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第二章 精霊イベント

81.NPC、生活が変わる

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 オジサンが来てから俺の生活はかなり変化してきた。

「うっ……また振られた」

「あー、次は精霊を狙ってみたらどうだ?」

「あいつらはワッシのことを好かん!」

「うん。それはオジサンが悪いかな」

 オジサンは恋多き精霊らしく、人間の女性ばかりに恋をしては振られていた。

 アプローチ方法がダメなのかと、色々試してみたが中々うまくいかないようだ。

 最近だとデイリークエストよりも、女性に声をかけにいくことの方が増えた。

 そのせいか俺までナンパ男だと勘違いされている。

 まぁ、一緒に可愛い弟であるヴァイルを連れているから問題ないだろう。

 チェリーからはナンパするのに、子どもと動物を使っている危ないやつにならないようにと言われていたが、もうそれは遅いだろう。

「ああ、ダメ男ヴァイトも素敵よね」

「ええ、スパダリNPCはどこかにいないかしら」

「落ち込んでいるところを慰めたらきっとイチコロよ」

 勇者達からもダメ男扱いをされている。

 その結果追いかけられることも減ったから問題ない。

 それに以前より可愛い精霊が増えて、勇者達は我が子をもふもふするのに精一杯だ。

 それよりも落ち込んでいるのは、俺じゃなくてオジサンだからな。

 俺も落ち込んでいるオジサンをもふもふする。

 うん……。

 相変わらず獣臭がするな。

 良い香りのする香水でもあれば良いんだけどな……。

「香水!?」

 俺はオジサンが振られている理由がにおいではないかと思った。

 一緒にいるから俺達家族は慣れているが、他の人からしたら臭いのかもしれない。

「なぁ、ヴァイル?」

「にゃに?」

「オジサンって臭いか?」

「くちゃい!」

 どうやらオジサンは臭いようだ。

 獣人は人間より鼻が敏感だからな。

「ななな、ワッシはフローラルな獣臭がするぞ?」

「フローラルな獣臭ってなんだよ」

「オジサンくしゃいくしゃい」

 落ち込むオジサンを見て楽しいのか、ヴァイルは追い討ちをかけていた。

 子どもって時には残酷になるからな。

 さすがにそんなに言ったら可哀想だ。

「よし、消臭剤と香水を作ろうか!」

「しょーしゅーしゃい?」
「香水?」

「ああ、オジサンからは加齢臭が出てくるかな」

「ワッシはフローラルな――」

「はいはい、臭いってヴァイルが思うなら仕方ないだろ」

「くっ……」

 俺達はどうやったらにおいを消せるのか探すことにした。

「動物達が体を洗う時って水浴び以外にある?」

「ワッシが知っているのは砂浴びくらいだな」

「すなあしょびしゅき!」

 どうやらヴァイルは砂遊びと砂浴びを勘違いしているようだ。

 いや、砂遊びしながら砂浴びをしている可能性もある。

 さすがに砂をかけて臭いを取るのはできない気がする。

 逆に汚れて灰色が黒になってしまうだろう。

「おっ、こんなところで何やってるんだ?」

 悩んでいるところに声をかけてきたのはユーマだった。

 そういえば、勇者なら何かのシステムを使って調べられると言っていた。

「臭い消しの作り方って調べられるか?」

「臭い消しか……? ちょっと待ってろよ」

 そう言ってユーマは調べ出した。

「えーっと、レモンにあるクエン酸が良いらしいぞ?」

「レモン? それなら簡単に手に入りそうだな」

 クエン酸ってどこかで聞いたことはあるが、勇者語なのか一般的な用語なのかはわからない。

 ただ、レモンでにおいが消えるのか試してみる価値はある。

 早速レモンを買いに行くことにした。

「おい、作り方は……って相変わらず人の話を聞かないやつだな」

 ユーマが何かを言っていたが、俺には聞こえなかった。


「おっ、ヴァイト! 今日は何が欲しいんだ?」

「レモンをたくさん欲しいです」

「レモン? 何に使うんだ?」

「臭い消しにクエン酸が良いらしいです」

「クエン……酸?」

 果物屋の店主もクエン酸のことは知らないようだ。

 やはり勇者語なんだろう。

 初めて作るため、試しに5個レモンを買うことにした。

「これでワッシもモテモテか?」

「ああ、きっとモテモテだぞ!」

 これでオジサンはモテモテのオジサンになるだろう。

 みんなでウキウキしながら歩いていると、ヴァイルが肝心なことに気づいた。

「ちゃちく、どうやってちゅくるの?」

「あっ……」

「主人のポンコツ!」

 オジサンは俺の足をドンドンと踏みつけていた。

 俺達は再びユーマを探すために町の中を駆け巡った。
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