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第二章 精霊イベント
51.NPC、死体に驚く
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朝になっても中々起きてこないチェリーに俺は少し心配になっていた。
転職クエストを行うなら、朝活として早くからデイリークエストをクリアしておいた方が有利になる。
報酬はもらえなくても、慣れればその後も楽になるからな。
「起こしてきたらどうだ?」
「さすがに教会の鐘がなったもんね」
朝を知らせる教会の鐘もすでに鳴っている。しかし、チェリーは朝が弱いのかまだ起きてこない。
二階に上がりチェリーが寝ている部屋をノックする。
――トントン
「チェリー起きたか?」
静まり返った様子で、全く返事がない。
俺は恐る恐る扉を開けると、その光景に息を呑む。
チェリーはぐっすりと寝ていた。
まるで死体のように感じるほどぐっすりとだ。
「チェリー朝だぞ?」
突然触れたらセクハラになると思い、まず声だけかける。だが、反応は何も返ってこない。
俺は部屋に入って様子を伺う。
「チェリ……おい、チェリー大丈夫か?」
チェリーの顔は青白く表情が抜け落ちていた。
ひょっとしたら本当に死んでいるのかもしれない。
俺の脳内はどこかパニックになっていた。
ひょっとしてこれが、巷で話題だった過労死ってやつだろうか。
ニュースでたまに聞いた言葉が頭の中にチラつく。
体も冷たいし、俺はどうすればいいのかわからずあたふたとしていた。
「ヴァイトさん?」
部屋の中を右往左往していると、背後から声が聞こえてきた。
「チェリー大丈夫か!?」
「大丈夫って?」
「いや、息もしてなくて死体のように冷たくなっていたぞ」
俺の言葉を聞いてチェリーはびっくりしていた。ただ、頭でその理由を考えているようだ。
「一度ログアウトするといけないのかな?」
またチェリーからは聞いたことない言葉が返ってきた。
勇者達には独特な言葉がいくつも存在する。
きっとその中の一つだろう。
「今日は職業体験をやめようか。流石に――」
「やります!」
俺の心配をよそにチェリーはやる気満々のようだ。ただ、師匠としては無理をさせることはできない。
「じゃあ、一日俺の言うことを聞いてもらうぞ」
「わかりました!」
俺はチェリーが寝ていた布団を動かして、膝下に手を入れる。
「えっ……えっ!?」
「今日一日移動は全て俺が運ぶからな」
俺はチェリーを抱きかかえて一階に降りていく。
さすがにデイリークエストをやるだけでも、体力的にも大変だろう。
だけど、俺が全て運べば問題ない。
チェリーは腕の中で戸惑っているようだ。
「これはセクハラでもパワハラでもないからな」
「いやいや、わかってますよ! ただ、これは――」
「師匠命令だ!」
「あっ……はい」
どこかさくらんぼのように赤く染まったチェリーは、恥ずかしそうに俺に運ばれていた。
「やっと起きて……ってどうしたんだ?」
俺達の姿を見てバビットは驚いていた。
さすがに抱きかかえて、階段を降りてきたらびっくりするか。
バビットにさっきあったことを詳細に伝える。
「そりゃー、今日はヴァイトに運んでもらわないといけないなー」
どこかバビットはニヤニヤしながら話しているが、内心は心配しているのだろう。
あまり顔には出さない人だからな。
いや、よくニヤニヤはしているか。
「きっとVITがまだ低いんだろうな」
俺の言葉にチェリーは首を傾げていた。
たしか勇者は俺と一緒でHUDシステムが見えるはず。
俺はすぐにステータスを見るように伝えた。
「えーっと、全部10ですね」
「やっぱり……」
VITが10ってことは、俺が風邪を引いて死にそうになっていた時と同じだ。
ひょっとしたら職業体験をしすぎて、風邪を引いてしまうかもしれない。
「チェリーはしばらく俺から離れるなよ! 移動は全て俺が運ぶからな」
「ふぇ!?」
「わかったなら返事!」
「……」
「師匠命令だ」
「はぁーい」
どこかため息を吐くようにチェリーは返事をしていた。
職業体験の頑張りすぎで、弟子を殺したとか言われたら俺も嫌だからな。
師匠って俺が思っているよりも大変だったんだな。
今まで勇者を教えてくれた師匠達を俺は改めて尊敬する。
「くくく、ヴァイトのやつ面白いな。また変な風に捉えているぞ」
そんな俺をみてバビットはずっと笑っていた。
転職クエストを行うなら、朝活として早くからデイリークエストをクリアしておいた方が有利になる。
報酬はもらえなくても、慣れればその後も楽になるからな。
「起こしてきたらどうだ?」
「さすがに教会の鐘がなったもんね」
朝を知らせる教会の鐘もすでに鳴っている。しかし、チェリーは朝が弱いのかまだ起きてこない。
二階に上がりチェリーが寝ている部屋をノックする。
――トントン
「チェリー起きたか?」
静まり返った様子で、全く返事がない。
俺は恐る恐る扉を開けると、その光景に息を呑む。
チェリーはぐっすりと寝ていた。
まるで死体のように感じるほどぐっすりとだ。
「チェリー朝だぞ?」
突然触れたらセクハラになると思い、まず声だけかける。だが、反応は何も返ってこない。
俺は部屋に入って様子を伺う。
「チェリ……おい、チェリー大丈夫か?」
チェリーの顔は青白く表情が抜け落ちていた。
ひょっとしたら本当に死んでいるのかもしれない。
俺の脳内はどこかパニックになっていた。
ひょっとしてこれが、巷で話題だった過労死ってやつだろうか。
ニュースでたまに聞いた言葉が頭の中にチラつく。
体も冷たいし、俺はどうすればいいのかわからずあたふたとしていた。
「ヴァイトさん?」
部屋の中を右往左往していると、背後から声が聞こえてきた。
「チェリー大丈夫か!?」
「大丈夫って?」
「いや、息もしてなくて死体のように冷たくなっていたぞ」
俺の言葉を聞いてチェリーはびっくりしていた。ただ、頭でその理由を考えているようだ。
「一度ログアウトするといけないのかな?」
またチェリーからは聞いたことない言葉が返ってきた。
勇者達には独特な言葉がいくつも存在する。
きっとその中の一つだろう。
「今日は職業体験をやめようか。流石に――」
「やります!」
俺の心配をよそにチェリーはやる気満々のようだ。ただ、師匠としては無理をさせることはできない。
「じゃあ、一日俺の言うことを聞いてもらうぞ」
「わかりました!」
俺はチェリーが寝ていた布団を動かして、膝下に手を入れる。
「えっ……えっ!?」
「今日一日移動は全て俺が運ぶからな」
俺はチェリーを抱きかかえて一階に降りていく。
さすがにデイリークエストをやるだけでも、体力的にも大変だろう。
だけど、俺が全て運べば問題ない。
チェリーは腕の中で戸惑っているようだ。
「これはセクハラでもパワハラでもないからな」
「いやいや、わかってますよ! ただ、これは――」
「師匠命令だ!」
「あっ……はい」
どこかさくらんぼのように赤く染まったチェリーは、恥ずかしそうに俺に運ばれていた。
「やっと起きて……ってどうしたんだ?」
俺達の姿を見てバビットは驚いていた。
さすがに抱きかかえて、階段を降りてきたらびっくりするか。
バビットにさっきあったことを詳細に伝える。
「そりゃー、今日はヴァイトに運んでもらわないといけないなー」
どこかバビットはニヤニヤしながら話しているが、内心は心配しているのだろう。
あまり顔には出さない人だからな。
いや、よくニヤニヤはしているか。
「きっとVITがまだ低いんだろうな」
俺の言葉にチェリーは首を傾げていた。
たしか勇者は俺と一緒でHUDシステムが見えるはず。
俺はすぐにステータスを見るように伝えた。
「えーっと、全部10ですね」
「やっぱり……」
VITが10ってことは、俺が風邪を引いて死にそうになっていた時と同じだ。
ひょっとしたら職業体験をしすぎて、風邪を引いてしまうかもしれない。
「チェリーはしばらく俺から離れるなよ! 移動は全て俺が運ぶからな」
「ふぇ!?」
「わかったなら返事!」
「……」
「師匠命令だ」
「はぁーい」
どこかため息を吐くようにチェリーは返事をしていた。
職業体験の頑張りすぎで、弟子を殺したとか言われたら俺も嫌だからな。
師匠って俺が思っているよりも大変だったんだな。
今まで勇者を教えてくれた師匠達を俺は改めて尊敬する。
「くくく、ヴァイトのやつ面白いな。また変な風に捉えているぞ」
そんな俺をみてバビットはずっと笑っていた。
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