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第二章 精霊イベント
66.NPC、家畜の現状を知る
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俺はすぐに町に戻った。
小さな獣人少年がいう〝家畜〟。
それが本当に俺が思っているような言葉なんだろうか。
「お前はここに住んでいるんだよな?」
「ちがうよ? おうちないもん!」
言葉一つ一つが胸に刺さっていく。
こんなに小さな子に、自分の家がないって言わせて良いのだろうか。
冗談だと思い町の人にも声をかけたが、この子の両親は見当たらなかった。
途中で一緒に捕まっていた少女に会って話を聞いた。
どうやら彼女達が、捕まった頃には獣人の少年はすでにアジトにいたらしい。
「本当に家畜なのか……?」
「きゃちくだよ?」
俺の言葉に疑問を持つこともなく、自分のことを家畜という。
感じたことのない、どうすることもできない気持ちと胸の締め付けで息ができなくなる。
いや、息ができないのは、肩車している獣人の少年が俺の鼻に指を突っ込んでいるからかもしれない。
それでも楽しそうにしている姿を見て、胸がポカポカとしてくる。
「うぁ! 昨日のやつじゃないか!」
斥候スキルを使っていないためか、俺に声をかける人がいた。
「えーっと……昨日門番をやっていた方ですか?」
「ああ、今日は休みだからわかりにくかったか」
制服ではなく俺達と同じような服を着ていた。
制服を着ていなければ、誰かもわからない。
「おっ、昨日はいつのまにか帰ってたけど、今日はお兄ちゃんに遊んでもらってたのか?」
「うん!」
彼も獣人の少年に優しく声をかけている。
「そういえば、この子が自分のことを家畜って言うんだけど――」
家畜のことを聞こうとしたら、彼の表情は一気に変化した。
俺が呪術師や狂戦士になる時は、こんな感じなんだろうか。
「家畜って本当に言ったのか?」
「うん! オラきゃちく!」
何も気にせずに返事をする獣人の少年。
怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えるなんとも言えない表情。
その表情が家畜という言葉をさらにリアルにしていく。
「家畜って……」
「ああ、奴隷にするために裏で子どもを生ませている行為だな」
彼の話では、この国には奴隷という制度が存在すると言っていた。
それにも驚いたが、犯罪者が刑期を過ごす時に奴隷として奉仕活動をするためらしい。
単純に言えば、犯罪者を管理するために奴隷制度があるということだ。
ただ、その中でも人身売買を裏で生業にしている人達もいるのが現状。
悪党のように人を誘拐する奴らもいれば、強制的に子どもを生ませて奴隷として売る。
後者がいわゆる〝家畜〟と呼ばれている存在らしい。
きっと誘拐した子を売る時に、一緒に獣人の少年も売ろうとして家畜ブリーダーから買い取っていたのだろう。
奴隷を管理している人が、直接家畜ブリーダーと繋がることはない。
だからこそ、家畜ブリーダーが見つからず摘発されないと言っていた。
「この子はどうなりますか?」
「このままだとあいつらと一緒に王都に行って、孤児院で生活することになるだろう」
どうやらこの国にも児童養護施設のようなものが存在するらしい。
それを聞いて少し安心した。
「そういえば、あいつらを捕まえた報酬は渡さないといけないんだが……」
そろそろ時間も経過して、町に戻らないといけない。
店の営業もあるからな。
「また、後日でもいいですか?」
「ああ、俺達はあそこにいるからまた来てくれ!」
教会の近くにある建物に警備隊の建物があるらしい。
俺は獣人の少年を彼に預けようとして、肩から下ろそうとする。
「やっ!」
それに気づいたのか、頑なに俺から離れないように掴まっていた。
「一緒に遊んでて楽しかったのか?」
「うん!」
彼が獣人の少年に聞くと嬉しそうに返事をしていた。
遊んだって言っても、森まで行って引き返したぐらいだ。
特に遊んだ記憶もない。
それでも俺と一緒にいて楽しかったのだろう。
どうしようか迷っていると、彼からある提案をされた。
「王都に行くまで、しばらく面倒をみてくれないか? きっと俺達警備隊がみるよりも、君の方が適しているだろう」
そう言って彼はいくらかお金を渡してきた。
三日後にはこの町から王都に向かうことになっている。
それまでにかかるお金を彼が代わりに出してくれるらしい。
このまま引き離してもよかったが、幼い子どもを無理やり引き離すのも可哀想に感じてしまう。
「よし、俺の家まで一緒に帰ろうか」
「うん! ちゃちくとあしょぶ!」
これから店の営業があるため、遊べるかはわからないが、ひとまずバビットに相談しないといけないな。
俺は急いで自分の住む町に戻ることにした。
小さな獣人少年がいう〝家畜〟。
それが本当に俺が思っているような言葉なんだろうか。
「お前はここに住んでいるんだよな?」
「ちがうよ? おうちないもん!」
言葉一つ一つが胸に刺さっていく。
こんなに小さな子に、自分の家がないって言わせて良いのだろうか。
冗談だと思い町の人にも声をかけたが、この子の両親は見当たらなかった。
途中で一緒に捕まっていた少女に会って話を聞いた。
どうやら彼女達が、捕まった頃には獣人の少年はすでにアジトにいたらしい。
「本当に家畜なのか……?」
「きゃちくだよ?」
俺の言葉に疑問を持つこともなく、自分のことを家畜という。
感じたことのない、どうすることもできない気持ちと胸の締め付けで息ができなくなる。
いや、息ができないのは、肩車している獣人の少年が俺の鼻に指を突っ込んでいるからかもしれない。
それでも楽しそうにしている姿を見て、胸がポカポカとしてくる。
「うぁ! 昨日のやつじゃないか!」
斥候スキルを使っていないためか、俺に声をかける人がいた。
「えーっと……昨日門番をやっていた方ですか?」
「ああ、今日は休みだからわかりにくかったか」
制服ではなく俺達と同じような服を着ていた。
制服を着ていなければ、誰かもわからない。
「おっ、昨日はいつのまにか帰ってたけど、今日はお兄ちゃんに遊んでもらってたのか?」
「うん!」
彼も獣人の少年に優しく声をかけている。
「そういえば、この子が自分のことを家畜って言うんだけど――」
家畜のことを聞こうとしたら、彼の表情は一気に変化した。
俺が呪術師や狂戦士になる時は、こんな感じなんだろうか。
「家畜って本当に言ったのか?」
「うん! オラきゃちく!」
何も気にせずに返事をする獣人の少年。
怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えるなんとも言えない表情。
その表情が家畜という言葉をさらにリアルにしていく。
「家畜って……」
「ああ、奴隷にするために裏で子どもを生ませている行為だな」
彼の話では、この国には奴隷という制度が存在すると言っていた。
それにも驚いたが、犯罪者が刑期を過ごす時に奴隷として奉仕活動をするためらしい。
単純に言えば、犯罪者を管理するために奴隷制度があるということだ。
ただ、その中でも人身売買を裏で生業にしている人達もいるのが現状。
悪党のように人を誘拐する奴らもいれば、強制的に子どもを生ませて奴隷として売る。
後者がいわゆる〝家畜〟と呼ばれている存在らしい。
きっと誘拐した子を売る時に、一緒に獣人の少年も売ろうとして家畜ブリーダーから買い取っていたのだろう。
奴隷を管理している人が、直接家畜ブリーダーと繋がることはない。
だからこそ、家畜ブリーダーが見つからず摘発されないと言っていた。
「この子はどうなりますか?」
「このままだとあいつらと一緒に王都に行って、孤児院で生活することになるだろう」
どうやらこの国にも児童養護施設のようなものが存在するらしい。
それを聞いて少し安心した。
「そういえば、あいつらを捕まえた報酬は渡さないといけないんだが……」
そろそろ時間も経過して、町に戻らないといけない。
店の営業もあるからな。
「また、後日でもいいですか?」
「ああ、俺達はあそこにいるからまた来てくれ!」
教会の近くにある建物に警備隊の建物があるらしい。
俺は獣人の少年を彼に預けようとして、肩から下ろそうとする。
「やっ!」
それに気づいたのか、頑なに俺から離れないように掴まっていた。
「一緒に遊んでて楽しかったのか?」
「うん!」
彼が獣人の少年に聞くと嬉しそうに返事をしていた。
遊んだって言っても、森まで行って引き返したぐらいだ。
特に遊んだ記憶もない。
それでも俺と一緒にいて楽しかったのだろう。
どうしようか迷っていると、彼からある提案をされた。
「王都に行くまで、しばらく面倒をみてくれないか? きっと俺達警備隊がみるよりも、君の方が適しているだろう」
そう言って彼はいくらかお金を渡してきた。
三日後にはこの町から王都に向かうことになっている。
それまでにかかるお金を彼が代わりに出してくれるらしい。
このまま引き離してもよかったが、幼い子どもを無理やり引き離すのも可哀想に感じてしまう。
「よし、俺の家まで一緒に帰ろうか」
「うん! ちゃちくとあしょぶ!」
これから店の営業があるため、遊べるかはわからないが、ひとまずバビットに相談しないといけないな。
俺は急いで自分の住む町に戻ることにした。
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