47 / 150
第二章 精霊イベント
47.NPC、出会う
しおりを挟む
「本当にやることがなくなってきたな……」
「今日は鬼ごっこしなくて良いのか?」
「もうやって来たよ?」
「ああ、そうか……」
師匠達の鬼ごっこはあれからも続いている。
最近は走る時間も変えて、効率よく鬼ごっこをするようになった。
効率よく鬼ごっこをするのもどうかと思うが、遊びに見えて遊びじゃないからな。
「おい、ヴァイト! 今日も夕方に鬼ごっこ――」
「しません!」
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
「死にません!」
「掃除と飯は?」
「それはやります!」
「なら今日も頼む」
いつものように師匠達は店に来ていた。
鬼ごっこの影響で様々な変化が出てきた。
まず、ジェイドだが今まで問題だったスピードや持久力が改善された。
昔よりも動きやすくなった影響か、最近は朝と夕に鬼ごっこを求めてくる。
更なる高みを目指したいらしい。
次に変化が起きたのはエリックだ。
いつのまにか、性格も少し変わってしまった……。
最近は呪術というものに目覚めて、魔法使い以外に呪術師という才能が芽生えたらしい。
常に変わった呪文を唱えている。
そのうち俺も教えてもらうつもりだ。
そして、最後はレックスだ。
レックスは規則正しい生活をするようになった。
以前の堕落した生活とはおさらばしたが、未だに掃除と食事の手助けをしてくれと言ってくる。
拳闘士はユーマのように脳筋が多い。
そんなレックスの変化は、町でも大騒ぎで夫を変えて欲しいと言ってくる女性が増えている。
今では家事を覚えようとしているからな。
これだけ師匠達が変わったのに、俺だけ生活に変化がないのだ。
冒険者ギルドからは弟子をつけたらと言われるが、今は弟子になりたい人や勇者すらいない。
そもそも俺に弟子って何を教えれば良いんだ。
「ちょっと散歩してくるよ」
新しい発見のために俺は散歩に行くことにした。
せっかく冒険者になったのに、あまり町の外に出る機会がなかったからな。
装備品を整えて、いざ門から出て外を歩く。
今までは隣町の間にある森にしか行ったことがなかった。
せっかくだから近くにあると聞いた祠に行くことにした。
勇者達はみんなその祠から召喚されていると聞いた。
謎の祠に少し興味が湧いたのだ。
しばらく歩くと、木製の屋根が見えてきた。
祠っていうと祭壇があって、華々しいイメージを想像していた。
「これが祠で合っているのか?」
ただ、目の前にあるのは地面にくるっと円の形に沿って文字が書かれているだけだった。
祠から勇者が出てきたって、聞いただけではそこまで気にはならないだろう。
だが、目の当たりにすると、どうやって人間が出てくるのか疑問に思うほど不思議なところだ。
それに文字を読んでみるが、何が書いてあるのかもわからない。
日本語でもないし、この国の言語でもない。
「まぁ、勇者は謎の人物だってことだな」
特に祠には何もなく、町に帰ろうとしたら突然祠が光り出した。
あまりの眩しさに目を閉じると、何か音が聞こえてくる。
「わぁー、本当に別の世界だー」
突然声が聞こえてきた。
さっきまで誰もいなかったはず。
俺は大きく一歩下がり、警戒を強める。
「誰だ!」
「あのー、はじまりの町はどっちに行ったらありますか?」
その声を聞いて、俺の中で何かがざわめき出す。
まさかこんなところにいるはずがない。
ただ、声はあいつに似ている。
「さ……くら……?」
俺はゆっくりと目を開ける。
「えっ……名前はチェリー・フローラですけど?」
「ああ、すまない」
きっと目の前にいる人物は勇者だろう。
妹がこんなところに来るはずがない。
それに雰囲気は妹に似ているが、胸も大きく身長が高い。
俺の妹はもっとチンチクリンだったからな。
「えーっと……チェリーだったかな?」
「はい!」
明るい返事にちょっと戸惑ってしまう。
「町に行きたかったんだよね?」
「連れて行ってくれるんですか?」
「どっちにしろ町に帰るからね」
俺はそのまま町に向かって歩き出した。
見た目と中身にどこかギャップを感じる勇者。
大人な見た目なのに、声と話し方が合っていないような気がした。
やはり勇者はどこか変わっているのだろう。
これが初めてチェリーに会った時の印象だった。
「今日は鬼ごっこしなくて良いのか?」
「もうやって来たよ?」
「ああ、そうか……」
師匠達の鬼ごっこはあれからも続いている。
最近は走る時間も変えて、効率よく鬼ごっこをするようになった。
効率よく鬼ごっこをするのもどうかと思うが、遊びに見えて遊びじゃないからな。
「おい、ヴァイト! 今日も夕方に鬼ごっこ――」
「しません!」
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
「死にません!」
「掃除と飯は?」
「それはやります!」
「なら今日も頼む」
いつものように師匠達は店に来ていた。
鬼ごっこの影響で様々な変化が出てきた。
まず、ジェイドだが今まで問題だったスピードや持久力が改善された。
昔よりも動きやすくなった影響か、最近は朝と夕に鬼ごっこを求めてくる。
更なる高みを目指したいらしい。
次に変化が起きたのはエリックだ。
いつのまにか、性格も少し変わってしまった……。
最近は呪術というものに目覚めて、魔法使い以外に呪術師という才能が芽生えたらしい。
常に変わった呪文を唱えている。
そのうち俺も教えてもらうつもりだ。
そして、最後はレックスだ。
レックスは規則正しい生活をするようになった。
以前の堕落した生活とはおさらばしたが、未だに掃除と食事の手助けをしてくれと言ってくる。
拳闘士はユーマのように脳筋が多い。
そんなレックスの変化は、町でも大騒ぎで夫を変えて欲しいと言ってくる女性が増えている。
今では家事を覚えようとしているからな。
これだけ師匠達が変わったのに、俺だけ生活に変化がないのだ。
冒険者ギルドからは弟子をつけたらと言われるが、今は弟子になりたい人や勇者すらいない。
そもそも俺に弟子って何を教えれば良いんだ。
「ちょっと散歩してくるよ」
新しい発見のために俺は散歩に行くことにした。
せっかく冒険者になったのに、あまり町の外に出る機会がなかったからな。
装備品を整えて、いざ門から出て外を歩く。
今までは隣町の間にある森にしか行ったことがなかった。
せっかくだから近くにあると聞いた祠に行くことにした。
勇者達はみんなその祠から召喚されていると聞いた。
謎の祠に少し興味が湧いたのだ。
しばらく歩くと、木製の屋根が見えてきた。
祠っていうと祭壇があって、華々しいイメージを想像していた。
「これが祠で合っているのか?」
ただ、目の前にあるのは地面にくるっと円の形に沿って文字が書かれているだけだった。
祠から勇者が出てきたって、聞いただけではそこまで気にはならないだろう。
だが、目の当たりにすると、どうやって人間が出てくるのか疑問に思うほど不思議なところだ。
それに文字を読んでみるが、何が書いてあるのかもわからない。
日本語でもないし、この国の言語でもない。
「まぁ、勇者は謎の人物だってことだな」
特に祠には何もなく、町に帰ろうとしたら突然祠が光り出した。
あまりの眩しさに目を閉じると、何か音が聞こえてくる。
「わぁー、本当に別の世界だー」
突然声が聞こえてきた。
さっきまで誰もいなかったはず。
俺は大きく一歩下がり、警戒を強める。
「誰だ!」
「あのー、はじまりの町はどっちに行ったらありますか?」
その声を聞いて、俺の中で何かがざわめき出す。
まさかこんなところにいるはずがない。
ただ、声はあいつに似ている。
「さ……くら……?」
俺はゆっくりと目を開ける。
「えっ……名前はチェリー・フローラですけど?」
「ああ、すまない」
きっと目の前にいる人物は勇者だろう。
妹がこんなところに来るはずがない。
それに雰囲気は妹に似ているが、胸も大きく身長が高い。
俺の妹はもっとチンチクリンだったからな。
「えーっと……チェリーだったかな?」
「はい!」
明るい返事にちょっと戸惑ってしまう。
「町に行きたかったんだよね?」
「連れて行ってくれるんですか?」
「どっちにしろ町に帰るからね」
俺はそのまま町に向かって歩き出した。
見た目と中身にどこかギャップを感じる勇者。
大人な見た目なのに、声と話し方が合っていないような気がした。
やはり勇者はどこか変わっているのだろう。
これが初めてチェリーに会った時の印象だった。
72
お気に入りに追加
1,336
あなたにおすすめの小説
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
社畜だった私は異世界転生をする 〜第一王女なんて聞いてません〜
mikadozero
ファンタジー
私佐藤凛は、一日七時間働き、その後上司に「サービス残業お願いね」そう言われて上司は先に帰る始末。
そんな生活に私はうんざりしていた。そんな私は一日に五時間ほどしか睡眠が取れない。(時間がある日)
そんな生活を送っていると流石に体がついてこなくなった。
私は、家の中で倒れてしまうのだった。独身で誰も周りに友達もおらず、勉強一筋で生きてきた私に価値などなかったのだ。
目を覚ますと、そこは知らない建物が立っているところであり!?
ケモ耳が生えているもののいたりエルフの特徴に当てはまる人もいた!?
だが……そんな楽しい生活を楽しみたかったが……前世の癖で仕事を求めてしまう。
そんな彼女がたどり着いた職業とは……
※絵はイメージです
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
【完結】竜人と女冒険者は、ハネムーン旅行に行くようですよ!
BBやっこ
ファンタジー
冒険者で、『竜の翼』リーダーの竜人ロードは、番を見つける。冒険者をしていたセリを王都の拠点で篭り過ごす。A級で目立つため、面倒な依頼を受けるよう煩いので番とハネムーンに行く!その旅に、メンバーも参加したりしなかったり。冒険者の仕事も少し受けつつ、旅に出る!
観光予定です
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる