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第二章 精霊イベント

82.NPC、ユーマを探す

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 この時間帯ならユーマは依頼を終えて町の中にいるはず。

 俺達は分かれてユーマを探すことにした。

 オジサンと子どもだけで歩いてて問題ないかって?

 勇者達の精霊がその辺にたくさんいるため、特に目立つこともないだろう。

 どの精霊も基本は一緒にいるが、放し飼いのようなものだ。

 むしろオジサンの方が活発的に動かないため、紐で結んで引っ張っている。

 ヴァイルにはしっかり紐を持って歩くように伝えたい。

 まず俺はレックスの家に行くことにした。

 ユーマは冒険者ギルドの訓練場にいるか、レックスの家で家事を一緒にやっている。

「レックスー!」

「おっ、今日も一緒にパンでも作るか?」

 俺はレックスの家に入ると、いつも・・・のように家の掃除をしていた。

 あれからレックスは家事をしっかりするようになった。

 パン職人のデイリークエストで一つはパンを作らないといけないため、せっかくだからとレックスと一緒に作ることが多い。

 人っていつ変わるかわからないからな。

 昔の俺も病気で遊べなくなったら、誰も遊びに来なくなった。

 そんな悲しい思い出もある。

「いや、今ユーマを探しているんだけど」

「ユーマか? 今日は来てないぞ。訓練場にでもいるんじゃないのか?」

「わかった! ありがとう!」

 俺はレックスにお礼を伝えて、冒険者ギルドの訓練場に向かう。

 訓練場には勇者達がたくさんいた。

「ヴァイト鬼ごっこしようぜ!」

「いや、ここは顔面落下だぞ」

「いやいや、俺はAGI重視だからな」

 気づいた時には勇者が寄ってくる。

 この世界では俺も人気者になった。

 みんなして遊びたいって言ってくれるぐらいだからな。

「あれ……? こんなところでどうしたんだ?」

 声をかけてきたのは解体師の男だ。

「ふふふ、君も一緒に捌こうか?」

「相変わらず迫力がありますね……」

 隣には解体師の弟子になった勇者がニコニコしながら、大きな包丁を持っていた。

 明らかに何かヤバいやつの目をしているが、犯罪は犯していないらしい。

 世の中変わった人が多いが、死んだ目をした勇者は盗賊の確保と解体師を生業としている。

 犯罪をしないためにここで衝動を抑制しているとか。

 見た目と違って良いやつだ。

「ユーマを見なかったか?」

「俺達は見ていないぞ?」

「へへへ、俺が捌いて――」

「ないだろ!」

 男は勇者に強めのツッコミを入れていた。

 衝撃でよろついているが、それでもニヤニヤとしている勇者。

 色んな意味で彼は勇者なんだろう。

 自分から大柄の男に叩かれて嬉しそうにしているからな。

「じゃあ、斥候の練習でもしているのか……」

 斥候のスキル練習をしていたら、正直見つけられるかどうかわからないだろう。

 隠れるために練習をしているからな。

「俺と鬼ごっこ……あれ? ヴァイトはどこ行った?」

 俺も斥候スキルを発動させて、勇者達から逃れる。

 ひとまず店に戻って、ヴァイルとオジサンが帰ってくるのを待ってみよう。


 しばらくするとヴァイルとオジサンが帰ってきた。

 手にはたくさんの食べ物が抱えられていた。

 たくさんお土産をもらったのだろう。

 町の人達もそれだけ慣れてきたってことだな。

 いや、思ったよりも目立っていたようだ。

 弟は世界一可愛いからな。

「ユーマは見つかったか?」

「いにゃいよ?」

「ワッシも見つからないぞ!」

 やはりユーマがどこにいるのかはわからないようだ。

 勇者達であれば居場所を知っているのかもしれないが、声をかける人を間違えるとナンパに思われる。

 稀に聞いたことのない、地獄からのような低い呻き声が聞こえてくるからな。

 ある程度距離は取っていたほうが良い。

「んー、どうやって作れば良いんだろうな」

「にゃ!」

 レモンをテーブルの上に置いてどうするのか考える。

「主人がいつも突っ走るからいけないんだぞ?」

「すまない」

 それを言われたら何も言えない。

 時間効率を良くするために、いつも急いでるからな。

「深刻な顔してどうしたの?」

 そんな中、デイリークエストを終えたチェリーが帰ってきた。

「ユーマがどこにいるかわからなくてな」

「あー、勇者のお友達だよね? この時間なら宿屋にいるんじゃない?」

「宿屋?」

 前に探したがこの町に宿屋はなかったはず。

 チェリーも職業体験を頑張りすぎて疲れているのかもしれない。

「あー、お兄ちゃん達には入れないもんね」

 どうやら勇者専用の勇者しか見つけられない宿屋があるらしい。

 リスポーンの宿屋と、また知らない勇者語を話していた。

「しばらくは臭い消しは作れないな」

「ワッシのモテモテ計画は遥か彼方に――」

「調べてみようか?」

 そう言ってチェリーはHUDシステムで何かをやり出した。

「レモンで臭い消し――」

「うわぁ! 別にユーマじゃなくてもよかったんだよ!」

 俺達は臭い消しの作り方を聞くために、ユーマを探していた。

 だが、調べられる人が他の勇者でも良いことを忘れていた。
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