になると酒を飲む人も増えてくるため、酔っ払いの人達も出てくる。
「悪酔いはダメですよ」
「良いじゃないか……。俺もこんなに可愛い息子が欲し――」
俺は紐を取り出してにこりと笑う。
「やめておきます」
以前酔っ払ったお客さんに顔面落下をやってみたら、思ったよりも効果があった。
そのおかげで悪酔いをする人も減ってきた。
今もちょっとした出来心でヴァイルに近づこうとしたファンだろう。
「ちゃちく、ありあと!」
ほら、俺の弟はこんなに可愛いからな。
俺はすぐにヴァイルに抱きつく。
「そういえば今オジサンが臭いって言ってたけど……」
「うん! オジサンくしゃい!」
「ガーン!」
椅子に座って一緒に酒を飲んでいたはずの精霊オジサンが落ち込んでいる。
今は臭いって言葉に敏感だから気をつけないといけないな。
「ははは、お前臭いって!」
そんなオジサンにジェイドはさらに追い打ちをかける。
おいおい、もう耐えられなくて泣きそうな顔をしているぞ。
「それぐらいに――」
「ううん! オジサンがくしゃいの! こっちのオジサンはポカポカしゅる」
うん?
どういうことだ?
ヴァイルの指さしに合わせて言葉の意味を考える。
オジサンが臭くて、精霊オジサンはポカポカする?
「ひょっとして、オジサンは臭いけどうちのオジサンは臭くないってことか?」
「うん!」
俺達はヴァイルの言葉を勘違いしていた。
どうやら精霊のオジサンは臭くないようだ。
「うおおおおおお!」
「ぬおおおおおお!」
店の中には喜んで叫ぶオジサンと落ち込んで叫ぶオジサンが大量発生していた。
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