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第二章 精霊イベント

53.NPC、妹弟子のための努力

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 新しい妹チェリーが出来てからは、毎日がドタバタとしていた。

 この間まで暇だったのが、嘘のようにデイリークエストに追われている。

 ああ、弟子である妹の送迎に。

「次は教会ですか?」

「教会に行ってから、そのままユリスさんの家に行くよ」

「なら、その間に精神統一しておきますね」

 いつのまにか俺に抱きかかえられて移動するのも慣れたのか、腕の中で精神統一をしている。

 まるで次の習い事までに寝て、体力を回復しています、とでも言うような勢いだ。

 人から注目されているのに、全く動じない中々のメンタルをしている。

 いや、これは俺も気にしないタイプだから、同じような性格なんだろう。

 さすが弟子だな。

 俺は教会に着くと早速石像の前でチェリーを下ろす。

「神のご加護を!」
「神のご加護を!」
「神のご加護を!」
「神のご加護を!」
「神のご加護を!」

 祈りは一日に五回捧げないといけないが、短縮してみたら意外にもいけた。

 他にも省略すれば良いデイリークエストは多々あった。

 例えばポーション作りだが、薬草千切って魔力水に入れるだけで完成扱いとなる。だから、俺が水に魔力を注いだものにチェリーが薬草を千切って入れるだけで良い。

「はい、完成!」

 ただ、そんなことをしているとあの人の怒りは落ちてくる。

「こらぁ! また薬草を無駄遣いしておって!」

「ユリスさんすみません!」

「今日でやっと転職クエストが終わるんです!」

「もう師匠がめちゃくちゃだから弟子までめちゃくちゃじゃないか」

 そんなことを言っても、ユリスは黙って俺達を見守っていた。

 今日でやっとチェリーの転職クエストが終わるのだ。

 俺はまたチェリーを抱えて生産街へ移動していく。

「全く……あの子が楽しいならよかったわ」

 ユリスは再び自分の作業に戻っていった。


「ブギー工房を借りるね!」

「ああ、道具は揃えてあるぞ」

 ブギーとボギーに相談したら、二人はすぐに協力してくれるようになった。

 俺が師匠になったと伝えると、二人は泣いて喜んでくれた。

 その晩にお祝いで酒を持って祝ってくれたが、大人ではない俺は飲めない。

 小人族って中々酒を分け与えないって聞いたが、ブギーとボギーはどうやら違うようだ

 いつか二人の師匠と酒が一緒に飲める日を楽しみにしている。

 そんな二人と同じ職業体験は、どちらも一日に五つも装備を作らないといけない。

 どう考えても無理な状況に諦めようとしたが、それも工夫次第でどうにかなった。

「はい、紐!」

「ありがとうございます!」

 チェリーはスパイダー種の糸でできた紐を重ねて編み込んでいく。

「はい、木!」

「ありがとうございます!」

 今度は簡易的に武器職人スキルで、木を削ったものを渡す。

 削った木に編み込んだ糸をつけることで、粗雑で使えない弓が完成する。

 それを武器として扱っても良いのかとHUDシステムに聞いてみたい。

 どこかゲームのバグみたいに感じるからな。ただ、できるのは弓だけではない。

 なぜか紐を編み込むだけで、防具と認識されていた。

 ブギーやボギーに確認したが、二人とも言葉を濁して何も教えてくれなかった。

 子どもにはまだ教えるのは早いらしい。

「よし、これであとは店で夜の営業したら終わりだな」

「やっとこれで終わりますね」

 チェリーのデイリークエストは、俺よりも難易度が高いため、クリアした時には日がすぐに暮れてくる。

 朝から動いてデイリークエストをクリアしていても、10個クリアできるかどうかギリギリなことが多い。

 俺達は店に戻ると、明らかに昼の時と雰囲気が変わっていた。

「バビットさん?」

「ああ、帰ってきたか」

 椅子に座ってうずくまっているバビット。

 何かあったのか額からは冷や汗が、ポタポタと垂れている。

「大丈夫ですか?」

「ああ、ちょっと腹を壊したみたいだ」

 そう言ってバビットはトイレに駆け込んでいく。

 どうやら体調を崩しているようだ。ただ、外にはすでに列ができており、店が開くのを待っている。

「夜の営業ができないことを伝えてきますね」

 明らかにバビットは料理ができるような状況ではなかった。ただ、このままだとチェリーのデイリークエストは失敗に終わってしまう。

 あとウェイターと料理人をクリアすれば、無事に社畜バイトニストになれる予定だった。

 今から他のデイリークエストに切り替えても、終わらないのはわかっている。

 可能性としては音楽家や踊り子ならクリアできるかもしれない。ただ、俺とは違ってちゃんと演奏したり、一時間踊り続けたりなど鬼畜な内容だ。

 その他、事務作業系も働く時間縛りがある。

 お店が営業できないことを伝えれば、再びチェリーは0から転職クエストを受けないといけない。

 それは当の本人も理解しているのだろう。

「いや、俺がバビットの代わりに店をやる」

「大丈夫なんですか?」

「これでもバビットの弟子だからね!」

 俺は早速夜の営業に取り掛かることにした。
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