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第二章 精霊イベント
67.NPC、家畜と家に帰る
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再び肩車して、俺の住む町に戻っていく。
「ちゃちくのおうちはどんなの?」
「んー、ご飯が食べられるとこかな」
「ごはん!?」
雨が降ってきたと思ったら、獣人の少年からよだれがポタポタ垂れていた。
たしかお腹が鳴っていた子もこの子だった気がする。
相当お腹が空いているのだろうか。
「昨日はご飯食べたの?」
「んーん、きゃちくはたべたらだめなの」
その言葉にまた胸が締め付けられる。
昨日はあれから逃げるようにいなくなったと聞いている。
誰も食事を与えていなかったら、この子は何も食べずに過ごしていたことになるだろう。
「そうか。帰ったらたくさんご飯食べような」
「うん! たのちみ!」
町に着くまで獣人の少年は楽しそうに、肩の上で静かに座ってた。
何を食べるのか考えているのか、俺の髪の毛は家に着く時にはベタベタになっていた。
町の中に入ると、やはり俺の頭の上にいる少年が注目された。
いや、一部は俺の変わった行動に、また何かあったのかと聞いてくる人もいる。
よくユーマやレックスを肩に担いでいたから、そういう風に見えるのかもしれない。
「ただいま!」
「おっ、やっと帰って……子どもでもできたんか?」
バビットは何を言っているのだろうか。
さすがにすぐ子どもができるはずない。
子どもはコウノトリが運んできてくれるって聞いたからな。
そういえば、家畜にはコウノトリがいっぱい運んでくるのだろうか。
「ちょっと調理場を借りるね」
俺は獣人の少年を椅子に座らせると、すぐに調理場で簡単に食べられるものを用意する。
あまり食べていないなら、胃に入っても刺激が強くないものが良いだろう。
できたものをテーブルに置くと、キラキラした目で見ていた。
「ちゃちく、ちゃべていいの?」
「ああ、いいぞ」
獣人の少年はよほどお腹が空いていたのか、すぐに食べようとしていた。
「あちっ!?」
「スープだから冷まさないといかんぞ?」
俺はスプーンで一口掬うと、フーフーと冷まして口の中に入れる。
とろけたような表情に変わり、頬を手で押さえていた。
「おいちい!」
「当たり前だ。俺がここに来て一番美味しいと思った料理だからな」
俺が作ったのはこの世界に来て、一番初めに食べたバビットが作ったスープだ。
レシピは以前聞いていたため、初めて作ったが俺でも上手にできた。
いざ作ってみると、お肉と野菜も入って栄養面がしっかりしているのに、スープになっているから体が温まって食べやすい。
それに硬いパンと違って、食べやすいのが特徴だ。
そんな様子をバビットは笑ってみていた。
やっぱりバビットから見ても、獣人の子どもは可愛いからな。
「それでその獣人の子はどうしたんだ?」
バビットも突然獣人の子が来て驚いていたからな。
それだけこの町で獣人を見かけることがない。
いるのは人族かブギーやボギーといった小人族ぐらいだ。
「きゃちくなの!」
口から野菜を飛ばしながら話している。ただ、バビットにはちゃんと聞こえていたのだろう。
一瞬にして表情が変わった。
「家畜か?」
その言葉に俺は頷く。
バビットの強く握る手から、何を考えているのかすぐにわかった。
きっと俺と同じ気持ちなんだろう。
それだけ家畜と言われる存在が、あまり良くないものだと知れ渡っている。
「きゃちくいいよ? ちゃちくとにてるよ?」
そんなことも知らない獣人の少年の笑顔に、俺は居ても立っても居られなかった。
気づいた時には強く抱きしめていた。
「ちゃちく痛いよ……」
「ああ、そうだな」
「ちゃちく……あったかいね」
この子は愛情も感じることなく、何も知らずに生きてきたのだろう。
俺の体に体をスリスリとしていた。
うん。
俺は決心した。
「この子も一緒に――」
「住んでもいいですか?」
「住むぞ!」
俺とバビットの声が重なった。
どうやら考えは同じようだ。
「ちゅむの?」
ただ、獣人の少年にはうまく伝わっていないような気がする。
首をずっと傾げていたからな。
そもそも家畜なら、どこかに住むという認識もないかもしれない。
「ああ、毎日遊んで美味しいご飯を食べようか!」
「あしょぶ! たべりゅ!」
きっとこうやって言われたら嬉しいだろう。
そう思って伝えてみたら理解したようだ。
俺達に新しい家族が仲間入りした。
「ちゃちくのおうちはどんなの?」
「んー、ご飯が食べられるとこかな」
「ごはん!?」
雨が降ってきたと思ったら、獣人の少年からよだれがポタポタ垂れていた。
たしかお腹が鳴っていた子もこの子だった気がする。
相当お腹が空いているのだろうか。
「昨日はご飯食べたの?」
「んーん、きゃちくはたべたらだめなの」
その言葉にまた胸が締め付けられる。
昨日はあれから逃げるようにいなくなったと聞いている。
誰も食事を与えていなかったら、この子は何も食べずに過ごしていたことになるだろう。
「そうか。帰ったらたくさんご飯食べような」
「うん! たのちみ!」
町に着くまで獣人の少年は楽しそうに、肩の上で静かに座ってた。
何を食べるのか考えているのか、俺の髪の毛は家に着く時にはベタベタになっていた。
町の中に入ると、やはり俺の頭の上にいる少年が注目された。
いや、一部は俺の変わった行動に、また何かあったのかと聞いてくる人もいる。
よくユーマやレックスを肩に担いでいたから、そういう風に見えるのかもしれない。
「ただいま!」
「おっ、やっと帰って……子どもでもできたんか?」
バビットは何を言っているのだろうか。
さすがにすぐ子どもができるはずない。
子どもはコウノトリが運んできてくれるって聞いたからな。
そういえば、家畜にはコウノトリがいっぱい運んでくるのだろうか。
「ちょっと調理場を借りるね」
俺は獣人の少年を椅子に座らせると、すぐに調理場で簡単に食べられるものを用意する。
あまり食べていないなら、胃に入っても刺激が強くないものが良いだろう。
できたものをテーブルに置くと、キラキラした目で見ていた。
「ちゃちく、ちゃべていいの?」
「ああ、いいぞ」
獣人の少年はよほどお腹が空いていたのか、すぐに食べようとしていた。
「あちっ!?」
「スープだから冷まさないといかんぞ?」
俺はスプーンで一口掬うと、フーフーと冷まして口の中に入れる。
とろけたような表情に変わり、頬を手で押さえていた。
「おいちい!」
「当たり前だ。俺がここに来て一番美味しいと思った料理だからな」
俺が作ったのはこの世界に来て、一番初めに食べたバビットが作ったスープだ。
レシピは以前聞いていたため、初めて作ったが俺でも上手にできた。
いざ作ってみると、お肉と野菜も入って栄養面がしっかりしているのに、スープになっているから体が温まって食べやすい。
それに硬いパンと違って、食べやすいのが特徴だ。
そんな様子をバビットは笑ってみていた。
やっぱりバビットから見ても、獣人の子どもは可愛いからな。
「それでその獣人の子はどうしたんだ?」
バビットも突然獣人の子が来て驚いていたからな。
それだけこの町で獣人を見かけることがない。
いるのは人族かブギーやボギーといった小人族ぐらいだ。
「きゃちくなの!」
口から野菜を飛ばしながら話している。ただ、バビットにはちゃんと聞こえていたのだろう。
一瞬にして表情が変わった。
「家畜か?」
その言葉に俺は頷く。
バビットの強く握る手から、何を考えているのかすぐにわかった。
きっと俺と同じ気持ちなんだろう。
それだけ家畜と言われる存在が、あまり良くないものだと知れ渡っている。
「きゃちくいいよ? ちゃちくとにてるよ?」
そんなことも知らない獣人の少年の笑顔に、俺は居ても立っても居られなかった。
気づいた時には強く抱きしめていた。
「ちゃちく痛いよ……」
「ああ、そうだな」
「ちゃちく……あったかいね」
この子は愛情も感じることなく、何も知らずに生きてきたのだろう。
俺の体に体をスリスリとしていた。
うん。
俺は決心した。
「この子も一緒に――」
「住んでもいいですか?」
「住むぞ!」
俺とバビットの声が重なった。
どうやら考えは同じようだ。
「ちゅむの?」
ただ、獣人の少年にはうまく伝わっていないような気がする。
首をずっと傾げていたからな。
そもそも家畜なら、どこかに住むという認識もないかもしれない。
「ああ、毎日遊んで美味しいご飯を食べようか!」
「あしょぶ! たべりゅ!」
きっとこうやって言われたら嬉しいだろう。
そう思って伝えてみたら理解したようだ。
俺達に新しい家族が仲間入りした。
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