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第二章 精霊イベント

43.NPC、周囲の変化

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 大蛇の討伐から勇者達の行動が少し変わった。

 まず一つは、ものすごく大人しくなったこと。

 あの後、師匠達に引っ張られた勇者達は問題児と言われていたやつらだった。

 色々問題を起こしたのも、基本的にはあいつらが始まりだと言われている。

 武器屋で脅したり、ツボやタルを壊したり、家に勝手に侵入したやつもいる。

 それに井戸の中に入ろうとしたやつもいるぐらいだ。

 井戸の中って生活に必要な水しか入っていないのに、勇者は変わり者ばかりが集まったのだろうか。

 その中ですぐに心を入れ変えた者もいれば、師匠達に再指導された者もいた。

 ほとんどこの間の大蛇討伐にいた奴らが、再指導対象だけどな。

 二つ目は、戦闘職の勇者の数が減った。

 前までは武器を持って戦う者ばかりだったが、今は生産ギルドに登録する勇者が増えた。

 お互いに勇者同士で助け合うことを覚えたのだろう。

 ブギーやボギーだけではなく、バビットにまで弟子がいるからな。

 少し俺の居場所がなくなって寂しいが、定期的に職業体験として仕事を手伝っている。

 そして、最後の三つ目。

「ヴァイト様ー!」

「よかったら私とも鬼ごっこしてください!」

「俺も一緒に良いですか?」

 変な勇者が増えて、俺は鬼ごっこされる立場になった。

「あいつらなんだ!?」

 今も必死に屋根の上に登って隠れるところを探している。

 大蛇の討伐からなぜか俺の訓練方法が注目された。

 それはユーマ達が結果を出した影響だろう。ただ、強くなりたいやつ以外も混ざっているような気がする。

「おっ、ヴァイトこんなところでどうしたんだ?」

 物陰に隠れていると、突然声をかけられた。

 振り返るとそこにはユーマがいた。

 彼も斥候の才能があったのか、最近はよく二人で隠れながら遊んでいる。

 鬼ごっこからかくれんぼになったってことだな。

「あいつらがまた追いかけてくる」

 下にいる勇者達を指さすと、ユーマは苦笑いしていた。

 ユーマに理由を聞いても教えてくれないのは、何かあったのだろうか。

「それにしてもヴァイトってまた大きくなったか?」

「ああ、成長期だからな」

 いつのまにか身長は180cmほどになった気がする。

 顔つきもだいぶ大人になったってみんなに言われることが増えたからな。

「俺も身長大きくなりてーな」

「ユーマは身長より頭良くした方が良いんじゃないか?」

「なっ、お前!?」

 ユーマを揶揄からかうとじゃれ合うように俺の腹を突いてきた。

「きゃああああ! ヴァユマよ!」

 またどこかで俺達がバレたようだ。

 俺とユーマのことを合わせて、ヴァユマと呼ばれているらしい。

 バカのユーマと一緒にされるのは俺としてはあまり嬉しくない。ただ、悪い気持ちはしないからな。

 大事な友達だから仕方ない。

「ほら、逃げるぞ!」

「一緒に逃げたら意味がないんだけどな……」

「ほら、早くしないと捕まるぞ!」

 俺はユーマの手を取って人気のないところに逃げていく。

「きぃやああああああ!」

 なぜかまた町の中で女性の勇者達の声が広がっていく。

 俺をアイドルみたいな扱いにしたいのだろうか。

 勇者って俺とは別のような生き物だな。

「ああ、ヴァイトになんて説明しようか……。ラブと運営も何を考えているんだ……」

 後ろから付いてくるユーマはずっとため息を吐いていた。


 逃げ込んだのはレックスの家だ。

 俺達と言ったら拳闘士だからな。

「それにしても相変わらず汚いな」

「掃除が嫌いだから仕方ないだろ」

 俺はレックスの家に着くと、ついでに部屋の中を片付けていく。

 以前よりはレックスも冒険者として働くことが増えた。

 そのおかげで弟子だった勇者も嬉しそうにしている。

 今までレックスがいつ来るかわからなかったため、模擬戦をするやつがいなかったのだろう。

「今日も簡単に飯を作っておけば良いか」

「相変わらずヴァイトは器用だな」

 一緒に料理を作れば、ついでに料理人のデイリークエストが終わるからな。

 外が静かになったので、俺はユーマと別れて目的地であるユリスの家に向かった。


「こんにちは!」

「ヴァイトさんこんにちは!」

 ユリスの家にナコは再び戻ってきた。

 ポーションの生産量も少しずつ増えてきて、無事に町のポーション不足は解消された。

 勇者達が無理な戦い方をしなくなったっていうのもあるのだろう。

 俺もデイリークエストを終えるために、コソコソと作業をする。

「そういえば、ヴァイトよ」

「何かありましたか?」

「ナコ達が隣町に行くことを聞いたか?」

「隣町……ですか?」

「ああ、いつもヴァイトと訓練している奴らも一緒に行くらしいが、ヴァイトも――」

 俺はユーマ達からそういう話を全く聞いていなかった。

 気づいた時には勝手に体が動いていた。

「ユリスさん、さすがにあれは勘違いしますよ?」

「ははは、ヴァイトも素直になれば良いんだよ。隣町なんて半日もあれば着くんだからな」

 ユリスの笑う声が家の中に響いていた。

───────────────────
【あとがき】

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