54 / 150
第二章 精霊イベント
54.NPC、社畜誕生を喜ぶ
しおりを挟む
トイレから戻ってきたバビットは、お腹をさすっていた。まだ、お腹が痛いのだろう。
俺達は同じものを食べているが、バビットだけ別の違うものを食べたのか。
一人でお酒を飲んでいるため、つまみが原因なのかもしれない。
俺はともかくVITが低いチェリーも健康だ。
「お前達は何をやっているんだ?」
「営業の準備です」
「今日はもう休み――」
「いや、大丈夫ですよ!」
俺の言葉にバビットは首を傾げていた。
いつもウェイターでしか働いていなかったが、ある程度のメニューは見て学んでいる。
「掃除は終わりました! メニューもいくつかに絞れば良いですよね?」
「ああ、それで大丈夫!」
それに俺達は事前にメニューを決めて、それ以外は出せないと待っている客に伝えた。
並んでいるのは今のところほとんどが冒険者だからな。
それなら俺達ならできる気がした。
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ! よっぽどダメだと思ったら助けてください」
「ああ、わかった」
お腹が痛いはずのバビットは、どこか嬉しそうに笑っていた。
気にせずトイレにいけると思ったのだろう。
再びトイレに駆け込んで行った。
「お兄ちゃん、肉焼きプレート入りました」
「了解!」
チェリーはその場で注文が入ったやつを伝える。
何かにメモをする習慣もないため、頼んだ料理はウェイターである俺が覚えていた。
それにチェリーのINTでは、何の料理があるのか記憶するだけで精一杯だろう。
そこにプラスして、どのテーブルの誰が頼んだかを記憶しないといけない。
きっと頭が混乱してしまうだろう。
そこで注文されたテーブルの前で料理名を伝えることで、俺が作るメニューと席を覚えることにした。
「はい、これを3番目のテーブルにお願いします。あとはお客さんに確認して」
「わかりました」
それを何回か繰り返していくと、ウェイターのデイリークエストがクリアしたようだ。
そして、満席になり全員に料理が届くと、料理人の仕事は新しい客が入ってくるまでなくなる。
その期間にチェリーがサラダの準備をして、俺が客の相手をすることにした。
「なぁ、あの子とは本当に兄妹みたいな感じなのか?」
「そうだけど?」
ここ最近、やけにジェイドはこういう話ばかりしてくる。
俺達の関係が気になるのだろうか。
「まぁ、まだヴァイトは子どもだからね」
「そうだよ。子どもだから仕方ない」
「中身がまだまだ幼いもんなー」
実際の年齢はわからないが、体だけ大きくなっている気がする。
それはジェイドやエリックも感じているのだろう。
「そんな子どもより弱い俺達って……また鬼ごっこするか?」
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
「ちょっとジェイドさん! エリックさんを狂わすのやめてくださいよ」
「楽しいから良いじゃないか。それにやっと呪術師になったらしいからな」
その言葉を聞いて、俺は早速弟子に入りをお願いすることにした。
「よかったら弟子に――」
「ん? 何かあったのかな?」
きっと俺の目があまりにもキラキラしていたのだろう。
普段のエリックに戻ってしまった。
ジェイドの話では、呪術師として魔法を使う時は正反対の性格に変わるらしい。
普段の時は全く呪術は使えないと言っていた。
そのことをエリックは知らないらしい。
輝かしい人や明るい人といると、元に戻るという呪術師は謎の職業だ。
きっと俺の狂戦士と似たような職業なんだろう。
穏やかなエリックと闇の部分を持ったエリック。
どちらのエリックも俺は好きだが、弟子になるなら、ずっとエリックを追いかけ回さないといけないのだろう。
「あっ……お兄ちゃん!」
チェリーが調理場から声をかけてきた。
何かあったのかと思い、急いで駆け寄るとチェリーの周囲から文字が円形に描かれたものが現れた。
まるで勇者が召喚された、祠にあったやつに似ている。
「あれは魔法陣って言って、勇者達が一人前になった時に出てくるんだ」
「魔法陣?」
「ああ、どうやら俺達と違って勇者は何か一人前になる基準があるのだろう」
勇者とは違って、俺達は師匠が一人前だと思ったタイミングで見習い期間が終了する。
しかし、勇者達は足元に魔法陣が現れたタイミングで何かが変わるらしい。
きっとHUDシステムにあった、転職クエストが終わった時に魔法陣が出る仕組みなんだろう。
「お兄ちゃん、私社畜になったよ!」
「ぶふっ!」
なぜか店内にいた客達が全員吹き出した。
ああ、これで妹チェリーは立派な社畜になった。
「ちょ、ヴァイト! お前はチェリーちゃんに何をさせたんだ?」
「えっ? 社畜だけど?」
「はぁー、ヴァイトらしいって言ったらそうだけど……」
「一人前の社畜って面白そうじゃないか!」
呆れた顔をしているジェイドの肩をレックスが宥めるように叩いていた。
そんなに社畜がおかしいのだろうか。
たくさんの職業体験ができて、俺としては良い才能だと思うけどな。
「まぁ、今日はチェリーちゃんの一人前の社畜記念だな!」
店の中でチェリーの一人前社畜記念パーティーが急遽開かれた。
ここに唯一の社畜プレイヤーが誕生した。
俺達は同じものを食べているが、バビットだけ別の違うものを食べたのか。
一人でお酒を飲んでいるため、つまみが原因なのかもしれない。
俺はともかくVITが低いチェリーも健康だ。
「お前達は何をやっているんだ?」
「営業の準備です」
「今日はもう休み――」
「いや、大丈夫ですよ!」
俺の言葉にバビットは首を傾げていた。
いつもウェイターでしか働いていなかったが、ある程度のメニューは見て学んでいる。
「掃除は終わりました! メニューもいくつかに絞れば良いですよね?」
「ああ、それで大丈夫!」
それに俺達は事前にメニューを決めて、それ以外は出せないと待っている客に伝えた。
並んでいるのは今のところほとんどが冒険者だからな。
それなら俺達ならできる気がした。
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ! よっぽどダメだと思ったら助けてください」
「ああ、わかった」
お腹が痛いはずのバビットは、どこか嬉しそうに笑っていた。
気にせずトイレにいけると思ったのだろう。
再びトイレに駆け込んで行った。
「お兄ちゃん、肉焼きプレート入りました」
「了解!」
チェリーはその場で注文が入ったやつを伝える。
何かにメモをする習慣もないため、頼んだ料理はウェイターである俺が覚えていた。
それにチェリーのINTでは、何の料理があるのか記憶するだけで精一杯だろう。
そこにプラスして、どのテーブルの誰が頼んだかを記憶しないといけない。
きっと頭が混乱してしまうだろう。
そこで注文されたテーブルの前で料理名を伝えることで、俺が作るメニューと席を覚えることにした。
「はい、これを3番目のテーブルにお願いします。あとはお客さんに確認して」
「わかりました」
それを何回か繰り返していくと、ウェイターのデイリークエストがクリアしたようだ。
そして、満席になり全員に料理が届くと、料理人の仕事は新しい客が入ってくるまでなくなる。
その期間にチェリーがサラダの準備をして、俺が客の相手をすることにした。
「なぁ、あの子とは本当に兄妹みたいな感じなのか?」
「そうだけど?」
ここ最近、やけにジェイドはこういう話ばかりしてくる。
俺達の関係が気になるのだろうか。
「まぁ、まだヴァイトは子どもだからね」
「そうだよ。子どもだから仕方ない」
「中身がまだまだ幼いもんなー」
実際の年齢はわからないが、体だけ大きくなっている気がする。
それはジェイドやエリックも感じているのだろう。
「そんな子どもより弱い俺達って……また鬼ごっこするか?」
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
「ちょっとジェイドさん! エリックさんを狂わすのやめてくださいよ」
「楽しいから良いじゃないか。それにやっと呪術師になったらしいからな」
その言葉を聞いて、俺は早速弟子に入りをお願いすることにした。
「よかったら弟子に――」
「ん? 何かあったのかな?」
きっと俺の目があまりにもキラキラしていたのだろう。
普段のエリックに戻ってしまった。
ジェイドの話では、呪術師として魔法を使う時は正反対の性格に変わるらしい。
普段の時は全く呪術は使えないと言っていた。
そのことをエリックは知らないらしい。
輝かしい人や明るい人といると、元に戻るという呪術師は謎の職業だ。
きっと俺の狂戦士と似たような職業なんだろう。
穏やかなエリックと闇の部分を持ったエリック。
どちらのエリックも俺は好きだが、弟子になるなら、ずっとエリックを追いかけ回さないといけないのだろう。
「あっ……お兄ちゃん!」
チェリーが調理場から声をかけてきた。
何かあったのかと思い、急いで駆け寄るとチェリーの周囲から文字が円形に描かれたものが現れた。
まるで勇者が召喚された、祠にあったやつに似ている。
「あれは魔法陣って言って、勇者達が一人前になった時に出てくるんだ」
「魔法陣?」
「ああ、どうやら俺達と違って勇者は何か一人前になる基準があるのだろう」
勇者とは違って、俺達は師匠が一人前だと思ったタイミングで見習い期間が終了する。
しかし、勇者達は足元に魔法陣が現れたタイミングで何かが変わるらしい。
きっとHUDシステムにあった、転職クエストが終わった時に魔法陣が出る仕組みなんだろう。
「お兄ちゃん、私社畜になったよ!」
「ぶふっ!」
なぜか店内にいた客達が全員吹き出した。
ああ、これで妹チェリーは立派な社畜になった。
「ちょ、ヴァイト! お前はチェリーちゃんに何をさせたんだ?」
「えっ? 社畜だけど?」
「はぁー、ヴァイトらしいって言ったらそうだけど……」
「一人前の社畜って面白そうじゃないか!」
呆れた顔をしているジェイドの肩をレックスが宥めるように叩いていた。
そんなに社畜がおかしいのだろうか。
たくさんの職業体験ができて、俺としては良い才能だと思うけどな。
「まぁ、今日はチェリーちゃんの一人前の社畜記念だな!」
店の中でチェリーの一人前社畜記念パーティーが急遽開かれた。
ここに唯一の社畜プレイヤーが誕生した。
73
お気に入りに追加
1,330
あなたにおすすめの小説
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる